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学習発表会(3)

川・百話 第三話

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【準備ニュース5号】

太田川の水はきれいか?


渡さん 
「太田川は特に可部から奥は全くといって工場らしいものはないので、大都市を流れる川にしては割にきれいだといわれています。戦後数年までは、上流にいかんでも相生橋から下をのぞいたら川の底が見える、市内のどこの橋からでも子供が飛び込んで川で泳ぐ、というぐらいきれいだった。しかし、可部からその近辺では飲料や食品系の工場が昭和30年ごろから出来てきて、40年代後半に水質汚濁防止法が施行される前は、材料を処理して洗った水なんかをそのまま何もせずに流していました。川はひどく汚れ、可部近辺の者が網を川に入れたらヘドロのようなものが網について使い物にならんかった。そういう状態が7,8年ぐらいは続きました。

 同じ時期に田んぼやなんかにはきつい農薬を使う、家庭からの排水もそれ以前に比べたら多くなった。昔は排水といったら風呂の水なんかでも家からいったん「ためつぼ」に入れて、炊事の水なんかも「ためつぼ」に入れて、ある程度自然蒸発させてそれを畑に担いで行ってかけていた。風呂や炊事の排水だけじゃなしにし尿もそういう風にしていた。これが一番きれいになるわけです。排水が一番きれいになるのは畑へ、田んぼへやる、窒素やらリンやら必要なものは農作物がそれをとるし、あるいは微生物がそれを分解する。また、小溝が家から川まで流れますが、それへ草やら小石なんかがあって、川までの30メートル、40メートルの間に一戸分の排水なんかはきれいになる。川へ行ったときはきれいになっていたんです。

 で、昭和30年代から40年代はいっとき「太田川はどうなったんか」というような状態でした。市内でも、今はある程度一時よりかきれいになっていると思いますが、橋からのぞいてみると満潮のときでも魚や川の底の石が見える、という状態にはなっていません。

 また、同じような時期から可部、高陽、安古市を中心に、宅地造成工事が行われ、豊平地区ではゴルフ場造成工事など、大規模な山をはがし土砂をつつきまわす工事が相次いだために、川は目も当てられない状態になり、夏休みになっても子供が泳げないことが数年続きました。ゴルフ場造成中の四年間は、太田川漁協のアユ漁獲高は平年の年の三分の一というひどい被害を受けました。泥水の流出で河床に泥が重なって魚の餌が無く、魚は痩せていました。」
 


生き物について

渡さん 「太田川には、汽水域にいる魚や外国から来た魚も入れると、七十種類ぐらいの魚がいます。太田川に昔からたくさんいた魚も、だんだん種類が減ってきました。特に様子が変わってきたのは、昭和30年代、1960年代頃からでしょうか。

 たとえばモクズガニ、これは、広島では井手と言いますが、灌漑用の用水路や、山の谷の中にたくさんいました。しかし、昭和30年代頃、おたまじゃくしやカエルも死ぬような農薬を一時使いましたが、その頃から大変少なくなった。また、アユやウナギ、サツキマスといった、海と川とを往ったり来たりする魚も特に太田川では少なくなりました。今でもウナギ籠を漬けて獲る人がいますが、私らが子供の頃は、小学校三年生ぐらいからウナギ籠を漬けよりました。ミミズを入れて夕方漬けて、朝起きて上げるのを楽しみにやったもんですが、今ごろは子供は川へ行かんようになりました。他に、アカザ、オヤニラミ、アブラボテ、カジカ、こういった種類は少なくなってきていますが、全く絶無になった種類というのはありません。

 生き物の異変と言えば、私らの辺(久地あたり)までカモメが来るんですよ。いつ頃から来だしたかというと、草津なんかを埋め立ててからです。太田川河口の干潟がなくなってきてからです。太田川の河口は何べんにも埋め立て、一番最近では西部開発ですが、あれからカモメが飛んできだした。見かける鳥の種類も随分変わった。サギで言えば、ゴイサギは昔からいました。しかし今では、青サギはいる、白サギはいる、見たことも無いようなのもいます。どうしてそうなったかというと、やっぱり干潟がなくなったのが、一番大きな原因だろうと思います。干潟という餌場が無くなって、しょうがなしに川の方へ来たんだろうと思います。

 
私は、川というのは魚が住むところなんで、魚にとっていいのが一番いい川だと思います。魚さんたちが「ええところじゃ」というのが一番いいんです。ですからむやみに人間が人間の都合だけで削ってみたり、コンクリーで固めてみたりむやみにせんことですよ。太田川本流で三面コンクリーというのはありませんが、小さい溝なんかは固めとる。魚はそういうところへは住まれません。産卵するところもありません。魚がいたとしても、大雨が降って水量が多くなったときに避難するところが全然ない。たまたま魚がいたとしても長くは川には住めないわけです。

 魚が卵を産むところがあって、小さい魚が育つような場所があること、餌場があること、休む場所があること、大水が出ても避難できる場所があること、外敵から身を守られること。たとえば、川端に木があって、根っこが川の中へ、水の中へものぞいているようなところへ産卵する。また、川のほとりの木は鳥の攻撃から魚を守ってくれる。木陰が、真夏に太陽が照り付けて、川の水温が上がりすぎるのを防いでくれる。今ごろはそうでもありませんが、一時期川のほとりの木は皆切ってしまっていました。」
 

<渡さんのお話から目次>
 

川の流れについて
太田川の水はきれいか? 生き物について
山について
大きいことはいいことか? フリートークから
 
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