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井出三千男さんのお話から

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【準備ニュース2号】

編集後記
編集後記(にかえて井手さんのお話から思ったこと)


 井手さんのお話を聴いていて最初に思ったのは、これからの社会の大きなテーマとされる「環境修復」のことです(人間が環境を「修復する」というのはとても傲慢な考え方だと思いますが、要は、明治以降私達が捨て去り、破壊してきたものをどう取り戻していくか、ということだと思います)。

 先日出た「水産海洋研究」という雑誌で、米国で実践している内湾の環境修復の長期プロジェクトが紹介されていました。その特徴として、どういう形で破壊が行われてきたのか非常に詳しく調査した上で計画を立てていること、十年ぐらいの単位で具体的な目標を立てながら、数十年先のことを見越していること、ハイテクというよりは、自然の機能を生かした計画が中心となつていること、事業に市民各層が参画し、情報公開が進んでいること、が指摘されています。

 太田川流域も回復に向けて一歩を踏み出さなければなりませんが、そのために私達は、非常に謙虚な、全く白紙の状態から川のことを学ぶところから始めなければならない。同時に、米国の例のように、住民が参加した形で、あるいは住民が率先して、百年先を見越した長期的な計画を立てて実践するシステムを作る必要があると思います。

 もう一点、井手さんのお話から気付いたのは、流程が百キロもあるのに、源流から河口まで三十キロほどしかないということです。これは、流域の地形がとても複雑なことを意味しています。ここに、広大で、どちらかといえば単調な大地から生まれた欧米的な技術を当てはめることができるのしょうか。

 広島には「縮景園」という庭園がありますが、流域の特徴も「縮景」にあり、そこにある各や山は「一期一会」的に存在するといっても言い過ぎではないでしょう。そういう風土で、開発の「代償」を探す「ミチゲーション」が通用するのか。やはり、この土地、この風土で古代から培われた技術を主に、効率性の高い近代技術はそれを補う形で進める必要があるのではないでしょうか。

 そのためにも私達は「幼稚園」から始めるべきで、「幼稚園」がどこにあるかはそれぞれ違うと思いますが、これからできる新聞が「蛇口の向こう」を生き生きと伝えられることを願ってやみません。そして、新たな百年のスタートに向けて、少しでもお役に立てればいいな、と思います。(原 哲之)


「太田川新聞」(仮称)発行準備ニュース 第2号  2000年4月14日発行

発行 「太田川新聞」(仮杯)を発行する仮事務局

(イラスト、畠中陽一さん、木村征二さん)

 
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