【洞爺湖の辺で】
先日、福田改造内閣が誕生した。福田総理曰く「安心実現内閣」だそうだ。本当にそうなるのか、甚だ疑問ではあるが、しばらくは見守りたい。
さて、改造前の内閣の大きな仕事は、日本で開催された主要八力国首脳会議(通称、サミット)だった。それが7月7日、8日、9日の3日間、北海道の洞爺湖の辺で開かれた。大きなテロ活動もなく、無事終了したようだ。
洞爺湖サミットが開催されるに際し、テレビでは「環境問題」が重要課題であると報道されていた。事実、議長総括も環境分野の発言が多く出されており、日本政府がこの分野で主導権をとりたい節がうかがわれる。
では本当にこのサミットが意味あるモノだったのだろうか?
【サミットとは?】
本題に入る前に、少しサミットについて復習しておきたい。
G8サミットとは、日本、アメリカ、イギリス、フラヽノス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアの八か国の首脳と、EU(欧州連合)の委員長が参加して開催される首脳会議のことである。1970年代にニクソン・ショック(ドルの切り下げ)や第一次石油危機などの問題が多く生じたことにより、当時『先進国』と呼ばれた国々が集まって首相レベルで議論する場が必要だろうという認識のものと誕生したとされる。サミットでは参加国間に生じている問題を取り上げるだけでなく、世界レベルの経済問題(洞爺湖サミットのホームページでは「マクロ経済、通貨、貿易、エネルギー」などを挙げている)に対する政策協調について議論されている。世界的にも発言の強い国が参加していることから、その影響力は大きい。
【洞爺湖サミットは?】
洞爺湖サミットでは、世界経済の事情をはじめ、アフリカ開発、北朝鮮・イランーアフガニスタンなどこ政治問題、環境・気候変針に関する問題が中心として議論された。今回はこの中で「環境・気候変動」問題に注目したい。
環境問題の中では次のようなことが重点だろう。それは、
@地球温暖化問題
Aエネルギー問題
B食料問題
これらは相互に関わっている。それに何よりどの問題もそれぞれの国が「国益」を考慮して判断する。日本人が大好きな「地球に優しい」というとらえ方はなかなか難しい。
では、それぞれはどのようなことになったのだろうか?
【サミットの内容】
福田総理は自身が発行する「福田内閣メールマガジン」の中で、サミット直後の7月11日に「違いを乗り越えて」というタイトルでサミットを総括している。この寄稿文がサミット内容を網羅しているので、その一部を紹介しながら会議内容を見てみよう。
(以降、『 』の中身が福田総理の文である)
その壱 全体総括
『(前略)今回のサミットは、近年に例を見ないほど、極めて重要かつ世界の関心も高いサミットになりました。なぜならば、地球温暖化の進行、原油や食料の価格高騰、金融市場の緊張など、世界規模の問題が人々の生活に直接そして大きな影響を与える中で開かれたサミットだったからです。これらの課題を前に、首脳同士が一つのテーブルを囲んで、時にはお互いに激しくやりあう場面もありましたが、3日間にわたって、昼夜をわかたず真剣かつ率直な議論を行い、多くの成果をあげることができました。』
○しかし、日本は「温暖化問題」にこだわり、他国と溝があったような感じがした。原油価格の高騰、チベット問題、諸国に散在するテロ活動。課題は多いのになぜ「温暖化」なのかという声も聞こえてくる。果たして、今回のサミットは「環境サミット」といえるような内容になっていたのだろうか。
その弐 地球温暖化
『まず、地球温暖化を防ぐために2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減するという長期目標については、昨年のサミットでは、「真剣に検討する」との表現にとどまっていましたが、今回は、米国を含むG8はもちろん、これを世界全体の目標として採択することを求めていくことで合意することができました。』
○地球温暖化の問題では、京都議定書をいかいに守るのかだけでなく、ポスト京都議定書をどのようにするのかにまで課題は及んでいる。2013年以降の枠組みをどうするのか、その決定を来年しようというのである。日本は50年後という長期目標を提案した。しかし、環境問題で主導権をとりたいEUと、中国・インドのような新興国を同じ土俵に加えたいアメリカの狭間で、日本の主張はいまいち伝わらなかったという気がする。
その参 エネルギー
『皆さんの家計を直撃し、そして貧しい国々にとっては死活問題ともなっている原油や食料の価格高騰の問題についても、各国が果たすべき役割について熱心な議論が重ねられました。原油については、増産や省エネ・新エネヘの取組を加速することに加えて、金融市場が価格高騰に悪影響を与えないよう、より詳しい在庫情報の公表や先物市場の監督体制の強化などに取り組むことで合意しました。』
〇C02を出さない、或いは原油を燃やす行為のように新たに大気にC02を供給しない「クリーンなエネルギー」をという目標の下に注目されているのが、バイオ燃料だ。その中でもバイオエタノールの生成が大きな問題となっている。後述するように、これは食糧問題にも関わってくることだ。バイオエタソールは穀物を中心とした食料から作られる。世界に食料がないと言われているのにである。自給率の低い日本も人ごとではない。国としてどう政策を行うのか、しっかりと考えてもらいたい。なお、エネルギー問題に関してはG8参加国以外の国々も参加して行われた会議「エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国首脳会合」があった。
忘れてはならないのは、グリーンなエネルギーとして「原発」を推進しようと決議されている。ここでは賛否は述べないが、注目すべき課題である。
その四 食料
『また、食糧については、途上国の農業生産力を引き上げるための支援を強化するとともに、緊急対応として、輸出規制の撤廃や食糧備蓄の放出を呼びかけました。』
○前述のとおり、食料をエネルギーに転化しようという動きがある。また、一次産業をどうとらえるのかという課題が突きつけられているように思う。先日開かれたWTO会議は決裂しており、各国の思惑が錯綜している。このなかで日本はどのような態度をとるべきなのか、大きな岐路に立っている。外ばかりを見て自国の内情を放っている政府は本当に大丈夫か?
その五 諸問題を共有出来るか?
『今回のサミットでは、G8に加えて中国やインドなど16か国の首脳、5つの国際機関の代表を招いて、世界が直面する課題の解決策について、首脳同士で、長時間にわたり率直な意見交換を行うことができました。(途中略)違いを乗り越えてこそ、具体的な解決につながるということを、首脳間で共有し、一緒にこれに取り組んでいくという強い意思を世界に向けて表明することができました。』
○勿論、それぞれの国がそれぞれ生きていくために主張をする。それをなんとか調整しなければならないだろう。しかし、福田首相の言うように、「一緒に取り組んでいく強い意思を表明」出来ただろうか。環境問題を含め、それぞれがそれぞれの主張を囗にしただけのサミットとなっだのではないだろうか?
【日本の立場は?】
純粋に環境問題を考えている方なら、政治的なことは超えた問題解決をと祈って卜るかもしれない。しかし、自分たちの国が生き残っていく上では、どうしても国策を考えなければならないだろう。各国の首脳陣もそう簡単に他国の意見に同意するわけには行かない。人間は「地球温暖化」に対して、C02という指標をもとに、対策しようとしているが、C02を制限することは、我々の生活に直結する経済にも影響することだ。そう簡単には「新たな目標」は決められないだろう。
テレビや新聞等で報道されているように、日本は「環境」問題の指導的役割を果たそうと試行錯誤してきた。しかし、欧米や新興国に挟まれていまだなにも見いだせていない。このまま行くとEUにうまいこと主導権をとられ、日本のみさらなる環境政策を迫られる可能性すらある。果たして今後日本はどういった立場をとるべきか。国民全員が考えるべき時に来ている。
まだまだつづく!
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