太田川
市民フォーラム


基調講演


プロローグ


第一部
・太田川と広島カキの将来

・アユ資源の復活を目指して

第二部
・ダム(発電など)の負担を減らし、アユの自然な遡上の回復を!

・流域圏の環境保全と共生のありかた

・太田川河川整備懇談会における検討状況(治水を中心として)

・太田川の水質と「鮎とカキがよろこび、泳ぎ遊べる太田川」

太田川再生プロジェクト検討委員会〜委員からの発言から〜

太田川再生市民フォーラム〜太田川の未来を語ろう〜(2008年 4月 別刷り)

ダム(発電など)の負担をへらし
       アユの自然な遡上の回復を!
中根周歩(広島大学大学院生物圏科学研究科)

1.太田川流域の森の現状と課題・対策

 太田川流域の80%、特に可部上流では90%が森林で、その約40%が人工林である。しかし、近年の林業不振から、少なからずの人工林が手入れが行き届かない、また放置されています。このような人工林はその公益的機能、特に水源涵養、国土保全機能の低下をもたらし、洪水、斜面崩壊、二石流の災害や渇水の要因にもなりかねません(有光1987)

○森林保全・管理条例等への検討
 人工林の放置や手入れ不足が洪水や土砂災害を引き起こすとなれば、高額な災害対策、補修費など公的資金が支出されることから、所有者の公益性の自覚、認識が求められ、それを精神的に強く要請する法制度の整備や公有林化も検討すべきと考えます。

○放置・手入れの悪い人工林の整備・管理
 放置人工林を今後10年で適正な間伐を行うため、「ひろしまの森づくり県民税」などにより、不明な境界が障害にならない、一山単位での手入れを推進する。また、便宜性、採算性を考慮した手入れができるようなマニュアルの作成を検討するべきと考えます。

○森林資源(間伐材)の活用・普及に向けたネットワークづくり
 生産者、森林組合、製材者、加工者、消費者などで構成されるネットワークをつくり、連携し、間伐材、択伐材の安定的な生産とその販路の整備、拡大について検討すべきと考えます。

〇太田川の実証実験
 太田川流域の人工林を適正に間伐することによる治水対策の可能性及び、森林状況(植生、林齢、管理)の違いが洪水や渇水へ及ぼす影響(水源涵養、国土保全機能)を評価するため、太田川流域で検証することが求められると考えます。

○源流の森の保全
 中国山地に唯一残されている貴重な生態系への影響が懸念される、細見谷の中央を走る林道の整備については、その採算性、便宜性、地域振興の点からも再検討が必要だと考えます。




2.アユ遡上における問題と当面の対策

 「アユの遡上する太田川にとって、本来の河川流量、水質、特にアユ遡上時期(5月〜7月)における水量、水温はアユが遡上するための決定的な要因と思われます。ところが、太田川の高瀬堰の上流には発電用の20を超えるダム、8つの堰があり、太田川発電所の上流では本来の河川流量が大きく削減されている可能性があります。そこで、その流量への影響を把握すると共に、水温などの水質への影響を検討し、その対策について検討しました。

○ 発電取水と河川流量

・本流において発電用の取水最下流地点の津伏堰において、年間流量の約70%が取水されていることが判明した。それ故、アユの遡上や生育の改善のために水量確保という点で、発電の影響が非常に大きいことが示唆されました。

・津伏堰の流量は維持流量が4.5トン/秒であるが、25%の発電カットによって7〜8トン/秒ほどまで増える可能性があり、これによって渇水期でも5トン/秒は維持でき、アユなどの魚介類の生息環境は改善されると思われます。

・発電の削減に対する代償として、市民が25%節電(総電力の2%)するとか、新たなクリーンな発電システムを立ち上げる等が考えられます。

〇発電用水の放流と河川水温

・発電用水の放流の最下流点である太田川発電所付近(高瀬堰上流)の本流水温は、5月〜9月(アユが遡上する時期を含む)において流量が増えれば、低下する傾向が示されました。上流からトンネルを通って高瀬堰上流で一気に放流するため、水温は上がらず、栄養も含まれていない、魚介類にとってはプラスにならない水質の可能性があります。渓流を流れて、いろいろな栄養を貯えて、水温も上昇しながら広島湾に出て行く本来の姿と比べて、現況はどう変化しているか、今後さらなる検討が必要です。

・ダムは変動する流量を一定化する装置ですが、ダムからの維持流量は自然流量に近い変動型にすべきで、流入量に対して一定の割合で取水・放流する方式を検討すべきです。


 
 
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