昨年、1年間本誌に「箱庭の海」を連載させていただいた「かわうえきよし」です。
4月中旬に事務局の篠原さんから代表就任のお話があり「ええ!」っと一瞬息を呑む驚きにうたれ、なんと御返事してよいか狼狽しました。
それは「環・太田川」創刊以来の代表、原哲之さんの智識とアクティブで真摯な行動力に比べ、果たして自分にその後継者としての力量があるのかどうかと強い戸惑いを感じると同時に、世間一般の常識的な傾向としての若返り志向に逆行するのではないかと思ったからです。
生まれてからこの方、常に「ひろしまエリア」の海と対面、その海に育てられて成長し、海一筋に生きてきた者にとって、海は何者にも代え難い人生のすべてであると思っています。その海は今、現実の問題としてどのような状態に陥っているのか?
昭和30年からの丹那前の埋立に始まる沿岸地域の埋立で喪失した大自然とその自然によって保たれてきた生態サイクルの跋行的な変化はすべての生物に強いマイナスの影響を与えています。
アサリ、ヨナキ、オオガイなどの貝類から、シャコ、ワタリガニ、アナゴ、グチ、アイナメなどの底物の生き物の激減は目を覆うばかりで、漁業の衰退は極限に達していると言っても過言ではないと思います。
最近になって、瀬戸内海に600haの藻場を造成するという計画がたてられたと仄聞していますが、その藻場や干潟が全ての海の生物を育成する褥(しとね)や揺り籠であることを百も承知で、それらを破壊してきた為政者や経済界の人達が、よくも白々しい言葉を並べられるものだと驚天動地の思いで一杯です。
昔から、太田川は源流の細見谷渓畔林をはじめ、広大な山々から大地の恵みを休むことなく「ひろしまエリアの海」に運び続けてきました。
しかし、この大きな恵みも最近では、人為によって捻じ曲げられ、川の持つ天祐の使命は失われようとしています。
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