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  【準備ニュース10号】

グループ活動紹介(4) SALMONプロジェクト


 このコーナーでは、流域で様々な取り組みをしておられるグループや個人の方の活動を、ご紹介させて頂きます。今回は、「SALMOプロジェクト」です。


 川にはじつにいろいろな生き物たちが暮しています。一生のほとんどを川底の石にへばりついて過ごす藻や貝、源流から河口へ下りさらに海を回遊して還って来る魚、上から獲物を狙う鳥、・・・(人間もその一員に過ぎません)。生き物たちの社会は大変精妙にできていて、彼らの誰が欠けてもバランスを崩してしまいます。ここのところ人間の力が飛びぬけて強くなってしまいました。川の形を大きく変えたり、水を大量に取ったり汚したり、その川にはいなかった生き物を放したり・・・。それでも生き物たちはぎりぎりのところで、自分の生活の仕方を変えてでもどうにか生き続けてきましたが、姿を消し(始め)たものも少なくありません。

 サツキマスもそうです。サツキマスといえば長良川ですが、私たちの太田川でも細々と海と川を往来して暮しています。かつて太田川は、全国でも有数のサツキマスの多い川でした。しかし、ダムや堰の建設、開発、河川工事などにより、健やかに暮らし、回遊・産卵することができなくなってしまいました。今回の「グループ活動紹介」では、サツキマスの目線に立つことで川との関わり方を考え直そうよ、と活動されている「SALMOプロジェクト」をご紹介します。スタッフの斎藤 譲一さんに聞きました(サツキマスの生態については、「サツキマスのこと」を参考にして下さい)。(原 哲之)
 


仮事務局 「なぜサツキマスなんですか?」

斎藤さん 「サツキマスはシンボルです。長いこと川に入ってきて、どうも川がおかしくなってきたと感じていました。だったら、すべての源である目の前の川のこと、私たち人間が飲み水なんかで普段なにげなく利用している目の前の川にいる生き物たちとの関わり方などを、もう一度見直すべきじゃないか。でも、それを名目にしたら重苦しいものになるんで、サツキマスをマスコットみたいな形にして活動しているんです。

 サツキマスは、川の上流から海に至る全ての水を利用してますし、とても美しい、上から見ても目に触れやすい魚です。放流したサツキマスが、大きくなって遡上して高瀬堰や津伏の堰でジャンプします。とてもきれいなんですが、「なんで上れんのんや。」というぐらい上れんですよ。その姿を見れば、何故上れないんだろう、堰があるんだろう、と問題提起になる。保護というよりは、今の人の川への関わり方に対する問題提起、啓発みたいな形でやりたいんです。数を放流してたくさん釣りたい、ということじゃありません。もちろん、私たちの問題提起が取り上げられることで魚道などが取り付けられて、少しでも昔のように魚たちが自由に回遊して自然に産卵して生き続けることができるようになってくれたら、という願いもあります。」


 
サツキマスの放流会


仮事務局 「具体的にはどんな活動を?」


齋藤さん
 「中心にしているのが、秋のサツキマスの幼魚の放流です。今年で十一回になりました。自分たちで育成・選別して放流します。

 サツキマスの生活(回遊)にからめたイベントや働きかけもあります。河口から遡上してくる皐月の時期に、『川辺で遊ぼう―おかえりサツキマス』というイベントを開いてきました。このイベントでは『メインゲスト』のサツキマスを堰の上流に放流するだけでなく、参加者が思い思いに川辺で遊べるよう企画しています。カヌーで遊んだり、フィッシュカービングなどの展覧会をやったり、川や川に暮らす生き物たちと楽しく触れ合えるひと時を過ごしたいと考えています。

 特に子供たちが、自然との触れあい方を知って目を向けてくれて、何で水が少ないんかとか、護岸ですっと川へ入っていけないんかとか、そういうことに気付いてくれれば、身近な自然の問題を感じてくれればとてもうれしいです。

 また、魚たちが自由に往来できる太田川を取り戻そうと、魚が上りやすい魚道を造ってもらえるよう建設省などに要望してきました。ちょうど全国的に同じような活動が高まった時期でもあり、今ではかなり上流までサツキマスが上れるようになりました。」


放流されるサツキマスの幼魚


仮事務局 「いまの川の状況は、魚たちにはどうですか?」


齋藤さん 「たしかに、アユという金銭的に価値のある魚を中心に、かなり上りやすい川になってきました。でも、カジカとか、アユカケ(カマキリ)といった吸盤のない魚は十センチの落差でも上れないんです。太田川ではアユカケは多分もうおらんのじゃないかと思うぐらい、減っています。生き物たちの社会の成り立ちを考えると、どんな魚でも上れるようにしてやるべきですよね。ダムや堰という障害物がいらないのなら、取り除いて欲しいのはもちろんですが、すぐに無理ならもう少し魚道の設計に工夫を凝らして欲しいです。自然は回復力が強いので、ある程度上下流の生物の交流ができるようになれば、かなり再生するんじゃないかと思います。ダムや堰をできるだけ必要としないように、私たち自身の生活を見直すことも大事です。

 それから、サツキマスについてですが、上流の産卵床になるところが整備されていないため、自然産卵によってライフサイクルが引き継がれていく形になっていません。よその河川のように、一つの支流を産卵床として保護するような事業が必要だと思います。」


仮事務局 「活動を続けていくうえでのご苦労はありますか?」

齋藤さん 89年に発足した頃は、全国的な盛り上がりもあって参加者も多かったんですが、ブームが去ると減ってきて、放流のための資金や動けるスタッフの確保にも困るようになってきました。放流以外のイベントを組むのも難しくなっています。当時より川の状況がよくなったわけではありませんし、これから考えていかなければならない問題も少なくありませんが、年々動きにくくなってきています。」

仮事務局 「メッセージをお願いします。」

斎藤さん 「SALMOの趣旨にご賛同頂いて、参加して頂けるととてもうれしいです。一口千円からの放流基金に寄付されると自動的に会員になれます。放流会などのイベントのご案内を送ります。サツキマスの生態調査もしています。釣りをされる方に鱗を提供してもらったり、標識放流もやっています。どんな小さなことでも情報があればお寄せ下さい。身近な川で、生物と人間が共存できる環境づくりを少しづつ、できるところからやっていきませんか。

 自然を守ろうなどとは、烏滸がましい。
 寧ろ、我々が自然に守られていることを知ってほしい。(アイヌの言い伝え)


 SALMOは、この言葉が大好きです。」

仮事務局 「ありがとうございました。」

「SALMOプロジェクト」の活動に興味を持たれた方は、TelFax 082−294−4213、あるいは、TelFax 0829−72−0670、斎藤 譲一さんまで。
 

 
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