両生類

太田川水系の生き物たち−両性類(8)−2007年2月第70号

ツチガエル
〜オタマジャクシで越冬〜

ツチガエル
 北海道から九州にかけてほぼ全土に生息しています。また、佐渡島や隠岐島・五島列島などの離島にも分布しています。太田川流域では標高約800m付近の湿地や水田まで生息し、宇品沖にある無人島の峠島でも生息を確認しました。
全長4〜5cm、灰褐色で背中に多数の隆状突起を持っています。方言で「いぼがえる」と呼ばれているのは、この突起に起因しますが、子供たちの間では、ツチガエルに小便をかけられると疣ができると信じられており、そのことが「いぼがえる」という呼称を生んだとも言われています。
また、まだら模様が腹一面にあるのも特徴です。
沿岸部にはツチガエルによく似たやや小型のヌマガエルが棲息しますが、ヌマガエルの腹面は白く模様は無いので区別が出来ます。
特異な臭いを放つため爬虫類からは敬遠されているようで、ヘビ類の餌として与えても、トノサマガエルやアマガエルがまず捕食され、最後まで残るのは本種です。子供の頃、護岸の隙間にいるウナギをドジョウやトノサマガエルを餌として釣り出して遊んだものですが、餌には本種を絶対に使いませんでした。今となっては確かめようがないのですが、経験的に本種の臭いについて、上級生から申し伝えられていたのかもしれません。

 繁殖期は5〜8月、池や沼などの水辺に集まり、夜間、雄は「グーグーコッコッコッ」と鳴きます。鳴嚢は一つ。雌は何回にも分けて小卵塊を水草に産み付け、4〜5日で孵化します。幼生(オタマジャクシ)はその年に変態する個体と、池の落ち葉などの間で越冬し、翌年変態する個体がおり、移入種のウシガエルを除けば、本土に生息する無尾類(カエル)の中で、幼生で越冬するのはツチガエルのみです。親も石の下で冬眠する個体もいれば、幼生と同じような池の落ち葉の間で冬眠する個体もいます。「古池や 蛙飛び込む 水の音」のカエルは、この句が作られた場所や時期から、ツチガエルの可能性が高いと言われています。

 昭和30年代、沿岸部では家の周辺の水田や用水路の多く生息していました。しかし、宅地化などによる生息環境の減少と、農薬の影響により、個体数は徐々に減少しているのが現状のようです。
川野 守生
 
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