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【準備ニュース5号】

山について


渡さん 
「山が禿山だったら、降った雨水が太田川を広島まで流れるのに、ものの三日もかかりません。それが一年中途切れる事無く流れとるのは山へ木が立ち、田んぼ、棚田が水を蓄え、今ごろはちょっと水の取り方が変わってきていますが、上の田んぼで使った水を、下の次の田んぼへ、そしてまたその次へ、その水が地下水になったり、伏流水になったりして、小さい谷川へ水が涸れんような状態を維持しとるわけです。山の木もそうです。いっぺんに流れんように、山の木で保全しているわけです。

 今山の何が悪いかと言うと、去年の六月二十九日に大災害がありました。ほとんどが土砂の流出によりますが、太田川流域の場合、急傾斜地が崩れたわけじゃあないんです。どういうところがずっとるか、というと、杉や檜を植林して、植林は悪いことはないんですが、30年生前後になっています。みんな日本の山に杉や檜を植えよう、と国や県、森林組合を挙げて、一斉造林、拡大造林に乗り出しました。農家の人も暇々に植えましたが、かなりの量、一戸に何万本と植えたりしました。川筋の山の4割ぐらいが人工林だと言われています。それが全国的に行われたのが、昭和35,6年から40年代のことです。

 植林して5,6年は、他の木に負けないよう、植林した以外の木や草を刈って手入れしました。しかし、今から15−20年前に木材がむちゃくちゃ安くなった。それで、山へ行って手入れするのがあほらしゅうなった。昔は、私らも山へ行きよりましたが、山へ行って、柱にならんぐらいのを間伐して引っ張って帰ると、それは足場丸太にしよったんですが、二、三本引っ張って帰るだけで日当分ぐらいになっていたんです。それが今ごろは、一抱えいっぱいの太さの杉なんかでも山元には全然金が落ちない、百年生以上の物なら多少の金になりますが、50年から60年の杉や檜、皆さん方の家に使われるような柱木なんかは、全く山元、持ち主には金は入らんのです。外材をどんどん入れたために木の値段は暴落し、皆さんの家を建てるときは高いですが、元は安い、ただみたいなもんです。それで、30年生前後の杉や檜が今、線香を立てたようにびっしり立っとる。最初植林するときはそういうふうに植えますが、次々悪いのを切り、菜っ葉を作るときの間引きのように間引き・間伐をしないと物にならんのです。

 そんな状態だから、大風が吹いたらばらばらと倒れる。線香のようにくっついて立っていると根っこを張ろうにも張れないんです。根は少ないんです。そして、植林の前にあった古い木の根が、もとの木は大きな広葉樹などでがっちり根を張っていましたが、20年そこそこで腐って、それが穴になっている。そこへ大雨が降ったら穴いっぱいに水がたまる。そうなると、今の植林した木の根では持ちこたえられない。根っこがないから、支えるものが無い。それが山崩れにつながるんです。

 最近山の多面的な機能というのをよくいわれますが、植林してほってあることが土砂崩れを引き起こしているわけです、もちろんそれだけじゃないんですが。ですから、道路を作ったりするのと同じように、公共的な事業として山の手入れをすることが出来ないか、と思います。今なら私らよりちょっと若い者が、山へ行って木を切った経験がある者がいる。もう十年もしたらそういう人もいなくなる。今は、仕事がなくて困っている失業者が多いんだから、山の保全のため災害防止のために公共事業として位置付けて山の手入れをすることはできないんでしょうか。それは山のためにも木材を売るためにもいいことなんです。」
 


<渡さんのお話から目次>
 

川の流れについて
太田川の水はきれいか? 生き物について
山について
大きいことはいいことか? フリートークから
 
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