準備ニュース10

取材できなかった出来事

学習会報告(6) 広島-「水」−あれこれ

 ・汚れてきた太田川

 ・地下水の不思議−「名水」−

 ・水が文化を育てる

 ・水は自然が育てる−水環境との関わり方を見直そう

 ・フリートーク

インタビュー「サツキマス」のこと

あの優しかった可部の町は−(三)

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【準備ニュース10号】

地下水の不思議−「名水」−

佐々木先生

「話はがらっとかわって、今度はいい水、『名水』の話です。
 僕が名水にこだわる理由を少しお話しますと、科学的な話ではなく感覚的なことなんですが、三十のときに病気になりまして、そのときに、体がいい水を欲しがったというか、家の近くに湧き水が出るところがありまして、ラドンを含んだ軟水の名水なんですけど、それが非常に体にいいような気がしたんです。飲むと体が軽くなる。だから毎朝そこへ行って水を飲んで、汲んで帰ってました。わらをもつかむような気持ちで何年か続けました。そういう実体験があって、どの水を飲むか、どんな水で生活するかというのはとても大事なことだと思っています。だから名水判定も積極的にやってきました。」
 
名水とは

佐々木先生

 
「どうやって名水の判定をするか、ということですが、一応名水の基準というのがあります(上表)。今ぼくらが使っているのは厚生省の出した『要件』ですが、これがたぶんわが国で出た一番厳しい条件だと思います。何が厳しいかというと、たとえば硬度を50以下に決めています(硬度とは、その水に含まれるカルシウムとマグネシウムの量の和)。これを軟水といいますが、石けんでよくあわ立つような水です。広島周辺の水はほとんど軟水です。逆に値が高いのを硬水といいますが、50
~150ぐらいを中硬度水、それ以上を硬水と呼んだりします。このあたりは人により基準が違います。あとでお話しますが、硬水と軟水の違いは、その土地の食べ物や文化に深く影響しています。それと、有機物が1.5ppm以下と定められていますが、これは非常にきれいな水です。広島市の水道水が大体3ですから、昔は1.5をきるようなのがありましたけど。


 実は昭和59年に厚生省がこの基準を出したら、東京や大阪の湧き水で、これをクリアーする水はほとんどなかったんです。ですから、あわてて『おいしい水研究会』というのを作って、ちょっと緩めた『水質条件』というのを作りました。この基準を使うと、『六甲のおいしい水』とか、サントリーの水も『名水』になります。新しい条件だと、臭いが少しあってもいいですよ、有機物でちょっと汚れていても、塩素が少し入っていてもいいですよ、とだいぶ基準が緩めてあります。しかも判定する時の温度の範囲を決めている。

 温度を下げるとどんな水でもおいしくなります。太田川の飯室あたりの大腸菌がうようよいるような水と、三滝の水と、『エヴィアン』を並べて利き水させるとよく分ります。冷やして飲むと、たいていの人が飯室の水が一番おいしいといいます。二番目が、『エヴィアン』かな。三滝さんの水は味がなくておいしくない。ところが逆に、25度にあげると、逆転します。まず、飯室の大腸菌の多い水はにおいがするというのではねます。『エヴィアン』は、それを飲んだあとまた違う水が欲しくなるような感じです。三滝の水はすっと飲める。このように温度によって水の味が大きく変わります。だから、外国のミネラルウォーターは、普通冷蔵庫で冷やして飲みますから、どんなものでもおいしいと思い込んでしまうところがあります。」
 

名水は腐らない

佐々木先生 

 
「本当の『名水』は腐りません。採って来た水に金魚の池の水を一滴いれて置いておきます。すると、二級水源池の水や、塩素が飛んだ広島の水道水なんかはすぐ腐りますが、吉和の『冠山深水』や蒲刈の『桂谷名水』、千代田の『よみがえりの水』などは腐りません。でも、市販のミネラルウォーターは腐ります。

 それから、ちょっと話が変わりますが、名水は水音も良くします。水がきれいだと水音もきれいだと言われています。きれいな水が流れていると石にコケが生えませんので、水が石の上を走るときに高めの波長領域の音をたくさん出します。さらさらちょろちょろというやつです。スメタナのモルダウの出だしの高い旋律なんか、非常に人間の耳に心地よいらしいんですけど、ああいう波長の音が出ます。ところが、こけや藻が生えた水ですと、水の量にもよりますが、高い波長の音が失われる、吸収されるようです。そうすると水の音として心地よく感じないんですね。四万十川が流れる高知県の中村市に、百の笑いと書く百笑(どうめき)町という町があります。百人の人が笑っているような水音がするというんで、百笑町といいます。行ってみると、ほんとうに水音がきれいです、聞いても気持ちよくなります、爽やかになります、でも太田川で水音を聞いて爽やかになるのはちょっと難しいです。

 こんな話もあります。あるところが『名水百選』に制定されて、市長さんがうれしがって水琴窟を作ったんです、つくばいで手を洗うと琴の音がするというしかけです。電動式で、スイッチを入れるとポンプで水をぽとぽと落として音が鳴るようにしてあったんですが、一年くらいで鳴らなくなった。理由は、周辺に家が建って生活排水が出て、水が汚染されて藻がべっとり生えてしまい、水音が反響しなくなったからです。このように水音と水質とは大いに関係があります。」
 
「名水」とからだ

佐々木先生 

 「ちょっとお話したように、僕は自分の実体験から、なんとなく『名水』が体を癒してくれるんじゃないかと感じていましたが、科学的にも『名水』に含まれる微量な成分が体にいいことが少しずつ分かってきています。


 たとえば、カルシウムが多くてナトリウムの少ない水は、健康にいいといわれています。今みたいに栄養の行き渡っていない昭和30年代に、秋吉台や龍仙洞周辺のお年寄りの脳卒中・ガン・糖尿病・高血圧の罹患率がよそにくらべて非常に低かった。いろいろ調べてみると、水だろうということになった。鍾乳洞のあるところの水はカルシウムを多く含んでいます。カルシウムはTCAサイクルという代謝を活発にする役目がありますから、充分摂取すると免疫抵抗力が強くなって、成人病にかかりにくいということがネズミの実験で実証されています。それでカルシウム健康法というのが確立されたんですが、今は栄養状態がいいんで、カルシウムの多い水で元気になるかどうかは分りません。

 千代田の『よみがえりの水』は、アトピーにもきくと言われる健康水です。制菌作用がありますから、これで目を洗うと眼病が治りますし、アトピーも菌が洗い流されて悪化しない。殺菌剤は菌も殺すが皮膚も殺しますが、この水は菌をおさえて肌を殺しません。むしろ自然治癒力を促進するようです。それにこの水は、飲むと整腸作用があるようです。

 年を取ってくると、おなかの中で硫化水素とかおならの臭い成分を出す悪い乳酸菌(悪玉菌)が増えて、その成分が血液の中に溶けて、体中回って高血圧やガンといった成人病の原因になるといわれています。逆に、大腸の中で善玉菌と呼ばれる乳酸菌が増えると健康になります。チベットの方に、平均寿命が七十何歳という長寿の村があるそうです。九十歳のおじいちゃんが毎日ヤギを連れて散歩に行くような長寿地域があって、そこの食生活を調べてみたら、ヤギで作る特殊な発酵乳の中にいい菌がいて、これを飲んでいるから健康なんだという発表があります。ヤクルトなんかの乳業会社は商品開発のためにそういう菌を必死で探索しています。

 話がそれてしまいますが、僕の先輩がある乳業会社でいかにいい乳酸菌を腸まで達させるか、いろいろ研究していました。マイクロカプセルに入れたりオブラードに包んだり、いろんな技術を開発しましたが、そのときの実験が面白いんですけど、うんちを持ってきて、うんちの中の乳酸菌を調べるんですけど、一回や二回調べても分らないんです。一日まるごとのうんちをとらないと、平均値を出せないんです。そこで、最初は奥さんや子供さんに全部うんちをだせ、ということでおまるを使った。さすがに一週間で怒られて、困って、こうなったらお金で行こうということで、ある栄養学を研究している女子大に、張り紙をしたそうです。丸一日分のうんちを持ってきた人には三万円差し上げます、と。女の子だから持ってこないだろうと思っていたら、われもわれもと持って来た。それですぐにデータをとるという目的が達成されたそうです(笑)。

 それはともかく、その研究のデータをみますと、かなりばらつきがありますが、女子学生さんのなかで、いい菌が入っている乳製品を飲んだ群と飲んでない群とで明らかな違いがありました。うんちの中の菌のパターンが違う。色々アンケートの聞き取り調査をやっているんですけど、やはり体調がいいとか風邪をひきにくいとか、何らかの効果が統計的にでています。これはまだ仮説ですが、名水にもそういう効能がある場合があると思います。」
 
●身近な名水

佐々木先生 「私たちの身近にある名水をもう少しご紹介しましょう。

熊野町の空不動 花崗岩の破砕帯というところからでてくる特殊な水です。ラドン含量が高いです。こういう水はおいしくて健康にもいい水です。ラドンを含む水は腐りません。
 
小河内の名水 ラドンはありませんが、きれいなおいしい水です。小河内というところにあります。小河内川からちょっと入ったところにあります。
 
 
宮島の誓真釣井

 
海のそばなのに塩水が混ざらない不思議な名水です。フェリー乗り場を渡ったらすぐの崖のところにあります。ひところは誰も省みなかったんですが、毛利元就のドラマがあって、脚光を浴びました。誓真さんという宮島しゃもじを発明したお坊さんが掘った井戸です。

 


鏡の池の湧き水


 海の中にも名水があります。厳島神社の鏡の池の湧き水です。海の水がありますから、大潮の干潮の時だけ名水になります。大鳥居のところも掘ったら名水が湧き出ると思います。

 宮島では原生林が保護されていますから、そこに降った水がどっと流れずに地下に浸透して、じわじわとここに噴出しているんだと思います。


 中根先生のお話でもありましたが、木が水を蓄えて名水を作っているんだと思います。こういうところは他にもありまして、天橋立の磯清水なんかがそうです。天橋立はとても細長い陸地で、まわりはみな海です。磯清水は5メートルぐらいの深さの井戸ですけど、真水が湧いています。平安時代から知られていて、これを詠んだ和泉式部の和歌もあるくらいです。

 なぜ海の中に名水が湧くか不思議なんですが、天橋立の付け根の文殊(もんじゅ)山に広葉樹林と杉林のかなり大きい混交林があります。そこは結構コケが生えていて、かなり水脈の多いところなんでしょう、なおかつ木がありますから、余計水を蓄えてくれる。ですからここの木をばっさり伐ってしまったら、多分五年、十年ぐらいで磯清水の水は涸れてしまうんじゃないかと思います。五年、十年というのは、中国山地なんかでよく土木工事をやったあとに井戸水がだめになったという話がありますが、調べてみると、場所にもよりますが里山の木を伐ったあと五年、十年で井戸がおかしくなっているところが多いようです。
 
東郷名水 呉に東郷名水という水があります。東郷平八郎がこの水を飲んでおいしいと言ったから東郷名水といわれています。東郷井戸というのもあります。

呉で海軍が使った井戸 これは海軍が使った真梨清水というんですけど、赤道を越えても腐らないといわれた水で、長期航海をする軍艦に積んでました。悪い水を積んでいくと腐って菌が発生して、病気が発生します。ヨットで世界一周した堀江さんは西宮のヨットハーバーから出港しましたが、彼は、お酒に使う水が名水だから、と航海に積んでいきました。でもお酒に使う水は硬水で、ミネラルが多いから腐るんです。だから酵母が発酵していいお酒になるんですけど、ハワイの沖で水が腐って捨てたと『太平洋一人ぼっち』の映画にありました。」

 
広島・中国路 水紀行」 佐々木 健先生著、1989、渓水社より名水マップ
 

● 汚れてきた太田川
● 地下水の不思議−「名水」−
● 水が文化を育てる
● 水は自然が育てる−水環境との関わり方を見直そう
● フリートーク
 
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