箱庭の海からの便り 川上 清
2008年 1月 第81号

 なまこも不漁

 毎年、11月1日、なまこの底曳き網が解禁され、翌年3月31日までの間がなまこの漁期で、「箱庭の海」のあちこちでなまこ漕ぎ船に出くわす。

 その頃になると、かき筏のまに沈めたたこ壺は休漁期に入りお役をとかれ、壷は陸揚げされて次の出番まで休息する。

 これが「箱庭の海」をエリアとする漁師の出漁パターンであるが、4月から10月いっぱいの去年のたこ漁は小振りなものが多く不良であったと漁師らは嘆いている。

 それではと、なまこ漁で漁獲不振を取り返そうとはりきって出漁したが、なまこは漕いでも漕いでも不在でたこ漁以上に悪く、よくのっても5キロぐらいでその収入は高騰した燃料費に到底追いつかない。

 このような状況が続き休業者が続出、「箱庭の海」の伝統的な風物詩は今にも消えてしまうのではないかと憂慮するまでに落ち込んでいる。

 沖で出会った潜水漁夫は「金輪島から似島、カクマ、大那沙美島と潜ってみたが、なまこは例年に比べ異常に少ない」と話す。

 11月でも海水温か22度から下がらない。特に9月の高水温か、海面と底部の水の循環を悪くし酸欠や底質の劣悪化を助長、なまこの成育を妨げたと言う。

 何はともあれ、ラニーニャの恋の恨みを早く醒ましてやるよう宮島様に祈りながら、「箱庭の海」が正常に戻る日が来るのを待つしかないような気がする。
 
 
 
 
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