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水内川に昨年の土砂災害の影響残る

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【準備ニュース7号】

水内川に昨年の土砂災害の影響残る―水内川だけの問題だろうか


 中国新聞九月二日付朝刊によると、太田川水系の水内川では、昨年の集中豪雨や台風による土砂災害の影響で、アユ釣りが不漁をかこっているという。

 同新聞の記事を要約すると、「水内川漁協は今季、昨年より一万匹多く稚魚を放流したが、同漁協の推定では、釣果はニ〜三割減。県内水面漁協連合会によれば、広島県内の二十一漁協の大半は『好調』『例年並み』だが、水内川と東城川だけ『不漁』。

 水内川は自然護岸が多く、昨年六月の集中豪雨と九月の台風18号により、およそ四十ヵ所で土砂崩れが発生。

  水内川漁協では、今年の梅雨時期に雨が少なかったこともあり、川に流入した土砂が流れないまま浅瀬や川底に残り、アユの餌になる藻類が生えにくくなったことと、さらに復旧工事が今も続き、漁場環境が悪化したことが不漁の原因とみている。

  同漁協は、川を管轄する県廿日市土木建築事務所に川底の土砂の取り除きを要請した。」

  水内川に限らず、広島県西部の多くの川(太田川水系、八幡川、小瀬川など)の中・上流域で、昨年の集中豪雨と台風の後、砂が出てきて淵がなくなり、瀬にも砂が残った状態が今まで続いている.

 谷が砂で埋まったようになっているところもある、という声をよく聞く。実際に、注意して川沿いを歩いてみると、明らかに、以前に比べて、瀬と淵の繰り返し、という上流のパターンがはっきりしなくなり、本来石が主体のはずの川底の表面に砂がたまっている。川全体が「のっぺりとした」印象を受ける場所が多い。新聞で報じられた水内川のアユの問題は、こうした変化が引き起こした弊害の一つなのだろう。

 どうしてこうなったか―。川沿いで生活しておられる方や、長く川釣りを楽しんで来られた方のお話を総合すると、一つのシナリオが浮かび上がってくる。

 「戦後の拡大造林で、保水力の高い広葉樹林が広く伐採され、そのかわりにスギやヒノキが植えられた。しかし、その人工林が、外材の輸入などの経済的な圧迫や人手の不足のために、間伐などの手入れが十分になされずに今日まで来てしまった。

 このために山が天水を蓄える力が衰え、川の流量は普段は少なく、大雨が降るとすぐに出水し、雨が降らないとすぐに涸れてしまうようになった。

 さらに、近年は雨の降り方も変わってきて、非常に局地的に、短時間に集中して豪雨が降るようになった。手入れのされていない人工林は、そういう雨が降ると持ちこたえられず、大量の土砂を下流に流しながら崩壊する(土石流の発生)。

 しかし、集中豪雨が過ぎてしまうと、今度は川の流量はすぐに減ってしまうので、流れた土砂が下流・河口に送られず、川底に堆積したままになる。川が土砂を流すのは自然の働きだが、それをより下流に運ぶだけの流量が普段はない。」このシナリオは、科学的にも裏付けられつつあるようだ。
 
湯来町多田 来栖根の土砂崩壊の現場
 
 川筋に暮す人々は、危機感を募らせている。「確かに応急処置は大事だと思います。でも、山(人工林)の手入れを真剣にやらないと、こんな災害は繰り返されますよ。砂防ダムを作っても、またすぐにつまってしまう。

 今なら、まだ山の仕事を知っている人も地元にいるし、山の保全のため、災害防止のための公の事業としてきちんとすべきではないでしょうか。」太田川筋の人工林率は、決して低くないという。

 従来の対症療法的な災害復旧だけでなく、おおもとの原因を修復するような取り組みが、求められている。すでに行政・住民ともに地道な取り組みを始めておられるが、五十年・百年といった長期的なスパンで行う必要があり、現在の経済の仕組みでは持続させるのが難しい。

 ほとんど無償で進められている今の取り組みを発展させ、半永久的に持続できるよう、私たち住民と行政がどう知恵をしぼり、汗を流せるか―。


 山の手入れは、ひいては水や海の恵みを守ることにつながる。決して土砂災害の危険がある地域だけの問題ではない。流域全体でかなり優先的に考えなければならない問題ではないだろうか。

 「もうこれ以上行き当たりばったりはできないよ。」そう自然が警告しているような気がする。(原 哲之)

 

 
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