鳥類

太田川水系の生き物たち−鳥類−2006年 1月 52号

 (19) カワアイサ
近似種コウライアイサは県の危急種に


 カワアイサは全長約60cmで大型のカモの仲間の水鳥です。オスの冬羽は、頭と背中が緑光沢の黒色で、腹は白色のきれいな体色をしています。メスと若鳥はオスの黒色の部分が褐色をしています。シベリヤやサハリン、北海道などで繁殖し、県内には冬鳥として、各地のダム湖や、河川にやって来て越冬します。カモの仲間の食性は様々で、たとえば、マガモは水草や草の実などを主食としており、オシドリは木の実、特にドングリが大好物です。島根県の宍道湖にたくさんやって来るキンクロハジロというカモは貝類を食べ、宍道湖ではシジミを主食にしています。これに対して、カワアイサなどのアイサの仲間は魚を主食にしており、頭だけを水中に入れて魚を探し、見つかると潜って捕えます。くちばしには捕えた魚を逃がさないように棘状の突起が並んでいます。

カワアイサ 
 太田川水系では樽床ダムや、立岩ダム、渡ノ瀬ダムなどのダム湖や、太田川の本流などにやって来て、越冬します。よく似た種類にウミアイサがいますが、こちらの方は主として海岸近くの海上や港湾などの海水域にやってくる種類で、その生息域からカワアイサと区別ができます。宮島の周辺の海域には3月ごろに100羽を超す群れも見られ、カワアイサよりも渡来数が多いようです。

 また、コウライアイサという近似種もいます。これは1986年に岐阜県で初めて確認された世界的な希少種です。その後の観察でコウライアイサは県内にも少数のものが渡来していることが分かりました。1991年に吉和の立岩ダムで確認されたのをはじめとして、各地のダム湖や河川で毎年観察されるようになりました。たとえば、安芸太田町の可愛川や土師ダム、三次市江の川などで観察されるようになってきました。世界的に個体数の少ない鳥なので、環境省では、情報不足に、広島では危急種に指定されています。繁殖地であるロシアのウスリー地方では巣箱を設置して繁殖場所提供するなどして保護しています。

 カワアイサやコウライアイサなどの魚食性のカモが生きていくためには、餌となる魚類が沢山生息できる水域が必要です。そのためには多様性に富んだ生態系が維持されなければなりません。カワアイサが毎年渡来し、越冬している樽床ダムでは最近ブラックバスが繁殖するようになりました。ブラックバスが増えると、ワカサギやサツキマスなどのカワアイサの餌となる魚類が減少してしまいます。そこで、ブラックバスの駆除などの活動をとおして多様な生態系を保証してやることが、カワアイサやコウライアイサなどの県内で越冬する希少なカモ類の保護にもつながります。
 
 上野 吉雄 (写真・保井浩)
 
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