鳥類

太田川水系の生き物たち−鳥類−2008年11月 第91号

 (26) ホオジロ
〜河川敷に巣作りできる環境を!〜


 ホオジロは全長17cmでスズメくらいの大きさの野鳥です。草原、農耕地、牧場、河原の開けた環境に棲んでおり、オスはそのような場所の梢で「一筆啓上仕り候」または「源平つつじ白つつじ」と聞きなせる美しい声でさえずります。

  ホオジロは開けた環境ならどこでも見られ、草の種子、落穂、昆虫などを餌としています。一夫一妻で生活し、相手が死なないかぎり、つがい相手が変わることはありません。

 繁殖は4月中旬から始まり、椀形の巣を地上の窪みや、灌木の枝に造ります。巣造りはメスだけが行い、この時オスは常にメスにつきそっています。巣造りの時期はメスが受精しやすい時期なので、他のオスに交尾されないようにしているのです。このような行動を配偶者防衛といい、トンボなどでも、産卵しているメスに常にオスがつきそっているのをよく見ることがあります。毎日一個ずつ、5個ぐらい卵を産み、メスだけが抱卵します。抱卵して11日目に雛が孵化し、育趨はつがいで協力します。雛は11日くらいで巣立ちますが、まだ十分飛ぶことはできません。両親に餌をもらいながら成長し、しばらく家族群で生活しています。

 県内でも沿岸部などの温暖な地域では同じ場所につがいで棲みつづけますが、山間部などの積雪地域では雪が深くなると一時的にその場を離れます。おそらく雪の積もっていない地域に一時的に避難しているのでしょう。しかし、雪がおさまると、いつの間にか、もどってきて雪上に顔を出しているススキの穂をつついたりしています。寒い冬の間はずっと温暖な地域で過ごしていれば良さそうなものですが、ホオジロはそうすることはありません。これにはなわばりをめぐる深いわけがあります。

 というのも、野鳥にとって良いなわばりの確保は、自分の子孫が残せるかどうかがかかっているのです。たとえば、カラスは冬季は群れで行動することが多いのですが、日に何回かは群れを離れて自分のなわばりを見張りに行きます。同じようにホオジロも冬の間、自分のなわばりを長く留守にしていると他のホオジロになわばりをとられてしまうおそれがあります。また、繁殖期でない秋にもホオジロがさえずることがあります。これも、翌年の繁殖のためのなわばり宣言であると考えられています。

 太田川の河川敷の草地にもホオジロが棲んでいます。せっかく巣を造っても定期的な草刈りで巣が壊されてしまいます。また、時にはヘビやイタチに雛が襲われることもあります。それでもめげずに何度も巣造りを繰り返しています。自分の子孫を残そうと一生懸命なホオジロたちが安心して暮らせるような環境を河川敷に残してやることが望まれます。
 (文・上野吉雄 写真・保井浩)
 
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