旬を外れた真夏に牡蠣の話しとは? まあそういわずに聞いて下さい。
加工用出荷が半分以上の広島カキ
広島と云えばカキ。全国カキ生産量(むき身)の半分以上(58・9%)が広島カキです。(全国生産量3万3千tのうち1万9千t)〜315経営体
カキが食べられるのは英文字でRのつく月だけ。春3月から8月までは産卵期に入るので食用にはならない。というのがカキについての常識ですが、それは生食のはなし、意外や意外、今は広島カキ出荷量の半分以上は3月から6月までの加工用の出荷なのです。平成23年度では1万1千tで、冷凍、干しカキ、珍味などに加工されます。冷凍技術の進展が生み出した結果でしょう。冬季外のカキフライなどはすべて冷凍によるものです。
蜜殖が環境汚染
ところがこの加工向けの出荷価格が生食用カキの半値なのです。生食用が1kg=1082円にたいして542円(平・23)です。生産コストは同じにかかっても半値。…厳しい経営の足を引っ張るのは当然。それをカバーするために筏に多くの連を吊るして、蜜殖をして収穫量を多くして稼ぐことになります。この蜜殖がカキの排泄物を増やし海底汚染につながるのです。
早期出荷への挑戦
カキは秋になって海水温度が20度C以下に下がるとそれまでの産卵を終え、自らの身を肥やす栄養成長に切り替えます。翌年2月ごろまでかけて肥るので、カキを食べるのは2月の極寒期が一番おいしい時期。しかし価格の方は10月下旬の初出荷のころが一番高値なのです。(10月=1608円〜2月=1084円)
何とか前進栽培をして早期出荷、高値販売で経営を安定させたい、ということから広島カキより早く大きくなる宮城県産のカキの種を移入する動きもありますが、これは伝統の広島カキの遺伝子を乱す心配から批判の声もあがります。
低温層移動で身入り早める
そこで新しい取り組みとして8月中下旬に「かご養殖」で水深10m以下、水温が5度C程度低い海水層へ移動して身入りを早める実験が県の水産技術センターと養殖業者の協力で実施され、取り組みが始められています。
「かご養殖」だけでなく筏の垂下方式でも。上層部分はパイプだけにして、カキの付着部分を深く沈めることで同じ効果が得られると思われます。
また、このところの地球温暖化で、8月ごろの広島湾の海水温は表層では30度Cにもなり、この海水温上昇が続くとカキのへい死をもたらす原因にもなり、最近は夏から秋にかけて3割以上のカキの大量へい死を出す年もあります。このまま温暖化が進み水温上昇が続いたら、日本のカキの養殖は北海道しかなくなるのでは?専門家の間ではそんな話も交わされるそうです。今回の取り組みが早期高値販売で経営を安定させ、温暖化を乗り越える対策になるのかどうか?注目されるところです。ちなみに環境悪化、経営難から広島カキの経営体はこの6年間で、406戸から315戸へ91戸も減っています。
(以上、県漁連発表資料、昨年12月21日開催、広島湾研究会での県立水産海洋研究センター報告より)
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