ヒバリは全長約17cmで、スズメより少し大きい野鳥です。草原、農耕地、牧場、河原などの開けた環境に住んでおり、上空を飛びながらきれいな声でさえずるので名前はよく知られています。しかし、実際にヒバリを見た人はそう多くはないと思います。というのも、ヒバリのすんでいる草原や河原、牧場などの環境が最近少なくなっているためです。
ヒバリは地上での生活に適応した鳥で、地面を交互歩みしながら、草の実や昆虫などを餌にしています。鳥類が地上を移動するときには、ヒバリやセキレイ、ハトのように交互歩み(ウォーキング)するものと、スズメやヒヨドリのように飛び跳ねる(ホッピング)ものとがあります。ウォーキングする鳥のほうが、より地上での生活に適応しているようで、採餌も地上ですることが多いようです。
繁殖もやはり地上で行い、草の根元に枯れ葉などを材料にして椀形の巣を雌だけが造ります。抱卵も雌だけが行い、約10日で孵化します。育雛には雄も協力して一緒に給餌します。孵化後約10日で雛が巣立ちます。これらは樹上に営巣する小鳥に比べると短期間で、比較的安全な樹洞に営巣するシジュウカラでは、抱卵日数が11〜12日、孵化してから巣立つまで18〜21日です。地上は木の上に比べるとヘビやイタチなどの天敵に襲われる危険が高いので、ヒバリの雛はまだ飛べないうちにさっさと巣立ってしまうようです。
ヒバリなどの草原性鳥類の減少には、近年の草原の減少が大きくかかわっています。かつて草原は国土の1割を占めていましたが、現在ではわずか3パーセントにすぎません。草原が減少している理由としては、採草地の放棄による森林化や、牧場の放棄などがあります。近年の草原性鳥類の減少はヒバリだけでなく、県内では10年前まで北広島町の俵原牧場で繁殖していたオオジシギとホオアカが見られなくなりました。この2種は県下ではここだけで繁殖していたので、広島県により、希少種に指定されていましたが、俵原牧場で見られなくなったということは県内絶滅を意味しています。
草原の減少が原因かどうかわかりませんが、近年ヒバリが富士山や霧が峰などの標高1700〜2000mの亜高山帯で繁殖するようになっています。亜高山帯はガレ場になることが多く、ヒバリにとっては草原と同じようにみえるのでしようか。ヒバリが亜高山帯で見られるようになっだのは最近のことであり、温暖化などの影響も考えられますが、いずれにせよ詳しい調査を待たなければなりません。
太田川の河川敷ではまだ少数のヒバリが見られます。河川敷も草原性鳥類の生息地となっており、減少している草原環境のひとつとして大切にしていかなければなりません。
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