魚類

太田川水系の生き物たち−魚類−

太田川の魚(9)カワムツ
〜酷似種「ヌマムツ}が三篠川に棲息〜

カワムツ
 カワムツは全長約15cmのコイ科の魚類です。中・上流域を主な棲息域とし、時にはアマゴが棲んでいるような環境にも適応しています。子供達には「はや・はえ」の名称で呼ばれ、フナとともに釣りの対象魚として馴染みのある淡水魚です。やや流れが淀むような環境に棲息することから「淵ばえ」と呼ばれ、特に赤や黄色の婚姻色を発現した雄を「入道ばえ」として区別します。「はや・はえ」の中には、流れの速い瀬に棲息するオイカワが含まれますが、こちらは「瀬ばえ」として区別し、赤や緑の婚姻色が出た雄を「あかもち・あかまつ」と呼び、雌を「しらはえ・しろはや」と区別しています。カワムツはやや骨が硬く、食べるには敬遠されますが、オイカワはカワムツより柔らかく、「寒ばえ」として酒の肴に珍重されています。

 カワムツの繁殖期は6〜8月上旬です。皮底が砂である環境に多くの個体が集まり、熟卵を持った個体から順次産卵をします。優勢雄は産卵場付近をパトロールし、他の雄達を追い払います。優勢雄は追星(口の周りや尻びれに発現する突起物)を雌の体に当て、産卵を促せます。雌が産卵場を決めると、優勢雄は雌に寄り添い、体をくねらせ、すべてのひれを震わせながら、精子を放出します。その瞬間に、砂は流れに巻きあげられ、雌の体は砂の中に埋まり込み、同時に、産卵をすませます。周りにいる劣勢雄たちは優勢雄に紛れてスニーカーとして、繁殖に参加します。ひとたび産卵・放精が始まり出すと、あちらでもこちらでもこのような光景を見ることが出来ます。

 近年、カワムツに酷似した「ヌマムツ」が棲息することが明らかになりました。カワムツの棲息環境より、もっと流れの緩やかな環境に棲息することから、このような和名が付けられたようです。太田川水系では比較的流れの緩やかな三篠川に棲息しています。外形ではなかなか区別できませんが、側線鱗数が多い(カワムツより鱗が小さい)こと、腹びれに橙色の色素が発現していることで区別できます。太田川本流では未だ確認されておりません。今夏、川遊びの時、ヌマムツを探してみませんか。
(川野 守生)
 
当ホームページ上の情報・画像等を許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。