大暑が過ぎ、立秋を迎えるころの芸北では、昼の暑さは厳しいものの、夜にはずいぷんと涼しく感じるようになります。夏の盛が過ぎたことをいち早く感じ取るかのように、秋の草花が咲き始めます。ママコナもこの頃から咲き始める小さな秋の花です。
道端や草原に咲くママコナの名は、花に御飯粒が2つ付いているように見えるので「飯子菜」と呼ばれるという説と、種が米粒にそっくりなので「飯子菜」と呼ばれるという説があります。確かに、花も種も米粒そっくりで、どちらの説もうなずけます。どちらが正しいかは分かりませんが、名前の付き方から考えると、古くから身近な植物だったのだろうと思われます。
ママコナの葉は緑色をしていて、花も大きく、種も付けるので、一見すると特に変わったところの無い草花に見えますが、地面の下では他の植物に寄生しています。ところが、土の中の根を辿っていくと他の植物にたどり着きます。ママコナは、生活に必要な栄養の全てを宿主に依存するのではなく、水と無機的な栄養素だけを拝借しながら、生きていくための有機栄養分を作る光合成は自分で行っているのです。このように、自分で光合成をしながら、他の植物に依存している植物を「半寄生植物」と呼びます。冬になるとよく目立つヤドリギなども同じような寄生のしかたです。一方、ススキに寄生するナンバンギセルなどは全寄生植物と呼ばれます。
半寄生と全寄生を比べると、全寄生の方がなんだか楽に生活できるような気もします。しかし、実際には全寄生の植物よりも半寄生の植物の方が圧倒的に多く、寄生植物のうちの約80%が半寄生植物だと考えられています。宿主植物が安定して、十分な栄養を作れるようなら、確かに全寄生の方が楽な生活ができますが、栄養を奪われても元気に生きていける宿主はそう多くはありません。また、特定の宿主に寄生できるようになるには、進化のための十分な時間も必要だと考えられます。
ママコナは、山を歩けば簡単に見つけられる花です。また、広島には、花の周りにある苞葉にトゲの無いミヤマママコナや、その近縁とされるミヤジマママコナも見られます。そんな植物たちの生き方を知ってみると、かわいい花も少し違って見えませんか?
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