太田川水系の生き物たち−爬虫類− 2007年 3月号 第71号

(4)シロマダラ 〜派手な色だが無毒〜

 シロマダラは北海道・本州・四国・九州や佐渡島・隠岐島・壱岐島・五島列島・種子島・屋久島などの離島にも分布する日本列島の固有種です。全長30〜70cmの小型のヘビで、灰色の地色に黒い横帯が65〜70本あるのが特徴です。頭部では横帯の幅が広く、尾になるにつれて狭くなります。また、幼蛇では頭部後半に一対の白斑がありますが、成長とともに不明瞭になります。同じような和名を持つアカガラは対馬・尖閣諸島に分布し、全長が60〜120cmで大型です。

 シロマダラは一度見たら忘れられないほど派手な模様をしていますが方言はありません。それもそのはず、本種は夜行性で、シマヘビやマムシのように日中に見かけるヘビではないからです。昼間は物陰に隠れているので人目に触れることがなく、ほとんど見かけることがないので方言を持っていないものと思われます。最近まで、見つかれば必ず話題になるヘビでしたが、その生態が少しずつ解ってきてからは、さほど珍しいヘビではないことも解ってきました。それでも、県内の報告例は30程度ですから、やはり珍しいヘビなんでしょうか。一番多い採取例は、早朝、林道などで車に轢かれた個体の報告例です。このことからも本種が夜行性であることが裏付けられると思います。また、轢死体は明るくなればトビの餌になるため、人目にはつかないのです。

 県内では島嶼部の潮がかかるような岩場から、内陸部の里山まで広く分布しています。環境に対する選択性はないようです。4~5月にかけて交尾し、初夏に直径3cm、短径1cmの卵を2~9個産みます。温度によって異なりますが、約40日で孵化し、全長約22cmの幼蛇となります。餌はカナヘビやトカゲなどの小型の爬虫類などです。性質はかなり荒く、捕まえようとすると、頭部をS字型に曲げて威嚇し咬みつきますが、さらに追い詰めると擬死を行うことがあります。毒はありません。太田川の下流域からブナ帯下部まで広い棲息域を持っていますが、私たちが知らないまま個体数が減少していくことは残念なことです。
川野守生
 
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