太田川
市民フォーラム


基調講演


プロローグ


第一部
・太田川と広島カキの将来

・アユ資源の復活を目指して

第二部
・ダム(発電など)の負担を減らし、アユの自然な遡上の回復を!

・流域圏の環境保全と共生のありかた

・太田川河川整備懇談会における検討状況(治水を中心として)

・太田川の水質と「鮎とカキがよろこび、泳ぎ遊べる太田川」

太田川再生プロジェクト検討委員会~委員からの発言から~

太田川再生市民フォーラム~太田川の未来を語ろう~(2008年 4月 別刷り)

太田川の水質と「鮎とカキがよろこび、泳ぎ遊べる太田川」
広島国際学院大学工学部バイオ・リサイクル専攻 佐々木 健

1.太田川の水質の現状

 太田川の水質はどのようなものか。実際に泳げる水質であるのだろうか。また、鮎や力みがよろこぶ水質とはどのようなものなのであろうか。以前より我々は、太田川の下流域、高瀬堰の下流域での水質が、平成5 6年を境に、徐々にではあるが改善されつつあることを認識していた。空鞘橋付近では、泳げる水質であることも認識していた。水質成分の中でも、おもに、有機物由来の汚れ、(CODや過マンガン酸カリウム消費量)や、大腸菌群々どが徐々にではあるが減少傾向にあることを認めていた。これは、秋葉市制になってから、上流可部地区に急速に下水道整備などインフラ整備が進み、生活排水が直接、高瀬堰に流れ込まなくなったことが大きいと推定している。

 実際、平成19年の夏、24時間体制で、下流域の太田川、空鞘橋と原爆ドーム周辺の水質を調査した結果を表1に示す。



 この結果を評価するには、水浴場水質判定基準や河川での水産の基準を参考にしなければならない。

 水質基準はややこしくたくさんあるが、今回は泳げる水質と鮎が喜ぶ水質に限って、比較してみる。表2に、生活環境の保全に関する環境基準の、河川の基準と、表3に水浴場の水質判定基準を小す。正式表示とは異なるが、一般にわかりやすくするため数値の換算を行なっている。詳細には検討が必要だが、概略の理解を助けるためである。、

 基準を照らし合わせてみると、水産1級はヤマメ、イワナに適した水質、水産2級は鮎に適した水質とある。太田川では、水産2級のレベルと、水浴可で水質Cは、CODではほぼ一致しており、大腸薗はやや異なるが、人間がぎりぎりでも泳げる水質は、鮎にも快適に泳ぐいい水質であることがわかる。つまり。さしあたって、太田川の水質を改善して、河川Bランク、水産2級の水質を目指せばいいと思われる。

 実際、太田川の水質を見ると(表1)、干潮の時は水浴のBランク近くまで水質改善が進んでいるが、満潮になるとCODや大腸菌が増加していることがわかる。観察していると、海からごみや濁った海水がせりあがってくることが見受けられる。ごみとヘドロをまきあげて、海水が押し寄せるために、水質が汚くなっているものと推定され、る。海に多くのヘドロが堆積して、これ、が水質を悪くしているのかもしれない、

 いずれにしても、満潮で水位は十分あり泳げる状態であろが、残念ながら、水浴場基準に当てはまらないこともあるということである。しかし、干潮では川からの水質は十分泳げる水質であることはよくわかる。


2.取り組むべき方針と課題

① 生活排水対策


 太田川の水質を悪くしている要因は生活排水といわれている。可部地区周辺の下水道整備により、ずいぶんと太田川下流の水質は改善されたように思う。しかし、可部より上流域では、下水道は未整備で、単独浄化槽で、生活排水はそのまま放流というところも多い。また合併浄化槽にしても、点検と検査が義務付けられているが、罰則がないので、そのまま末整備という施設も多いようである。生活排水対策はまだまだ必要である。

② 上流域の森林整備

 森林整備は地下水を生む水源になっている。森林整備がなされないと、水源が枯渇し、衣質が悪くなを。常時きれいな水が大量に流れ、ていることが、太田川をきれいに保つことに重要である。上流での森林の未整備が、水量が少なくなる原因のひとつと思われる。
 次に重要と思われるのは、間伐とか森林の手入れが行われていない現実である。山の中のきれいな大腸菌群がほぼいなかった沢水に、最近大腸菌群の増加する水場が目立つようになった。よく調査してみると、周辺にヘドロが観察される。上流に家や工場がないにもかかわらずである。これは、森林整備が不十分で、倒木や葉が山中に堆積し、腐敗してヘドロ化していると思われる。従来良く管理されていたであろう里山で、このようなヘドロ堆積が認められる。このことが周辺の水質の悪化を招いていると思われる。きき水をして花崗岩質特有のすっきりとしたおいしさが失われている。これが、下流に流れ、再びヘドロとして堆積する可能性が、将来考えられる。森林整備が急務と思われる。

③ ごみの不法投棄

 山に分け入るとごみの不法投棄、産業廃棄物などの不法投棄も結構多い。これらは雨とともに下流に流される。これらは水質悪化の原因にもなる。これらも注意しなければならない。


2.当面、実施する政策と市民活動

(1)市民の皆様の心は、太田川から離れているような気がする。もっと太田川に触れあって、太田川を見直すような政策が必要。太田川再生プロジェクト委員会、ふれあい部会では、太田川クリーンキャンペーンと連動して、太田川で、泳いだり、遊んだりする市民活動を提言しようとしている。これらの市民活動を通じて、太田川を汚さないという市民の意識をより高めるごとが必要と思われる。関連する施策の提言が必要である。

(2)森林整備の必要性。森林税により、早急に上流域の森林整備を行なう必要がある。

(3)生活排水対策として、下水道の整備とは別に、単独および合併浄化槽の検査、整備の徹底する施策が必要である。現在、法定検査率も他の都市に比べ高くなく、このことが生活対策の遅れになって、太田川の水質悪化の要因にもなっている可能性も高い。このことを認識できるような施策も必要である。

(4)ヘドロの除去。水質は比較的改善されつつあるが、川床にはヘドロが相変わらず堆積している。市民がこれらのヘドロを除去する活動を通じて、太田川をきれいにという意識が盛り上がるような提言、施策が必要と思われる。

 
 
当ホームページ上の情報・画像等を許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。