ゼロエミッション広島をめざして
最終年度・総合目標2つは未達成
2008年 7月 87号
広島市ゼロエミッションシティ推進協議会委員 原 伸幸さん(本誌会員)

 広島市はゴミを可能な限りゼ囗に近づけようという「110万人のゴミゼ囗宣言」を06年に策定し、その具体的な行動計画を検討する「ゼロエミッションシティ推進協議会」がスタートして今年で4年になります。
当面の目標としている @ゴミ総量の2割減少 Aゴミのリサイクル率を2倍に Bゴミの最終処理=埋め立ての5割減少(02年基準)はどこまで達成できるのか?
 今年は計画の最終年度にあたるので、推進協議会の委員として活動している本誌会員の原伸幸さんに推進協議会の内容について執筆をおねがいしました。(編集部)

 
6年にわたる取り組み

 広島市に「広島市ゼロエミッションシティ推進協議会」が設置されて4年になりますが、前身の「ゼロエミッションシティ検討委員会」からすると6年近くになります。

 そもそも何故そのような協議会がスタートしたかというと、社会的な背景を無視するわけにはいきません。高度経済成長によって大量生産、大量消費、そして大量廃棄型社会を招いた広島市は、1975年に「ごみ非常事態宣言」を発し、全国に先駆けて5種類分別を開始しました。

 しかし1980年代のバブル社会からベブル崩壊に至ってもゴミ問題は増々深刻化し、宣言による5分別だけでは現実に対応できなくなっていました。

 そのような時に、出島沖埋立地に県の産業廃棄物最終処分場建設計画があることが、地元の人達に十分な説明のないまま発覚し、地元の人達を中心に反対運動が起きました。当時の環・太田川のコラムに、県の姿勢を批判しながらもゴミ問題に根本的に取り組むための提言を書きました。内容は出口のところだけで考えるのではなく、入口から出口まで社会の流れ全体で捉える必要があるといったものでした。

 
製品製造から廃棄まで総合点検

 つまり入口としての製造業者責任、そこから流通業者(責任)、販売業者(責任)、消費者(責任)と流れていき、途中リユースーリサイクルされても最終的に廃棄物処分業者(責任)の所(出口)へいき、全体を監督する行政(責任)も加わった、それぞれが責任をもって議論・検討する塲の必要性を問うたものでした。
 その提言を読まれた秋葉市長の肝いりで2002年に「ゼロエミッションシティ検討委員会」としてスタートしました。

 構成は当初から生産・製造業者流通・販売業者、環境団体。消費者団体、リサイクル廃棄物処理業者、学識経験者の各々から委員を選出し、事務局を行政(環境局)に置くといった構成でした。

 ゴミ問題が深刻化していたフラワーフェスティバルへの取り組み(ゴミ分別ステーションの設置等)やゴミ問題をテーマにしたイベン卜などを行いましたが、より強力に推進しようということで名称を現在の「ゼロエミッションシティ推進協議会」と改め2006年に再スタートしました。

 その基本的な趣旨は、一人一人の生活様式を見直し、ゴミを可能な限りゼ囗(ゼロエミッション)に近づけ、環境への負荷を少しでも小さくしていこうというものです。そして実現のための3つの目標と8のチャレンジという減量プログラムを基準年度02年、目標年度08年として策定しました。

■3つの目標
1、ゴミ排出量の20%減
2、リサイクル量を倍増
3、埋立処分量を50%減

■8つのチャレンジ
T環境意識の向上
@ごみ減量、リサイクルの必要性の周知
Aごみ減量実験、減量効果のフィードバック
Bエコメイト広島リーダーによるごみ減量等の意識啓発の推進
C情報交換を通じたごみ減量等の推進
Dエコセンターの整備

U環境教育、環境学習の推進
@学校、地域、家族が一体となった環境教育、学習の展開
A経験を通じた環境教育、学習の実践
B学校給食牛乳パックのリサイクル

Vルールの徹底によるごみ収集システム等の再構築
@家庭系容器包装プラスチックリサイクルの推進
A家庭系紙ごみリサイクルの推進
B家庭ごみ分別徹底の推進
C事業系紙ごみの清掃工場への搬入規制措置の徹底
Dガイドラインによるリサイクルの推進
E事業系剪定枝リサイクルの推進
F事業ごみ指定袋制度の導入
G市役所のごみ分別の徹底の推進

W地域職場等におけるごみ減量等のための活動の推進
@モデル地域での取り組みの実践
A地域の推進体制づくり
Bスポーツ施設、文化施設等のゴミゼロ化の推進

V市民、事業者の自主的な活動の支援
@市民・環境NPO、事業者等への情報提供、情報発信機能の充実
A市民・環境NPO、事業者等のネットワークの形式
B市民・環境NPO等の活動の支援方策

Yライフスタイルの変革に向けた取組の推進
@トレイ等の店頭回収の促進
Aグリーンコンシューマーの育成
Bレジ袋の有料化等の育成
Cばら売り、量り売りの推進
D百貨店等の包装類有料化の実施
E新聞折込広告の購読者選択

Z環境負荷を考慮したリサイクルシステム等の構築
@事業系生ごみリサイクルの推進
A焼却灰のリサイクル
・事業系廃プラスチックのリサイクルの検討
・廃食湯のリサイクルの検討
・その他のリサイクルの検討

[ごみ減量、リサイクルを推進するしくみづくり
@事業ごみ指定袋制度等の導入(再掲)
A家庭ごみ指定袋制度の導入
Bごみ減量、リサイクル活動の支援
・製品の修理、補修等を実施している販売店等の市民への周知

 
政令都市中最低のゴミ排出(1人当り)

 今年度は丁度目標年度です。広島市のゴミ排出量は年々減少し、1人当りの排出量は、549gで、政令指定都市の中では最も少ない年になりました。それでも削減目標の今年度20%達成は厳しい状況です。

 今年度の数値はまだ出ていないので、昨年度の実績で数値を見ると、ゴミの総排出量が02年の準年度44・4万tから07年度39・4万t。リサイクル量が02年度4・6万tから07年度6・4万t。埋立処分量は02年度10・2万tから07年度4・9万tで一定の成果はあげているものの目標達成は困難な状況です。ただ、埋立地処分量が目標を達しているのには救われます。

ポイントは家庭生ゴミ減量

 そこでこれまでの取組と達成状況を踏まえて、今後さらに環境への負荷を低減し、次世代によりよい環境を継承していくため、09年(H21年)度から13年(H25年)度までの5年間を計画期間とする次期「減量プログラム」を策定し、新たな目標と目標達成のための具体的な取組を掲げ、より一層ゼロエミッションシティの実現を目指していくことになりました。

 その過程で避けては通れない問題が生ごみです。ごみ総排出量の約60%は家庭系で、家庭系ごみの約70%が可燃ごみ、その40%を生ごみが占めているそうです。そこでこの生ごみへの新たな取組が「広島市家庭系生ごみリサイクル研究会」によってはじめられています。家庭から出る生ごみが堆肥化され、農地に還元されるようになればもう「ごみ」ではなく「資源」です。そして広島市が進めている市民菜園拡大計画と連動していけば可能性が広がります。

 広島市は現在市民菜園を6000区画以上確保し近い将来1万区画くらいになると食料自給率、耕作放棄地、農業後継者、そして生ごみの堆肥化などの問題に大きく貢献することになるでしょう。そうなるためには当協議会や生ごみ研究会、そして太田川再生プロジェクト、さらには有機農業講座を開催して、それらと連動していくことが時代から求められています。何故なら真の「ゼ囗ミッションシティ」とは生命循環(有機農法)を基本にした社会だと思うからです。
 

 
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