両生類

太田川水系の生き物たち−両性類(10)−2008年 4月 第83号

シュレーゲルアオガエル
〜最も北に分布するアオガエル〜


 日本にはアオガエル科が9種棲息しますが、ほとんどの棲息地は南西諸島です。その中で、本州には黄緑色をしたカエルが3種おり、小さい方から、アマガエル、シュレーゲルアオガエル、モリアオガエルとなります。アマガエルは背中の色こそ似ていますが、全く異なるグループのカエルです。時にモザイク模様のアマガエルを見たことがあると思いますが、シュレーゲルアオガエルやモリアオガエルは体色を変えることはほとんどありません。アオガエルの仲問はそのほとんどがアジアの熱帯地方に分布しているグループです。シュレーゲルアオガエルやモリアオガエルは世界的に見るとアオガエル類の中で最も北に分布する種であることがわかります。学名や和名の「シュレーゲル」は、当時、ライデン博物館長だったシュレーゲル氏に献名されたもので、その標本はシーボルトが日本より持ち帰ったとされている。


 シュレーゲルアオガエルは体長3〜5cm、鮮やか黄緑色をしており、雌が雄よりも一回り大きいのが特徴です。本州、四国、九州に分布し、広島県では、島嶼部から県北部まで広範囲に棲息しています。眼の後に黒い筋がないのでアマガエルと区別されます。虹彩の色は金色をしており、モリアオガエルの赤褐色と区別することができますが、子ガエルの時には明瞭でなく、区別するのはやや困難です。腹面は白く、雄には顎の下に薄墨色の模様が発現します。背中に金粉を散布した模様が発現する個体もいます。

 繁殖期は4月上旬から5月中旬です。雄の鳴嚢は1つ、水辺の土を掘って作った浅い穴の中で、「ケレ ケレ ケレ」と高い訓子で鴫き始め、雌を誘い出します。抱接したペアーはそのまま穴の中に後退りして産卵をします。産卵場所は畦や湿地の土の中です。卵塊の大きさはソフトボール大で、白い泡状の中に約300個の卵が産み付けられます。県中央部ではちょうど「田おこし」と重なり、掘り返された土の中から、白い卵塊が出て、水面に浮いていることがあります。県北では、本種の繁殖期の終りとモリアオガエルの繁殖期の始まりが時期的に重なるため、同時に鴉声が聞かれることがあります。シュレーゲルアオガエルは「ケレ ケレ ケレ」と高い調子でテンポが速く、モリアオガエルは「コロコロロコロ」と低い調子で鳴きます。卵は約1週間で孵化し、水田などで成長し、6月下旬から変態します。

 近年、不思議な事が起こっています。多くのカエル類が個体数を減らしている中で、シュレーゲルアオガエルだけは市街地へ棲息域を広げているようなのです。私の子どもの頃には庭で鳴声を聞くことはありませんでしたが、ここ20年前から繁殖期に鳴声が聞こえてくるのです。広島市平和公園の中でも聞くことがあります。ヤマボウシやナツツバキなどが植栽されはじめ、それに付いて来たものか、実際に棲息域を広げているのか、今後、注意深く見守る必要があります。      (写真・文 川野守生)


 
 
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