準備ニュース10
◆取材できなかった出来事
◆学習会報告(6) 広島-「水」−あれこれ
◆インタビュー「サツキマス」のこと
◆あの優しかった可部の町は−(三)
◆グループ活動紹介(4) SALMOプロジェクト
◆投稿コーナー
◆掲示板
◆編集後記
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準備ニュース 6
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準備ニュース 4
準備ニュース 3
準備ニュース 2
準備ニュース 1【準備ニュース10号】
投稿コーナー
このコーナーでは、読者の皆さんからのレポート、投稿をご紹介させて頂きます。お忙しい中、原稿を送って下さった原 伸幸さん、原戸 祥次郎さん、有難うございました。皆さまのご投稿、お待ちしています。
●太田川の原風景から「環りの里」へ
私が太田川と初めて接したのは四十数年前、小学校一年の時だ。夏休みに本川河口の江波漁港のすぐそばに、長崎から越してきた。当時本川には丸太や鉄骨で組んだ飛び込み台が何ヶ所もあり、周辺が海(?)水浴場になっていた。小学二年の夏休みから毎日朝から夕方まで泳ぎ、真っ黒に日焼けした。現在あの辺りでは目にすることの出来ないズガニ(モクズガニ)やゴリン(ゴリ)やスジキリ(チチブ)がたくさん泳いでいたのが、私の原風景の一つとしてはっきりと記憶にある。しかし、中学二年の時に、大腸菌等による汚染により遊泳禁止になり、その後三十年間二度と解除されることなく現在に至っている。
私の原風景としての本川は干潮と満潮とでは水の味が変わる川だったが、今の子供たちは自然の水の味を感じる事もできず、川から遠ざけられてしまった。何故こうなってしまったのか、もう再び川には戻れないのかと、半世紀を生かされてきた今、深くその意味を考えざるを得ない。30〜40年前と比べると、はるかに「便利で豊か」なモノ溢れる社会になったが、川の「味わい」を感じることが出来なくなってしまった。そして私たちは、地球規模の環境とエネルギー問題、そこに起因する心の荒廃に直面している。21世紀は、これらの問題を基礎に、民族、宗教、国家と政治、食糧と人口問題などが情報技術と複雑に絡み合ってカオス(混沌)の世界に突入するであろう。このカオスを破滅への序章として捉えるのか、それとも、生きとし生けるものが環境とエネルギーを分かち合い、存続可能な新たな生活・技術を提案する時代の始まりとして捉えるのかが、とても大切な明暗の分かれ目になると思う。カオスの「闇」の象徴的な出来事として、「17才」の犯罪が問われる。しかし、この問題の根、責任は「17才」だけにあるのではなく、カオスを作り出しその闇のなかに子供たちを放り出したまま明りを燈すことが出来ない私たち大人一人一人にあるのではないか。カオスは破壊と創造の両刃の剣である。カオスの「闇」に「想像力」と「創造」の光を燈そうではないか。
身近な破壊を見ると、循環の「境」が壊されていることに気づく。文字通り、環「境」破壊である。前の準備ニュースにあるように、40年前まで少なくとも生ゴミの問題はなかった。その当時はゴミではなく、資源として町から村へ循環していたのである。私が高校の頃まで我が家は汲み取り便所で、近所の野菜農家の人が汲み取りに来て、お礼にと野菜を置いてくれていたが、水洗便所になって最も身近な循環は姿を消した。今や資源をゴミとして廃棄してきたツケが、この国をゴミ列島にしようとしている。しかし、この闇の中、希望の光を虹と輝かせた地域がある。山形県長井市で、熱心な農家の働きかけによって実現したこの企画(「レインボープラン」)は、農家と都市住民と行政が一体となって、各家庭の生ゴミを収集、堆肥化し、その堆肥を農地に返し、とれた野菜を再び各家庭に届けるという見事に循環したシステムで、注目を集めている。都市規模が違う広島にすぐには当てはめられないが、どこかの小さな地域で実験的に始めるのは可能ではないだろうか。
今、広島もゴミ問題で苦しみ、光を見いだせないでいる。ごみ問題には五つの責任(製造、流通、販売、消費、行政)があるが、根本的解決にはそれぞれの責任を明確にした上で、自給と循環の視点からアプローチすべきである。それを基本にし、発展させた取り組みとして「環りの里構想」を提案したい。有機農業をはじめとする一次産業をベースにした、エネルギーまで含めた、限りなく自給を目指した地域のヒナ型の建設である。広島に注ぐ太田川流域のどこかで、太田川の水循環の恩恵を受けながら、住民、行政、サポーターが三位一体となって、取り組んでいければと思う。そのことがカオスの闇に一点の光を見いだし、子供たちと未来を共有する唯一の道だと確信している。そして、この星を痛めつけ、カオスの「闇」を作り出してきた、私たち「おとな」一人一人の未来=子供たちへの責任でもあると感じている。
原 伸幸(「百姓や会」会長、当準備会仮事務局)
●立木トラストで森林に活性化の風を吹き込もう
太田川の下流に住む私たち町の住民は、上流の森林から多大な恩恵を受けています。それを何らかの形で、上流に対して恩返しすることはできないでしょうか。特に、木材価格の下落や人手不足で林業経営が難しくなっている現在、道路工事などで自然を破壊して地元にお金を落とすのではなく、立っている木そのものに価値を見出し、木を伐りださなくても森の手入れが出来る方法を考えてみました。当然まだ夢の段階ですが、ご参考までに構想を書いてみます。
私たち(「森と水と土を考える会」)はこれまで環瀬戸内海会議というグループで、立木トラスト運動にも取り組んで来ました。ご存知かもしれませんが、「立木トラスト」とは、ゴルフ場建設などに反対する地権者の立木を買い取り多くの人達に売り渡してその権利を分散させ、開発できなくする方法です。非常に有効な方法で、多くのゴルフ場建設計画をストップさせることが出来ました。
しかし、’96年からは、個人に立木の権利の移らない契約の形をとって、森を育てる手段にも使っています。香川県豊島での、「未来の森トラスト」です。一口1500円、4口で一本の樹を植えるのですが、これまでに3000口ほど植樹資金を集めることができました。植林は地元の人、豊島を支えるボランティアの人、そして「環瀬戸」のメンバーで行いますが、「未来の森トラスト」で集められたお金は植林だけでなく、後々の植林地の手入れや地元の人達の活動資金にも使われます。弁護士の中坊 公平さんたちも「オリーブ基金」と称して、やはり豊島に植林する資金を集め始めました。
これまでの森林経営の方法(林野庁の「分収育林」など)は樹を「材木」としての価値でしか見ていません。しかし、「立木トラスト」は、あくまでも「立っている(森に生きている)樹」そのものに価値を見出し、それに対してお金を払います。私はこの新しい「立木トラスト」の方法を使えば、町に住む人達が太田川源流の西中国山地の広葉樹や針葉樹の森を育てるお手伝いが出来るのではないかと思っています。
↓広葉樹の植林地
例えば、十方山(吉和村)と恐羅漢山(戸河内町)に挟まれた地域に、現在大規模林道建設計画があります。しかし、この一帯にはブナがたくさん残っています。ツキノワグマやクマタカも棲んでいます。太田川の水源地でもあり、清冽な小川が流れています。
「森と水と土を考える会」では、この大規模林道建設を中止して、一帯を「継承の森」として生産林ではなく次の世代に残す広葉樹の森に作り上げていくことを提案しています。
この森づくりは国、島根・山口・広島三県、地元の吉和村・戸河内町だけでなく、下流に住む住民も基金やボランティアスタッフの形で協力しあいながら進めていくもので、新しい森づくりの形を提案するものです。その基金づくりに「立木トラスト」が使えないでしょうか。
必要以上に生産林にしなくても森林を運営できる方法、地域が経済的に成り立つ方法を、太田川を通してその恩恵に浴する私たち下流住民も一緒に考えていきたい、と願っています。
原戸 祥次郎 (「森と水と土を考える会」会長)
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