魚類

太田川水系の生き物たち−魚類−

太田川の魚(2)ウナギ
天然魚の遡上が激減した

ウナギ
(1997.8.16撮影)

 日本全国に分布し、河川の上下流域・湖沼を問わず生息します。大きさは約60cm、大きなものは1mを超え、腕の太さぐらいのもいます。形や体色や味覚によって「ごま・がにくい・まお」などと呼ばれることがありますが、すべて同一種です。
放流漁
1986.9.12撮影

 繁殖場所は琉球列島南方海域と考えられています。ふ化した仔魚は葉形幼生(レプトセファルス)と呼ばれ、大きさは約10cmです。柳の葉の形に似ており、無色半透明で扁平、ほとんど遊泳力をもたないため、海流や潮流に身をまかせ漂流を続けながら四国や九州の太平洋岸にたどり着きます。直前には変態して「針うなぎ」になり、黒い色素を持つようになります。この針うなぎは一合が数拾万円もする貴重な水産資源です。これを浜名湖などの養殖施設に運び、成長させたものが養殖うなぎです。最近は外国産の種苗も移入されており、「味が違う」と指摘されることもあるようです。養殖うなぎといっても完全養殖ができない魚類なのです。

 私たちがこどもの頃、川で遊んでいると6〜8月頃に6〜7cmの「針うなぎ・糸うなぎ」が遡上してきたものですが、現在はほとんど見ることができません。海が汚れたのか、潮流が変化したのか、河口域の汚染が原因なのかはよく解りませんが、太田川水系でも、近年、海から遡上する天然個体が少なくなったため、四国や九州で採捕された針うなぎを一次貯養して放流をしています。

 ウナギは漬け針やうなぎ籠で漁獲されますが、子どもにはなかなか捕まえることができる魚ではありません。子どもの頃、夏季にはドジョウを餌に、石垣の隙間に釣り針を差し込んで、ウナギを捕らえる光景がしばしば見られましたが、現在はそうした光景も見ることはできなくなりました。護岸がコンクリート化されて住みかが少なくなったり、川に堰やダムができたために遡上・降海が十分行えなくなったことに原因があるように思えます。太田川の支流である柴木川の三段峡では、幼魚の滝のぼりが記録してありますが、このことからダムや堰ができる以前には最上流域まで多くの個体が太田川を遡上していたことが推測されます。ウナギは海と川を一往復して一生を終える両側回遊魚なのです。
(川野 守生)
 
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