準備ニュース10

取材できなかった出来事

学習会報告(6) 広島-「水」−あれこれ

 ・汚れてきた太田川

 ・地下水の不思議−「名水」−

 ・水が文化を育てる

 ・水は自然が育てる−水環境との関わり方を見直そう

 ・フリートーク

インタビュー「サツキマス」のこと

あの優しかった可部の町は−(三)

グループ活動紹介(4) SALMOプロジェクト

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【準備ニュース10号】

水が文化を育てる

●水が酒を決める

佐々木先生 「少しお話しただけでも、私たちは身の回りに素晴らしい水に囲まれて生活していることがお分りいただけたと思いますが、水の性質の微妙な違いが、実に多様な文化を育んでくれています。その代表が、お酒です。
 
 西条は酒どころです。西条は水がいいんですけど、広島では西条の水は特別なんです。

 広島は軟水が出るといいましたけど、西条だけは中硬度のミネラル水がでるんです。

 だから、栄養が豊かですから、酵母がぐいぐい発酵して、お米の糖分を食いきってアルコールを作ります。硬水だと長期発酵ができません。辛口のきりりとしたお酒になります。
 ところが、軟水だと酵母が栄養失調気味になってあまり発酵しませんので、糖分が残留しますから、甘口になります。灘の宮水なんか典型的な硬水ですから、酒を造る期間が約二十日ちょっとで終わってしまいますが、軟水地帯の広島だと大体二十五日から一ヶ月ぐらいかかります。

 じっくり長期発酵をさせると、ちょっと甘口ですけどさらりとした香りが出てきます。吟醸酒というのは、低温長期発酵が原則です。米を徹底的に研ぎます。米を研ぎすまさないと栄養分(ぬかの)が出てきますから、発酵が早く終わってしまうんです。低温長期発酵には、軟水が適してますから、軟水で造った吟醸酒は非常に香りが良くておいしいです。だから最近広島の吟醸酒がよく入賞するんです。硬水でも吟醸酒を造る事はできるんですが、一般的には造りにくい、でも普通酒は辛口のいい酒ができます。
 
表4 全国各名醸地の地下水の水質成分
表4のように、硬度が重要なんです。灘の宮水は平均値で114ppmで中硬度水です。伏見が78で、広島西条が82ですから伏見に近いんですね。ところが安芸区とか呉とか広島市中は平均値が39です。がたっと落ちる。これは軟水です。こういう水で吟醸酒を造るとおいしい。新潟・秋田は軟水ですから、広島の酒は新潟・秋田に近いといっていいでしょう。西条の酒は伏見に近い。大まかにはお酒の味は水によって特徴付けられると思います。
 
 だから灘の水は、辛口、西条はちょっと辛口、白牡丹は甘いじゃないかといわれますが、あれは昔辛かったんで、賀茂鶴さんにしても亀齢さんにしてもちょっと辛口です。賀茂泉さんにしてもよく発酵している。ところが、呉、安芸津、この辺は、軟水ですから、今は甘口では売れませんから辛口に切ってありますけど、さらっとした香りのいい酒になっているはずです。おかげさまで、僕は酒を飲むと、特に吟醸酒では、この酒はどんな水で造っているか大体分るようになりました。でも、今ごろは入賞している酒を飲むと分らないことがあります。ブレンドしてますから。」
 
上田宗箇流も名水が育てた

佐々木先生 

 
「お酒だけじゃなくて、お茶の立て方も水と関係あります。広島には上田宗箇流がありますが、これも軟水文化で、軟水を好んで使うようです。少しいじわるして上田流の先生に『エヴィアン』でお茶を立てていただくと、素人がやったように、一流の腕の人でもお茶をよう溶かさんのです。上田流は立てるときの水の温度がちょっと違うんです。だからミネラルの影響をもろに受けます。ミネラルの多い水を使うと、塩析といって、葉緑素たんぱく質がミネラルと反応して固まります。豆腐ににがりを入れて固めるのと同じ理屈です。上田流は、千利休、古田織部、上田宗箇と続いた直系の武家茶道で武家茶道の伝統を受け継いでいるそうですが、むかしは軟水でお茶をたてていたということです。今でも上田流の『名水だて』というのがあります。上田宗箇が隠棲していた佐伯町の浅原には岩舟の名水があります。おいしくないという人はいないぐらいの軟水の名水中の名水です。


 お酒やお茶といった古来のものだけでありません。『もみじ饅頭』は、あんを作るときにいい水が必要です。広島型の軟水の名水であんをつくらないといけないそうです。だから、あんだけは海田町で作り、焼くのは水道水を使っているそうです。鉄とマンガンがちょっとでもあるとだめだそうです。また、僕個人の印象では、お好み焼きも、広島風は生地を軟水で作らないとおいしく出来ない。卵を入れるとおいしくなりますが、あれは邪道で、軟水じゃないとぱりっと出来ないんですね。硬水だともったりとしておいしくない。お好み焼のソースも、軟水で作ったビネガーを使ったのがいいです。オタフクさんは酢を大和町で作っています。

 軟水・硬水に関係したおもしろい話はたくさんあります。吉和村は山葵で有名ですが、吉和の水では本来山葵は育ちません。五十数年前には吉和に山葵はありませんでした。賢い方がおられて、鳥取の方に軟水でほそぼそと生えている山葵を取ってきて、吉和の水に馴らして山葵を作ったんです。山葵で有名な伊豆の修善寺にしても、安曇野の大きな山葵にしても、硬水(ミネラルウォーター)の湧き水でできるんです。栄養分があるから良く育つんです。でも、こちらは軟水だからミネラルが少ない。だから山葵が育たないんですが、山葵の中には軟水でも何とか生き抜いている特殊な代謝機能をもったのがいて、それは香りがいいんです。吉和の山葵は収穫には時間がかかりますが、香り成分がいいから、高級山葵として人気がでて、成功しました。

 鯉もおもしろいのです。鯉も水の硬軟が重要で、軟水ですと、大きく健全に育ちます。軟水で大きく育てた鯉を硬水につけて色を上げ、そして高く売ります。和鯉は軟水で大きくなる遺伝子をもっています。それを硬水につけるとストレスを感じてカロチノイドという色素を作ってきれいな色になります。だから、「きれいじゃのう。」と思って買って帰って、家の水で飼育すると色があせてきます。十万出しているのに千円しないような鯉になる。でも、鯉は硬水だとストレスを感じますから、ときどき野池に放します。元気にして、そして硬水につけて色を上げます、これを『立てる』といいます。」
 
自動車もいい水で作る

佐々木先生 

 
「生き物や食べ物だけじゃありません。マツダさんもいい水がないと車が作れません。電着塗装といって、塗装する時に超純水で洗うんです。その超純水を作る軟水の名水がないと、工場が維持できません。マツダ(東洋工業)は青崎に立地していますが、青崎はむかしから名水がありました。でも、広島ではもういい水を確保しにくくて、水をちゃんとするのに水道水ではものすごくお金がかかるんです。防府工場はまだいいんです。佐波川という川の伏流水がきれいですから。」

 

● 汚れてきた太田川
● 地下水の不思議−「名水」−
● 水が文化を育てる
● 水は自然が育てる−水環境との関わり方を見直そう
● フリートーク
 
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