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太田川
市民フォーラム
基調講演
プロローグ
第一部
・太田川と広島カキの将来
・アユ資源の復活を目指して
第二部
・ダム(発電など)の負担を減らし、アユの自然な遡上の回復を!
・流域圏の環境保全と共生のありかた
・太田川河川整備懇談会における検討状況(治水を中心として)
・太田川の水質と「鮎とカキがよろこび、泳ぎ遊べる太田川」
太田川再生プロジェクト検討委員会〜委員からの発言から〜 |
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太田川再生市民フォーラム〜太田川の未来を語ろう〜(2008年 4月 別刷り) |
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流域圏の環境保全と共生のありかた |
井関和夫(広島大学大学院生物圏科学研究科) |
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1.はじめに
21世紀に入り、我々人類をとりまく状況は益々深刻化し、グローバルスケールで環境悪化、資源枯渇、人口増という問題を抱えている。そして、これら3つの問題は相互にリンクし、1つの問題解決が他の問題をより深刻化させるというグローバル・トリレンマ状態を呈しているため、問題の同時解決が必要とされる(図1)。また、多くの場合、一地域の問題は他の地域の問題とリンクしている。そのため、問題解決は決して容易ではなく、長期的ビジョンと共に、包括的アプローチ(要因、空間、時間)が必要とされる。 |
「アユとカキがよろこび、泳げて遊べる太田川」は、太田川一広島湾流域圈を包括的に捉えて問題点を整理し、十分な科学的根拠に基づいた生態系保全・再生のための基本的ビジョンと短期・長期的な様々な取り組みによって、徐々に実現されるものと考える。大田川再生という視点で図1を眺めると、環境とは太田川流域圈の森、川、海、そして都市であり、資源とはエネルギー(電力)、食料(アユ、カキ)、水などであり、そして人口とは、これらの環境と資源を利用している地域住民に他ならない。
流域圈の住民は、エネルギーや食料及び水資源の供給者側と利用者側に属し(或いは両者に)、供給者間、利川者間、及び供給一利用者間で利害や満足度が異なるため、問題解決には最終的に相互調整・適正な妥協が図られる場合が多々ある。ダムとアユとの関係を例にあげると、電力と水産業による水資源の配分調整の構図が見えてくる。そして、鉾先が一方的にダムに向きやすいが、ダムの機能について様々な角度から検討し、長短所を見極めて、電力と水産業を含む多産業の共存下で生態系保全・再生を図る努力が、先ず重要であろう。
2.太田川一広島湾流域の現状・問題点および解決の方向・対策
流域圈の環境問題は多岐に渡るため、ここでは太田川下流から広島湾に関連する幾つかの項目に絞って紹介する。
(1)河川・海域の底質について
<太田川市内派川の川岸沿いには、干潮時に干潟が現れるが、干潟表面にはヘドロが堆積し、水際に足を踏み入れ難<、景観を悪<している>
・ 石炭灰造粒物を利川した浸透柱による底質改善は、短期間の調査だけでは不明な点もあるので、継続して実証試験を行う必要がある。
・ 浸透柱による底質改善は、例えば雁木の船の乗降場所を良くするとか、水遊びのできる場所など、範囲を決めて利川する方法も検討する。
・ カキ殼を使うなど、いろいろな手法も検討する。
・ ダム堆積士砂を干潟造成に使うことについて、費用対効果も含めて検討する必要がある。ダム排砂(ブラッシング)の効果についても情報収集を進める(例:黒部川)。
・ 広島湾の底質改善も考える。
<貧酸素水塊について>
・ 貧酸素水塊の発生メカニズムの解明を進めていく必要がある。
・ 海田湾の底質改善では、砂とカキ殼を混ぜた覆砂も検討する。
(2)藻場・干潟の回復について
<広島湾北部には、藻場がほとんどないのが現状である>
・ 藻場の実態把握と適地選定を行う必要がある。
・ 底質改善と同様に、ダム堆積土砂を干潟造成に使うことを検討する。ダム排砂(フラッシング)の効果についても、情報収集をしておくことが必要と考える。
・ 堆積物(浮泥、着生藻類或るいはそれらの凝集物)による藻場の衰退は、瀬戸内海では広く起こっているので、広島湾についても検討していく必要がある。
(3)ノロウイルス対策について。
<風評被害をカキが受けやすいという実態があるので対策が必要>
・ 慎重な対応が必要であることと、実態把握、発生源対策、浄化方法に係る調査研究、各種技術開発や自主管理の強化などの安全確保対策について、関係機関や生産者が連携して取り組み、情報収集などを進めていくことが必要。
最後に、森・川・海の景観が美しく、生命の循環が息づき、自然に癒された時代が我が国には存在していた。未来に向けて、その循環を取り戻す努力は、絶望することなしに続けたいものだ。「太田川再生!」は、その一環である。 |
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