鳥類

太田川水系の生き物たち−鳥類−2007年 5月 第73号

 (24) ツバメ
〜ツバメ アシ原など「ねぐら」の確保が必要〜


 ツバメはスズメよりひとまわり小さい鳥です。夏鳥として、3月の中旬から下旬にかけて越冬地である東南アジアから帰ってきます。民家に営巣する鳥として広く知られてきましたが、農村部の過疎化や家屋の密閉化などにより、巣を作る場所がなくなったり、また、水田の休耕などによるえさ場の減少により、しだいにその数が減少しています。

 ツバメは田んぼの泥を口にくわえて運び、椀型の巣を造ります。かつては害虫を食べてくれる益鳥として大事にされ、私の子供のころには、農家の玄関の土間にツバメが巣造りできるように小枝と藁でできた巣台が吊り下げられていたのを覚えています。

ツバメ
 一夫一妻で繁殖し、4〜6卵を産むと雌雄交代で抱卵します。抱卵2週間でひなが孵化すると雌雄で協力して餌を運び、雛を育てます。このようにつがいが協力して子育てをしているところを見ると、毎年、同じ場所に帰ってきて、同じつがいが仲良く繁殖しているように思えます。秋には海を渡って東南アジアで越冬します。しかし渡の途中に天敵に捕食されたり病気で死んでしまう個体も少なくありません。それで、ツバメが同じ場所に帰ってくる確率は約6割くらいだといわれています。ですから去年と同じつがいは約3割くらいになります。

 また、繁殖に失敗するとつがい相手が変わる場合があります。巣が落ちたり、カラスやヘビに襲われたりした後、メスが出て行ってしまうことがあるようです。メスのこの習性を利用して、独身のオスがつがいの留守にやってきて巣の中の雛を引きずり出して、巣の下に落としてしまいます。そして、離婚したメスとつがいになることも少なからずあるようです。

 鳥の中にはオスの方がメスより綺麗な羽をしているものが多くあります。有名なのはクジャクですが、これはメスが配偶者を選ぶときにより綺麗なオスを選択することにより、より綺麗なオスが子孫を残せるため、このような美しい羽が進化したと考えられています。ツバメの尾羽はメスより長いのですが、これもメスによる配偶者選択の結果によるものでしょうか?デンマークでの調査によると、実験的に尾羽を長くしたり短くしたりしたところ、やはり尾羽の長いオスがもてることが明らかになりました。

 繁殖を終えるとアシ原で大群を作り、そこをねぐらとします。この中にはその年産まれた幼鳥も多く見られます。太田川ではそのようなアシ原もほとんどなくなってしまいました。広島市ではアシ原の代わりに町中の電線でねぐらをとるものも、見られます。太田川河川敷でのアシ原の減少もツバメの数が減って切る原因のひとつかもしれません。かわいいツバメの姿がいつまでも身近に見られるよう、アシ原の復元や採餌場所となる水田の保全、営巣場所の確保などに取り組む時期にきています。
 
 上野 吉雄 (写真・保井浩)
 
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