建設残土持ち込みに地元住民反対
北広島町今吉田の
建設業「新分野チャレンジ事業」
2007年3月 71号

 
 昨年の台風で県道崩壊の被害を出した安佐町の小河内川上流、北広島町(旧豊平町)今吉田の山林に建設残土を埋め立て、その上に廃棄物のリサイクル施設と農園をつくるという計画が進んでおり、地元の住民が建設反対の運動を進めています。ことは太田川支流の源流になる所。本誌も太田川の流れに直接関係することなので、取材を進めています。(篠原一郎)
 

建設不況対策で新分野にチャレンジ

 この事業は、広島県が建設業界の不況対策として新分野に取り組む建設企業を支援する「新分野進出チャレンジ企業支援事業」のモデル地区としてスタートしたもので、山県郡の建設会社12社が共同出資して、平成17年3月、設立した北広島産業KK(資本金4360万円・社長、古武家みよし氏)が事業主体になっています。事業者の説明による事業の内容は北広島町(旧豊平町)今吉田地区の山林18haを、約80万立方米に及ぶ建設発生土により埋め立て、将来ある程度埋め立てが進んだ時点で、不良土、コンクリート塊、アスファルト塊の再生、等のリサイクル事業を計画。更に土地造成(建設発生土埋め立て事業)完成後、農業法人を設立し「野菜、果樹、苗木、芝等」を生産、また、広島市民を対象に「観光農園」を開設する、というものです。

 対象となる山林は、約20年前にゴルフ場建設計画があり、地元の私有地300haが、ロイヤル航空KKに売却され、その後の経済不況でゴルフ場の計画は取り止めとなり、転売されて今は住友建設KKの子会社の所有になっており、その一部18haを北広島産業KKが購入したもの。
 
地元住民の不安と疑惑

 計画は2年前、平成17年3月31日、北広島産業から地元自治会役員に説明、6月には住民110人参加の説明会が開かれました。

 業者は、安全、安心対策として、工事は地下集水管を敷設、湧水を処理後、盛土する。最下流部に洪水調整池を設置、濁水が河川に流出しないようにする、などの説明をしていますが、地元は飲料水は地下水に頼っており、地元自治会では「地下水の汚染はないのか?事業内容が産業廃棄物のリサイクルをということから何が持ち込まれるか不安だらけだ。また、去年9月の台風13号の大水では対象地の小河内川上流、切田川が溢れ町道が洪水の川になったそんな所に大量の残土埋め立てをしたら大きな災害を起こすことは必至だ」として自治会の中に環境保全委員会を組織し、2回開いた住民大会で、新分野チャレンジ事業絶対反対の決議、また、昨年の3月には今吉田地区198戸の87%、364人の反対署名を藤田県知事、竹下町長に提出しました。
 
県、町は事業者まかせ

 この間に県や北広島町に地元住民の事業に対する疑惑、不安などを公開質問状として提出、町長と話し合いを持つなど県や町が責任を持って事業を進めるよう要求してきましたが、明確な回答はなく、行政は事業者の申請を点検、認可をして指導監督はするが、責任は施工業者にある。という姿勢です。

 今吉田環境保全委員会では1年前から、専門家、広島大学の中根周歩教授を招いて現地調査、調査をした中根教授は「膨大な建設残土を埋め立て、調整池を作ると地下水が遮断され対象地の下の家では井戸水が枯渇する可能性が大きい、また、建設残土の汚染物質が漏れて地下水を汚染する危険もある。地下は粘土質なので汚染したら広範囲に広がる心配もある。この事業をするには環境影響評価は絶対に必要だ」とコメント、住民自身の手で環境影響評価を進めるよう指導中です。
 
地元は訴訟に持ち込む準備

 今吉田環境保全委員会では去年、太田川源流の汚染は、下流の問題でもあると、広島市や可部のショッピングストアなどで反対署名活動を展開し、9月までに1万821人の署名を集め竹下町長に提出しましたが、町長はついに、今年の1月24日、事業者から提出されていた申請書を県に提出。状況は解決の糸口も見出せずに、4月下旬〜5月に県は事業を認可するとみられています。

 事業が地元に説明されてから2年、事業は大きな山場を迎えています。今吉田環境保全委員会では、弁護士と相談し、県が認可して、工事開始となれば、「工事差し止め訴訟」に踏み切る準備を進めています。その主張はこの事業は@地元の飲み水に質、量ともに悪影響を及ぼす危険性がある。Aその安全性を確かめて工事をせよ。Bその保証がない限り工事は認められない。以上3点を事業者に要求し、北広島町と県はそのことを踏まえて事業者を指導せよ、というものです。
 
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