むかしむかしに遡る   藤井直紀 2008年 1月 第81号


 社会科の中でも世界史は、口に出して読むと舌をかみそうになるようなカタカナの言葉が並ぶ。そのせいなのかどうなのかは解らないが、今になっては覚えた言葉のほとんどが記憶から消え去ってしまっている。しかし、小学生時代あるいは中学生時代だったかはもう定かではないが、世界四大文明(エジプト文明・メソポタミア文明・インダス文明・黄河文明)ぐらいはかろうじで覚えている。特に、エジプト文明はよくテレビや雑誌、新聞にも取り上げられるのでそう簡単に忘れられるものではない。吉村作治氏が出てきて古代エジプトの魅力を語る、そういった番組をみると「考古学者」にあこがれて、将来の夢という設問に「考古学者」つて答えた時もあった。そして現在の私は、学者は学者でも分野違いの生物海洋学者

 ところで、日本のテレビ番組で古代エジプトを取り上げたものが多いのは、おそらく早稲田大学の古代エジプト調査隊の貢献するところが大きいだろう。その調査隊が、エジプトでピラミッドなどの現地調査をし始めて40年が経過したらしい。それを記念して2006年7月から全国10ヵ所で展覧会を開催している。私の住む松山にもその展覧会がやってきた。テレビでさんざん宣伝しているので、年明け早々行ってみることにした。

 松山での開催場所は「愛媛県立美術館」だ。恥ずかしながら美術品を見てもさっぱり理解が出来ない私は、松山に来て3年が経とうとしているにも関わらず、その美術館を訪れるのはこれが初めてであった。松山の街のど真ん中にあるのにも関わらず・・・である。そのため、日頃どの程度の客の入りがあるのかを知らないので、来客が多いんだか、少ないんだか解らない。土曜日だったし、たぶん多い方なんだろう。係員が「展示品を見る際には、並ぶ必要はありませんよ」とのアナウンスしていたのだが、並ばなければ展示品に近づけない。結局だらだらと人の流れにのって見ることになってしまい、充分に堪能できなかった気がする。

 今回の目玉は、2005年1月5日に、早稲田大学調査隊がダハシユール北遺跡で発見した青いミイラマスクと彩色箱型木棺だ。今から3800年前に活躍した行政官セヌウという人物のものだそうだ。そしてそのミイラは、未盗掘の完全な形で発掘された事例としては最古級であるのだそうだ。私自身、エジプト文明に詳しくはないので、それらの品々が何を意味するのかは解らない。なので、詳しくは吉村氏の出版物に譲ることにする(ってなんて無責任な!(苦笑))。実際にみたい方は、今後、札幌、熊本、東京で展覧会が開催されるそうなので、そちらに足を運んでいただきたい。

 子供の頃に興味のあった考古学も、今では知識のない分野だといってよい。しかし、最近は少しずつその知識もつけてみようと思ってきている。というのも、近年「温暖化」問題が騒がれるようになり、「気候変動」の知見が必要になってきたためだ。通常、気候変動を知るためには、極地の氷や海底の泥など、物質が層状に堆積するモノを分析する手法が用いられる。層状になっている地層や氷にどんな物質あるいは生物がどれだけ含まれのかによって判断する。もちろんそれらはよい情報になるのだが、研究によっては信頼できないような考察もみられる。それらの研究をより深く考える上で、史実が使えないかな…なんて。まあそんなことはもうとっくに行われていることなのだが…このことについては、別コーナーで紹介する予定であるので、乞うご期待。

 追伸、多くの調査が進むにしたがって歴史的事項への解釈が変わる。ピラミッド建設だって、私の子供時代は「奴隷制」を強調するものだったのに、現在では国経済の「公共的事業」という見方が大勢を占めている。冒頭に紹介した「四大文明」もその変化の中で埋もれていっている言葉のようだ。世界中の古代文明の調査が進むにつれて、別に四つの文明を特出する必要もなくなってきたためだそうだ。おそらく教科書の記述もそのように変わってきているんだろう…そうすると将来、子供が出来て質問されたらどう答えていいやら・・・(って今のところその心配は不要なのだが(汗))。
 
 
当ホームページ上の情報・画像等を許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。