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有機農園 吉和に誕生
〜地域づくりの柱に農業・自然教育を〜 |
2008年11月 第91号 |
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細見谷林道問題で注目を集めている廿日市市吉和地区に、これからの地域づくりの核になる有機農園が誕生し、活動を始めています。地元吉和地区の有志9人の出資で今年4月「株式会社 よしわ有機農園」(出資金500万円)を設立し、土づくり、野菜栽培を始め今夏から生産物の出荷を始めました。出資者は、この農園を、吉和の自然を基に青少年の教育活動を進めてきた「吉和自然文化教育センター」と結んで、これからの吉和の地域づくりの柱にしていこうと構想を描いておられます。農園の運営を担当する福田裕充さんと「吉和自然文化教育センター」所長の竹田隆一さんを取材しました。(取材・篠原) |
冠山のふもとに農園設立
2003年、廿日市市に合併した旧吉和村の現在の世帯数、人口は396戸、811人(男390、女421)です。合併前は広島県で一番小さな村でしたが、現在は広島市の避暑リゾート地として7か所の別荘地があり、別荘の数は400戸以上、地元世帯を超えています。
「株式会社よしわ有機農園」の出資者は地元吉和の建設会社社長の梶木正五さん、西山林業組合の村上弘組合長、手作りワサビの真田本舗の真田和明さん、竹田隆一さんら地域づくりに熱意をもつ9人の人々、会社代表は梶木正五さんです。
有機農園の農地は、国道186号線を潮原温泉から冠山登山道に入った谷間の約1haの休耕田です。現在男性3人と出荷などのパートの女性4人で野菜作りを進めています。野菜栽培を担う中心人物は福田裕充さん(55)です。
福田さんは、土日は三原市の家に帰る「土帰、月来」の農場長。月曜から金曜まで農作業に従事します。今年4月から土づくり、夏野菜のトマト、キウリ、秋冬野菜の白菜、大根、水菜、小松菜など8〜10種類を無農薬、無化学肥料で栽培しています。
農場長は三原の福田さん
福田さんは1953年、三原市で父が教師の家庭に生まれ、三原高校卒業後、酪農にあこがれで北海道の酪農大学に進学、ここでキリスト教の「土を愛し、大を愛し、神を愛する」という三愛精神に基づく教育をうけ、循環型農業を学びました。卒業後に帰郷、乳業会社に就職し16年間勤め退職、家の50aの農地で有機農業を始めました。妻の庸子さんは三原市で天然酵母のパン店を開いています。庸子さんとは中学時代からの同級生、成人した3人の子供さんがいます。三原市の畑では、2001年に有機JASの認定を取得、当時広島中央卸売市場の広印KKの企画プランナーを退職した方、を通じて広島市内のスーパーなどに有機農業野菜を卸してきたという経験があります。
土づくりに挑戦
今年4月から吉和にきて野菜の種まきをして驚いたのは肝心の種の芽がでないこと。栽培する農地が地域でも有名な劣等地だったのです。むかし水田の基盤整備をした時、「表土扱い」といって、上部の肥えた土を除いて整備をした後、覆土する工事をしなかったため、耕土も薄く石がごろごろ出てくる状態で、石堀りに追われる始末、それが今も続いているということです。有機農業にとっては、まず土が決め手になるので、現在、豚糞堆肥を入れたり、近くの立岩ダムの底にたまる埋土をもってきたりして、客土しているという話です。
秋冬野菜では、標高600mの高原気候が長野と同じだということで、野沢菜を栽培、漬物にして売りたいと語ります。夏ごろから、廿日市の量販店「ピュアクック」の有機コーナーに出荷しているとのこと。「今、ようやくひと月50万円程度の売上げになった」と語ります。パートの時間給800円を支給するのがやっとで、まだまだ赤字続きの状態だということです。
しかし、国の有機農業推進法も制定され、輸入食品の不安などから有機農業には追い風がふいている状況を反映して、販路を支援する会社や業者も浮上、これから軌道に乗せていく希望もうまれています。
「魅惑の里」施設の活用
農園の事務所は吉和のリゾート施設「魅惑の里」の施設「吉和自然教育文化センター」の近くに置かれています。センターの所長、竹田隆一さんは、青少年の団体を中心に、自然体験教育を続けてこられました。今夏、本誌企画の冠山エコツアーで大変お世話になった方、有機農園の出資者の一人です。
「魅惑の里」は1993年に当時の吉和村が作ったリソート施設。温泉宿泊施設、レストラン、イベントハウスやオートキャンプ場、音楽ホールなどを備えています。設立当時は、村の第3セクターが経営してきましたが、町村合併で、施設は廿日市市の所属となり、この3年間は民間委託で廿日市の総菜業者が経営してきました。
その委託期限が今年で切れるので、竹田さんたちは、ここの経営を指定管理者として、受託し自然教育と有機農業の研修などを中心にした生涯教育の新しい観光施設として活用していこうと構想しています。
有機農業、自然教育の拠点に!
竹田さんは「これまで3年間だった委託管理の期間が5年に延びるので、今度は地元で腰を据えて、これまでの温泉リゾートとは違った有機農業と自然体験学習の連携による特色のある施設運営を考えていきたい」と語ります。
現在、吉和の観光施設としては県立の「もみの木森林公園」廿日市市の「ウッドワン」の経営する美術館、スキー場をもつ、温泉宿泊施設「クヴェーレ吉和」と「魅惑の里」の3つがありますが、年間52〜55万人の観光客が訪れる観光地です。中でもスキー場のある「クヴェーレ吉和」の利用者は最近では30万人にまで伸びています。「魅惑の里」の利用者は4万人程度、「もみの木森林公園」が残り18万人ということです。
循環型社会を築く
竹田さんは「この15年、社会情勢も大きく変わり、今までの過疎債づけの開発から脱皮しなければいけない時期、美術館や「クヴェーレ吉和」を作った「ウッドワン」の中本会長さんも亡くなって次世代になり、廿日市市に合併して6年目、吉和は丁度今、経済的にも地域の流れとしても非常に大きな転機を迎えています。
魅惑の里の運営については、地域づくりというよりは、いかに社会的に意義のある施設にしていけるかということが勝負だと思っています。社会的に役立てば、当然地域づくりの核になります。有機農園については、農業経営の難しさを実感しています。会社経営として成り立つのか?非常にむずかしいところです。
将来は自然体験学習や、有機農園で実地研修した若者が、ここで自立して定住していくようになれば…とそんな方向を考えています。また、ここは小さくまとまった地域だけに、森林、木材をふくめたエネルギー利用も考えて循環型の地域社会が実現できるのではないか? 厳しさを感じつつ合わせて夢も大きく描いています」と語ります。
別荘地住人にも期待
もう一つ、過疎、高齢化に悩む地域の中で、特色ある別荘地、400戸を越える人々にどのように地域づくりに参加してもらうか、ということです。今年の夏祭りには3000人もの人が出てお祭りのムードを楽しみました。去年、これからの地域づくりを考える「コミュニティよしわ」の組織が誕生しました。これは地域の婦人団体や老人団体など20団体が集まって住みよい吉和をつくるという組織ですが、これには2つに空席の理事を設けているそうです。竹田さんはこの事務局長、「今は空席ですがヽ別荘住人など一般の方々の代表と、地域の学生のための堽事席なんです」と言います。地元では別荘地住人にもこれからの期待をかけています。
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