●インタビュー
 吉和の自然を考える会  谷田二三さん、早田光昭さん、三浦孝治さん
2001年9月 垂穂号

この村の財産をいつまでも・・・
 吉和村の
「小屋」にて

左から、 
谷田さん
早田さん
三浦さん
 
 今回は、太田川源流の地吉和村で、私たち「太田川市民」にとっても子孫への大切な預かり物である、西中国山地の山や川をまもろうと立ち上がった、「吉和村の自然を考える会」のみなさんに、吉和川の素敵な「恵み」を頂きながらおうかがいしました(以下はスタッフのみなさんのお考えで、発言者を特定していません)

 ブナの森が壊される


 ―なぜ会を設立されたのですか?

 「だいぶ前から、この村の山や川が以前の輝きを失いつつあるのに心を痛めていました。川にはゴミが散乱するようになり、開発の影響か山が荒れたせいか、水の出方も昔とずいぶん違ってきました。護岸工事などで生き物も減りました。でもこれまでは、釣りをしたときにまわりのゴミを拾って帰るぐらいのことしか出来ませんでした。なにかできることはないだろうか。いつもそう思っていました。

 そんな折に、吉和村の奥山にある、細見谷の渓流のブナの森に、『大規模林道』という舗装道路ができる(十方山林道の大規模林道化)ことを知り、すでに工事が進んでいる戸河内町の二軒小屋から東の現場を実際に見学する機会がありました。これまでもそういう噂はおぼろげに聞いてはいたのですが、詳しいことは村民に知らされてはいませんでした。私たち自身が無関心だったということも否定できません。

 吉和村の一番の財産は、この自然だと思います。特に十方山麓のブナ林は、中国地方にはもうほとんど遺されていない貴重なものです。一度行かれたら分かりますが、このあたりではまずほかに目にすることのできない、口で言い表すのも難しいほど素晴らしいブナ林と渓流です。太田川の豊かな水を生む水源という意味でも、とても大事なところです。なんとしてもこのブナの森をまもりたいと思い、この6月から呼びかけを始めて、人数は少ないんですが、動き始めることにしました。」
 
 ” 水神様” ゴギ
 ―活動を始められて、いまどんなことを感じておられますか

 「いろいろ調べてみて、『大規模林道』が吉和村にとってどうしても必要なものなのか、大変疑問に思っています。あのあたりには人が住んでいるわけではないから、生活道路としての意味はありません。仮に工事が舗装だけだとしても、その工事で失うものの方が大きいのではないかという気がしています。芸北町の臥龍山では自動車の通れる道路を付けたために、ブナ林に悪い影響が出ていると聞いています。吉和村に大規模林道を造ろうという動きは二十年以上前からあるようですが、当時と今とでは、社会的な状況がまったく違います。当時必要でも、いま必要なければ、工事をする理由はないんじゃないでしょうか。そういったことがきちんと議論されずに計画だけが進んでいるような気がします。

吉和村の宝
―細見谷
 とことん議論をして結論を

―今後はどんな取り組みを?

 「まず、今が正念場である十方山林道の問題を、特に地元の方々によく知っていただくために、いろんな仕掛けをしていきたいですね。細見谷の、現在では中国地方随一といっても言い過ぎではない、ブナを中心としたあの渓流がどんなに素晴らしいものか、そのブナの森を守ることはどういう意味があるのかをお伝えすることができれば、と思います。そのために、写真展や学習会などを企画していきたいですね。

 それから、『大規模林道』がどんな計画なのか、どんなメリット・デメリットがあるのか、私たちも学びながら広くお伝えして、これからの吉和村にとって何が大事なのか、納得いくまでしっかり話し合える議論の場を作るお手伝いをしたいと考えています。今のままでは、お役所の机の上の考えだけで計画が進んでしまっています。最近、無駄な公共事業や、環境に対して悪い影響の大きい事業は中止する動きが出始めています。私たちも、自分たちの地元の問題なのですから、いいことも悪いことも充分に議論したうえで結論を出せるように、行政にも村の方々にも働きかけていきたいと思います。

いつまでもこんな川でありますように… 私たちの大切な「預かり物」を子供たちに引き継ぎたい

―メッセージをお願いします

 吉和には、これからずっと子供たちに残していかなければならない、とても大切な自然が、細見谷だけではなくて、たくさんたくさんあります。でもこのままでは、それも無秩序にどんどん壊されていくような気がします。この自然の大切さを、地元の方々だけでなく、この村を訪れてくださる方々、それから同じ太田川の水を頂く多くの方々に、知って欲しい。そしてそれを壊さずに楽しく暮らしていける地域のあり方を考えていきたいと思います。これから、吉和村の自然と、自然に関わる開発などのいろんな問題をお伝えするために、写真展や学習会など、いろいろ企画していきたいと思います。ぜひご参加ください。
 
インタビュー 2001年8月5日 インタビュアー 原 哲之
 
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