鳥類

太田川水系の生き物たち−鳥類−2006年6月 62号

 (20) オオルリ
渓流の美声・メスもさえずる日本三鳴鳥


 オオルリは全長約16センチでスズメくらいの大きさの小鳥です。夏鳥として全国の渓流沿いの森林に渡来し、繁殖します。オスはその名のように背中がルリ色で、腹が白く、とても美しい色をしています。メスは褐色の地味な色をしています。これは、メスが卵を抱くため、外敵に見つかりにくくしているためでしょう。オスのルリ色は青い色素の色でなく、羽毛の中に青い色の光を反射する構造があるために発現します。このような色を構造色といいます。クジャクの羽根なども構造色で、光線の当たり具合で青やルリ色、黒などの様々な色に見えるのが特徴です。

 オスは「ピーリーリィー、ピーリーリィー」と澄んだ美しい声でさえずります。このため、ウグイス、コマドリと並んで「日本の三鳴鳥」と呼ばれています。
 
オオルリ 
 県内では三段峡や帝釈峡などの峡谷をはじめとした渓流沿いの森林に広く見られます。4月の下旬には越冬地である東南アジアから渡来し、最初のうちは沿岸部などの温暖な地域でさえずっていますが、しだいに内陸部に移動し、5月上旬にはブナ林でも見られるようになります。さえずりや縄張り争いなどを通して縄張りが決まると、崖や岩、木の股などの窪みにコケを材料にして椀形の巣を作ります。時には、山小屋やトイレなどの建物の軒下に作ることもあります。巣作りはメスが行い、オスはこの間メスに付き添っています。

 この行動は配偶者防衛と呼ばれ、他のオスにメスを取られないようにするためだといわれています。また、オオルリの習性で変わったところとして、メスもさえずる事です。他の殆んどの小鳥はメスがさえずることはありません。

 枯れ木の先などに止まっていることが多く、飛んでいる昆虫を見つけるとすばやく飛びついて捕らえ、またもとの枝に戻ります。この菜食法はフライキャッチング法と呼ばれ、オオルリやキビタキ、コサメビタキなどのヒタキ科の小鳥によく見られる菜食法です。卵は3〜5個ほど産み、メスが2週間抱卵します。雛が孵化するとつがいで餌運びをし、約12日で巣立ちます。その後しばらく巣外で育雛し、雛が自立します。

 山間部で繁殖しているものでは、時にジュウイチに托卵されることがあります。托卵というのはカッコウ類の雛が巣の持ち主の卵や雛を巣外に放り出して、自分だけが仮親に育ててもらう繁殖習性のことです。オオヨシキリに托卵するカッコウやウグイスに托卵するホトトギス、センダイムシクイに托卵するツツトリなどがあります。私は北広島町の天狗石山でオオルリの巣にジュウイチが托卵する現場に出くわしたことがあります。その巣は結局、放棄されてジュウイチの雛は産まれませんでした。そんなドラマを経て10月いっぱいには越冬の為に東南アジアに渡っていきます。
 
 上野 吉雄 (写真・保井浩)
 
当ホームページ上の情報・画像等を許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。