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●インタビュー |
水と緑を育む会 青野健二さん |
2001年6月 若鮎号 |
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「消費者」の立場から何ができるだろうか… |
私たちの消費行動が社会を変える
―「水と緑を育む会」でこの本を作ろうと考えられるようになったのはなぜですか?
「私たちは1990年に廿日市市が実施した松枯れ農薬空中散布の問題をきっかけに活動を始めました。その後松枯れと大気汚染、酸性雨や山、水の問題、食と農の問題、そしてダイオキシン汚染の問題と身近な環境問題に取り組んできたのですが、活動を通して、私たちの生活のあり方、あるいは社会の仕組みそのものが変わっていかない限り、環境問題を解決していく糸口は見出せないのではないか、と感じるようになりました。
そのために、私たちに何ができるのか。現在の大量生産・消費・廃棄社会の中では、私たちは商品を買って使って捨てる『消費者』という立場にいます。『消費者』という立場からどんな働きかけができるのか。
近年、『グリーンコンシューマー』という考え方、運動が各地で定着し始めています。『グリーンコンシューマー』とは、環境対策に積極的な店で環境に配慮した商品を買うよう心がける消費者のことを言います。
私たち消費者が環境問題を広く深く学んで、商品や店舗の選択の際、『環境』というキーワードを持つようにする。私たちの選択が店や商品を製造する企業を成り立たせているわけですから、『環境問題への配慮』を基準に選択の仕方を変えれば、店も生き残るために販売する商品や店舗の設備をより環境に配慮した形に変えざるを得ない。さらにそれが商品を製造する企業を変え、行政も変えていく。
グリーンコンシューマーとして生活することで、私たちが社会に対して影響力を発揮できるのではないか。そのためのガイド、私たち自身の消費のあり方を考え、店にとっても環境に配慮した店づくりに役立つようなガイドを作ろう、そう思うようになったんです。」
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お互いが環境に対する視点を養えるように―
―この本の特徴や、編集される際に工夫されたことを教えて下さい。
「調査は、普段の生活エリア(廿日市市とその周辺)にあるスーパーを中心に実施しました。環境に対する多角的な視点を養えるよう、商品や店の取り組み方が直接・間接に影響する環境問題を整理しながら調査項目を決定しました。
店はあらゆる環境問題に通じる学習の場でもあるんです。たとえば買物袋や商品を包む容器の問題は、ゴミの問題に直結しています。食品への添加物や農薬、化学肥料は、自分自身の健康だけでなく、周囲の環境まで汚染してしまいます。野菜をハウス栽培することは、エネルギーを大量に消費することになりますし、地域で育てられた作物を買うことがエネルギー浪費や大気汚染を防ぎ、地域の農業を守ることにつながります。化学物質の多用は健康に悪いだけでなく、川や海まで汚してしまいます。塩ビのラップなどはダイオキシンを発生します。
店の設備にも目を向けました。省エネ、節水、ごみ対策、環境対策への情報公開などについて調べました。調査を通して、店長さんを始めとして店のスタッフの方々と環境問題に対する取り組みや考え方について話し合い、その店で取り組まれていることやグリーンコンシューマーとしての希望など情報交換しました。
この本のねらいは、これから店と消費者である私たちの生活がより環境に配慮した形に変わっていくのを応援することにあるのですから、けなしたりあらさがしをするのではなく、その店が環境問題に対して配慮しておられることをセールスポイントとして積極的に紹介するようにしました。また、調査項目の中で特に問題となる点については、コラムを設けて説明を加え、最後に、緊急に対策を立てなければならないゴミ問題について、廿日市市民としての立場から提言しました。」
―この本を出されてどのようなことを感じておられますか?
「正直に言って、今のところ、調査をさせて頂いた店の方からの反応はそれほど大きくありません。多くの店(スーパー)は大きな組織の中の一支店ということで、一つ一つの店舗が地域に密着した形で対応するのは難しいのかもしれません。この本が売上に影響するようになるといいのでしょうが…。これからの課題ですね。」
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モノの価値をトータルに考えることのできる仕組みをつくろう |
―今後へ向けて何をお考えですか?
「さまざまな環境問題を解決していくには、もののねうち、価格というものの捉え方を根本から見直す必要があるのではないでしょうか。
たとえば、現在はスーパーでパック入りの豆腐が安く買えます。しかし、最終的にパックをゴミとして捨てて、それを処理するのに必要な費用まで考えに入れると、話は別です。ゴミ処理費用は私たちの税金で賄われているのですから、本来、ここまでがその商品の『価格』になるはずです。
魚がトレイに入って売られている場合でも、その品物の値段の中にトレイの価格や、トレイを回収してリサイクルするときの費用まで表示してあると、どうでしょう。私たちはより安いものがいいわけですから、自分で容器を持って行くようになるのではないでしょうか。それだけでもずいぶんゴミが減量されます。ペットボトルの商品は店で買う時は安くて持ち運びなど便利ですが、使ったあと回収してリサイクルするのにかかる費用は、一本につき26円ともいわれています。そしてそれは、私たちの税金で行われます。でも私たちは普段商品を買う時にそんなことは考えていませんし、それが出来るような費用(コスト)の表示もされていません。そうした情報が示されていれば、『環境問題への配慮』を基準に商品を選択しやすくなるのではないでしょうか。
もっと見方を広げていくと、多くのスーパーでは夏場にクーラーががんがんかかってますが、クーラーの電気代も商品の値段に組み込まれます。広い駐車場があるスーパーは渋滞を生み、大気汚染を進行させます。その対策にまた税金が使われる。かかった費用をよりトータルに整理しなおすと、実は大量生産・流通というシステムは私たちにムダな出費を強いていることが見えてきます。
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21世紀が環境の世紀になるためには、あらゆる商品や設備について原料の獲得から最終的にゴミとして処理されるまでにかかる費用、あるいはエネルギーの消費量や環境汚染対策費など全ての費用が公表され、表示される仕組みが必要だと思います。そうすれば私たちの消費行動が自然に変化して、環境に対して負荷の少ない商品が買われ、環境対策が充分にたてられた店舗が栄えるはずです。消費者の『良心』や『意識』に訴えるだけでは根本的な解決はありえないと思います。
その仕組みづくりに向けてどう具体的に提案や働きかけができるか。この『買物ガイド』がその第一歩でもあるんですが、いますぐに行政や大規模量販店に動いてもらうのは無理でしょう。でも、たとえば私たちと地域の小売店が意見を出し合って、どんな小さなことでもいいから、環境問題への取り組みをその店のセールスポイントにしてもらって、私たちも応援することで売上が伸びていけば、流れが変わるのではないでしょうか。この近くにお酒の量り売りをしているお店があって、好評だそうですよ。
今は、地域の小さなお店やさんの多くは、流通の大規模化・効率化から外れ、『不便だ』とか『遅れている』と言われています。でも環境への負荷やトータルにかかる費用という視点で見ると、実はとても進んでいることが少なくないんです。私たちが買い物をするという形でそういう店を応援し、そうしたことでこの地域が活気やつながりを取り戻していくことになればとてもうれしいですね。」
―最後にメッセージをお願いします。
「環境問題の根本的な解決に向けて、住民の立場からどう働きかけていくか。その手がかりになれば、と『水と緑を育む会』の十年間の活動で学んだことを詰め込みました。是非ご一読下さい。」
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インタビュー 2001年5月12日 インタビュアー 原 哲之 |
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