鳥類

太田川水系の生き物たち−鳥類−2005年8月 52号

 (18) ブッポウソウ
太田川沿いは貴重な個体が群棲息


 ブッポウソウは体長約30センチ、ハトくらいの大きさで、日本に夏鳥として渡米します。くちばしと脚が赤く、全身は濃い緑色のきれいな鳥です。かつてはこの鳥が「ブッポウソウ」と鳴くと思われていましたが、「ブッポウソウ」と鳴いている鳥を打ち落としてみると、フクロウの仲間のコノハズクであることが分かりました。このことから、ブッポウソウを「姿の仏法僧」コノハズクを「声の仏法僧」と呼ばれるようになりました。国内でも渡来数が少なく、特に近畿から東は各県、数つがいしか見られません。しかし、中国地方では比較的渡来数が多く、鳥取、島根、岡山、広島県ではそれぞれ数十つがいは渡来しているようです。県内でもかつて木製の電柱が多かったところには、これに穴を掘って巣穴にして繁殖しているものがよく見られました。

 
 ところが、近年、木製の電柱がコンクリート製の電柱に変えられてことにより、巣穴が不足して個体数が減少傾向にありました。そこで、各地の野鳥の会や鳥類保護連盟の会員により、電柱に巣箱をかける活動が盛んになり、その数が少しずつ増えています。太田川沿いでも巣箱をかけることにより、しだいに繁殖個体が増加しています。ところが、東日本の長野県ではいくら巣箱を増やしても、なかなかその数が増加しないそうです。これは、西日本のブッポウソウと東日本のブッポウソウの越冬地が異なり、西日本のブッポウソウの越冬地は棲みやすく、東日本のブッポウソウの越冬地は森林伐採などで、破壊されているからかもしれません。いずれにせよ、繁殖地と越冬地双方での詳しい調査が必要です。

 ブッポウソウはカナブンやコガネムシ、トンボ、セミなどの大型昆虫を飛びながらとらえて餌にします。初夏の育雛期には水田の上を飛びながらトンボを捕えて、雛に運ぶ姿が見られます。長野県の調査によると、ブッポウソウの巣の下や巣の中にアサリなどの貝殻や缶ジュースのプルトップなどが多数見つかります。おそらくクワガタやカナブンなどの硬い甲虫類をすりつぶすための挽き臼として、雛がこのようなものを飲み込んで砂のう蓄えているのだろうと考えられています。太田川沿いでブッポウソウが使った後の巣箱を調べてみると、このようなものは今のところ見つかっていません。ただ、餌として雛に与えたと思われるカタツムリの貝殻などは見つかっています。このことからも、東日本のブッポウソウと西日本のブッポウソウが別々の個体群であることがうかがわれます。このように、太田川沿いに見られるブッポウソウは国内でも、貴重な個体群なので、いつまでも見守ってやる必要があります。
 
 上野 吉雄 (写真・保井浩)
 
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