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学習会報告(5)

白木町のごみ処分場計画にあらたな動きの可能性−その1−

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グループ活動紹介(3)「広島ゴミ0研究会」

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【準備ニュース8号】

学習会報告(5) フリートーク(抜粋)


 お話のあと、参加者から中根先生に質問があり、それに対して丁寧に答えて下さった。
 
「去年の集中豪雨のあとに、さかんにマスコミで、砂防ダムの必要性を説いていますよね。それが今の土建国家を脱しきれない現状を表しているような気がしますが。」

中根先生 「本当は、林業行政が、森林をきちっと育てることをアピールして、森林の持っている意味、これをアピールすれば、土建だけで治山をやるということにはならないんです、でも言えないんです。松枯れも、自分たちが農薬をまいてやって、枯らしてしまった、スギにしても自分たちがああいう植え方をさせて、手入れもきちんと指導していない。だから後ろめたい面があって、主張しにくいんです。なかなか転換が難しい。私もそういう方向に持っていくような働きかけはしていますが。」


「人工林でそれなりに土壌を保持する力が出てくるまで、植林して何年ぐらいかかりますか?」

中根先生 「広葉樹林並みになるのは、人工林の場合、きちんと管理して六十年です。今まではだいたい六十年伐期ですから、常に危険な状態なんです、人工林地域というのは。伐る直前になって、やっと、何とか、広葉樹林並みになるんです。中には八十年とか、最近は百年ほど放置しているような杉もありますが、これは立派な力を持っていますね。広葉樹林に優るとも劣らないような力を持っている人工林もありますが、だけど今は、過密で植えて、それが間伐せずにそのまま放置されて、もやしになっている林がほとんどですよ。あれだと崩れてもおかしくない。」


「広葉樹林というのは、生やしておけばいいわけですか、広葉樹林もそれなりの手入れをしてやった方がいいんですか?それと、松枯れ跡地の場合はどうでしょうか。」

中根先生 「植栽した場合は別ですけど、大体、広葉樹林というのはいろんな樹種があってそれぞれ優劣があるんですよ。トップになる木と、衰退する木が分かれて、それから下ばえの木と、中層の木と、高層の木と分かれて、バリエーションもありますから、上手くすみわけしているんです。全体的に大きな木がぽつぽつあって、そういう形で普通はほっておいても大丈夫なんです。だから、広葉樹の場合、基本的には植えなくていいんですよ。

松枯れ跡地の場合は、他の樹種が生える前に、シダが覆う場合があります。シダは表土を守るぐらいしか力はありませんから、ランドスライディング、地すべりを防ぐことはできない。こういう場合は、シダの間に植栽して、頭を出すまで世話をする。それから高木になる木がない場合、高木になる木を植える、というような対応は必要です。そういう場合は土地がやせているから、スポット的に掘って、下にちょっと肥料というか、保水剤を入れて、植えていく。時期的には梅雨前とか、冬とかに植栽していく必要があるか、と思います。でも、ほとんどお金はかからない、砂防ダム一つ造るお金で、集水域全体の森林の管理ができるぐらいですね。」


「広葉樹林が水を蓄えたり、土砂崩れを防ぐ機能が充分になるまで何年ぐらいかかるんですか。」

中根先生 「やはり三・四十年はかかりますね。」


「そうするとそれまでは、危ないところには住まない、ということになるわけですかね。」

中根先生 「でももう住んじゃっているわけですから、危険の認識をもつ事です、家は持って行けませんから。森林に対するきちんとした知識があれば、そんなところを売り出すこともしないし、売り出しても買わないでしょう。危険性があるから。でも、そういうことが今まで理解されてこなかったから、作る方も作っちゃうし、買う方も買っちゃう。」


「広葉樹林というのは、植林、たとえばブナとか植林した場合、人間がかなり長い年数にわたって管理してやらないといけないんですか。」

中根先生 「ブナ林にしたいんだったらブナを植栽するというのは良いですよ、そのあとは、基本的にはほっといてもいいと思います。ただ、競争関係で、他の種が先にきた場合、非常に成長が悪くなりますから、それは現場、現場でみていく必要があります、ブナよりも、どちらかといえば、二次林タイプのコナラとかミズナラのほうが成長は先ですから、まずその林になっちゃう。そのあと、ゆっくり追っかけてきます。コナラは大体一代林ですから、下に実生はありませんから、そのあとブナが生えてきて、ということでいいと思います。

これは大体百年ぐらいのスケールですが、基本的に、僕は、伐採跡地は、放置していいと思います。本来は、広葉樹林というのは、伐って、放置しておけばいいんです。何も手はいらない、ただ、こういう森林にしたい、という場合は、それなりの手当てをしないといけない。それがいいかどうかは、地形とか土壌とか、気候帯などみて判断して考えないといけない。日本は大体、ほっといたら立派な広葉樹林になるところですから、お金がかからない。荒れているから手入れをしなければ、といわれるのは全部人工林です。人工林は手を入れないといけない。」


「森から川に出てきた養分はダムではどうなるんですか。」

中根先生 「ダムでかなりの部分が堆積するわけですよ。大体ダムの寿命というのは六十年とか八十年と言われていますが、堆砂の問題で、ある程度、下のほうの水を抜いてたまったものを流したいんですが、やはり限度がありますよね。出てくるときは非常に腐った水が出てくる。酸欠の水が汚泥と一緒に出てくる。ああいう水を流すというのは逆に、河川にはよくない。その下に生きていた生物がすごいダメージを受ける可能性があります。」


「確か立岩とか王泊はもう六十年ぐらいの年数が経ってますよね。」

中根先生 「集水域がスギでしょう。立岩なんかものすごく崩れていますよ。土砂が相当堆積しているはずです。だからまず土砂を除かなければならない。その土砂をどうするかという問題もありますが。貯水量も全然減ってますよね。それに、夏になって、雨が降らないと、ものすごいアオコでしょう。止水、水を止めるということはイコール、上流には必ず農地がありますから、大量の化学肥料が必ずアオコを発生させるんです。」


「化学肥料の窒素・リンというのは、森の与える栄養とはだいぶ質が違うといわれたんですけど、具体的にはどういうことですか?」

中根先生 「可給態ですから、生物がすぐ吸収できる。だから、異常にプランクトンが発生しやすい。でも、森林の有機物の場合、じょじょに出てくるわけですね、いろんなものが食べながら、食物連鎖を経て出てくる。アオコが異常発生するような栄養ではないんですよ。もう一つ、化学肥料だと土壌がだめになるんですよ、微生物がだめになって土壌が弱くなる。さらに、化学肥料は、ほとんどは河川に流れてしまうんです。だから、田植え時期とか肥料をやる時期に下流の窒素・リンの量が跳ね上がります。大変な負荷です。そういう意味では、有機肥料というのは、非常にいいわけで、いま見直されていますが、本来は有機農業に還るべきですね。」


「熊野町なんですが、昭和二十年の九月に枕崎台風が来た時の水害を根拠に、巨大な砂防堰堤を作ろうとする動きがあるんですけど、それは、もう五十年経っているからほっといたほうがいい、砂防堰堤は必要ないと考えていいんでしょうか?」

中根先生 「そうですね、東広島、西条もそうだったんですが、終戦当時はみんな禿山だったんですよ。だから、とてつもない土石流がおきた、あのときは、二千人ぐらい亡くなったのかな、原爆が落ちて一ヵ月後ですよ、原爆の時の写真を見ても分かりますが、非常に緑が薄いでしょう。広島周辺は。西条なんてみな禿山だったんです。だから、ちょっと雨が降れば土砂が大量に流れたんですよ。当時の計算は、今は全然成り立たない。そんな計算をされたら、国家予算がいくらあっても足りません。」


「年寄りが、その当時松の根を掘った、だから山が弱かった、というのは当たっているんですね。」

中根先生 「当時は燃料が何もなかったんですよ。山の資源は貴重で、みんなで奪い合ったわけですよ。『飛燕』なんて飛行機は、松油を精製して、それで飛んだといいます。松の根というのは大変貴重な資源だったんですよ。あっちこっち掘り返されて山は穴だらけだったんです。」


「あれから五十年経っているんだから、森林の保水力は充分回復しているということですね。」

中根先生 「ただ、松枯れなんかありますでしょう、それでちゃんと再生しているか、山火事も起こるし、いろいろ起こるでしょう、だからそれなりの対策を立てないといけないですね。東広島でもせっかく育てた松が枯れてひどいです。」
 

話は尽きなかったが、時間切れで残念ながらここまで。
 


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■ 6.29の土石流災害が教えてくれるもの
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