過去と未来のあいだ 〜広島市像とは? 藤井直紀 2007年 4月 第72号


 広島の大手マスメディアである中国新聞は、インターネット上にブログを開設している。特定のテーマを設けて、記者の意見や小話(?)が掲載されている。それに加えて、メンバー登録した読者はその記事に対してコメントの書き込みができるようになっているので、記者の一方的な情報発信ではなく双方向の意見交換が出来る仕組みとなっている。中国新聞ブログへひとつ希望があるとすれば、ブログの一つの機能であるトラックバック機能(自分のブログから別のブログげリンクを張った時にリンク先の相手に対してリンクを張ったことを通知する仕組み)が使えるようにしてほしいことだ。まあ、管理が大変になるのでおそらくしてくれないだろう(苦笑)。本誌もこのような試みをしてもよいかもしれないが、ホームページ掲示板では特定の方々だけしか書き込んでいないのであまり盛り上がらないかなぁ・・・とも思ったりもする。
 
被爆建物はどうなる

 中国新聞ブログでは様々なことが記事になっている。その中で最近私の目を引いたのは、景観や被爆建物の現状など広島らしさって何?というようなことを考えさせられるような記事だ。特に今現在、「被爆建物のいま」という記事が連載されている。被爆建物は街のあちらこちらにある。一部はまだ使われているが、ただ建っているだけという建物も多い。管理者もばらばらで、それらを残すには管理者の意思に頼るほかない。財産権の関係で条例等で守ることは難しいようだ。このままでは原爆の凄さ・恐ろしさを伝える史料が消えていくことが危惧される。ブログによると現在91件の被爆建物があるそうだ。

未来への布石

 被爆建物など古いモノの扱いをどのようにするのかという問題がある一方で、広島の街は現在開発ラッシュとなっている。一番目立つところではカープの本拠地「広島市民球場」事業。JR山陽本線に乗って広島駅の東に広がるヤード跡地を覗いてみると、着々と工事が進んでいるように見える。今回の市長選でも数十億円で本当にできるのか?など議論になっていた。広島市のホームページには経緯や進行状況が掲載されているので興味がある方はご覧いただきたい。

 広島市民球場が移転したら、その跡地の利用が問題となる。広島市の中心部で、市民が集まる場であり、平和公園と隣接する。当然集客力があって周辺の施設と連携できるような事業が立ち上がることが期待される。広島市は球場をヤード跡地に移転すると決めた後、市民や民間業者に対し利用案を募集した。それら利用案は検討委員会で議論された後、現在は選考委員会で最終的な審議に入っている。現在、民間から提案があった事業のヒアリングを行うなど大詰めにさしかっかっている。本誌4月号が出る頃には方針が決定していることだろう。

 数ある空き地利用で注目されるのは広島大学跡地だ。一部は既にマンションの建設が進んでいるが、残りの土地は現在検討委員会で審議中である。こちらも民間から提案された事業についてヒアリングを行い、4月中旬をめどに事業方針が決定されるはずである。こうしてみるとこの4月は節目の月ということができるかもしれない。

 広島駅周辺の再開発。こちらもブロックごとに事業が進められつつある。中四国最大の高層建物も計画されているとか。

 あちらこちらで着々と街の開発が進められているが、これら街の開発に対し、慎重な意見の方もいる。しっかしとして展望がある事業なのかどうかという不安からだろう。というのも例えば広島空港やアストラムラインをみると、現在他の交通機関との接続をどうするのか全く見通しが立たない。こんなもんだは計画段階からあっただろうに・・・・・計画の甘さが現在重荷になっている。
 
あなたの広島市像は? 

 広島市は都市計画マスタープランを掲げてそれに沿って事業を進めている。恥ずかしながら私はそのプランをじっくりと読んだことがない。皆さんはどうだろうか?

 前述した被爆建物のあり方や進行中の事業が広島市の将来にどのような影響を与えるだろうか、という疑問に答えるためには我々自身が広島市に対しどのような「像」を持っているかが重要にとなる。

 中国新聞ブログでは、被爆建物のあり方について、「原爆」だけで街の像をとらえていいのか?と問いかけている人がいる。その意見も一理あるだろう。被爆以前の街、被爆、そして復興、現在、未来。その一連の流れの中で広島市像をどうとらえるのか、考えるべき時にきていると思う。
 
 
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