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 連載 環境問題の羅針盤\ 藤井 直紀
地域規模と地球規模
2008年 9月 第89号 


 時間が過ぎるのは早いもので、あっという間にもう九月に突入。今年もあと三分の二を残すばかりになってしまった。ここ数日は夜になれば多少涼しく(場所によっては寒く?)なってきたが、日中はまだまだ暑い。体調を崩さないようにして、これからやってくる「食欲の秋」、「読書の秋」を過ごしたいものだ。

【ゲリラ豪雨】

 八月も終わろうとする頃、日本中を騒がせたのが集中豪雨だ。特にひどかったのは愛知県で、一時間の降雨が一四六・五ミリに達したという。その他の地域でも、1時間あたり100ミリからて120ミリもの雨が降り、まさしく「豪雨」である。今回はあまりに被害が大きかったので気象庁は「平成二〇年八月末豪雨」と名付けている。

 最近はよくこの集中豪雨が起こるようになった気がする。一般にこれを「ゲリラ豪雨」という名称でよく耳にするようになった。ゲリラ豪雨の決まった定義はないようだが、一般には、

 一 発生範囲が局所的
 二 短期間に降る
 三 一時間当たり100ミリ(80ミリとしているところもある)を超えるほどにどっつと降る

のような現象を指すようだ。八月末の豪雨はちょうどこの定義にあてはまる。

 このような豪雨は、非常に予報しづらいようだ。それにあまりに急であるために対応の遅れが目立つ。今後は何らかの対策が望まれる。

 八月一五日から、天気情報のなかでゲリラ豪雨の傾向がみられた場合、「雷注意報で突発的な雨の強まりへの注意を促す」ようにしているそうだ(気象庁談)。テレビ、デジタルテレビデータ放送、ラジオ、インターネット等の情報を注視していただきたい。

【渇 水】


 一方でわが町(というか、私の職場の町)松山市はこの夏、非常に雨が少ない。六月から八月に降る雨は、今年は平年の56%ほどである(図1)。こんな状態であるので、松山市の水瓶である石手川ダムの貯水率は九月八日現在46%ほどである。松山市渇水対策本部も設置され、すでに水道水圧の減圧も行われている。このままいくと秋から冬にかけての「水事情」が心配される。


 この傾向は松山市だけでなく、四国地方の多くの地域で言えることである。四国地方の水瓶とも云われる早明浦ダムは貯水率0%で閉所状態、富郷ダムだと73%となり、四国地方の中では水を保っている方である。

 高松地方気象台が発表した四国地方の一ヶ月予報(9月6日から10月5日までの予報)をそのまま抜粋すると・・・・

「四国地方では、降水量の少ない状態が続いている所があります。向こう1か月は、数日の周期で天気が変わる見込みですが、現在の少雨の状態が直ちに解消する可能性は小さいでしょう。」ここ一ヶ月での回復は見込みなしのようである(涙)。




全体を観ることと部分を観ること】

 豪雨や渇水、こららの説明としてテレビやラジオの司会者やコメンテーターが言うことは「地球の異常」、「地球の危機」だ。

 これらの気象現象が、報道されるように地球規模の現象なのか、それとも地域規模(地域的な特性)の現象なのかは現在のところ解らない。私の所属している研究機関は他多くの若手研究員が集っているが、そのそれぞれに尋ねてみても意見の分かれるところだろう。私はどちらかというと地域規模のこだわるタイプであるので、地域的な要因を考える方に頭が回る。例えば、松山の夏の降水量は今年少ない傾向にあったが、特出するほどの異常値というわけではない。図1に示すとおり、数年に一度はそのような状態になっている。松山地方の特徴だということも出来なくはない。

 「地球温暖化」の現象を予測しようとしている地球シミュレータは、今後雨がよく降る地方と降りにくくなる地方が出来てくると予測している。また、局所的に豪雨が起きることも予測されている。地球シミュレータが温暖化現象を充分に再現できているとはいえないが、もし今後、予測に近いことが起きるのならば、「温暖化」という地球規模の現象も無視できないことになる。

 地球規模の現象と地域規模の現象をはっきり区別することは、困難なことだ。おそらくどちら’感覚”をもつことが大事だろう。(個人的にはそれでもやはり地域的思考を脱することはできないが・・・)

【なんでも温暖化のせいにする】

 今回もやはり「温暖化」という言葉を出してしまった。
 最近、松山でテレビを観ていると、次のような歌詞の音楽が流れてくる。

 地球の温度があがってる/
 こわ〜い・こわ〜い温暖化/
 地球の温度をあげないために/
 減らそう減らそうC02/
 わ〜たしか住んでる地球/
 緑の星を守りたい/
 だから地球にエコしよ/
 ええことしよ(後略)

 (南海放送『地球にEcoしょ!〜私のエコ宣言〜』より)

この記事の読者ならもうすでにお気づきかもしれないが、私は「温暖化」を強調することは好きではない。「環境問題」=「温暖化」と捉える人が多いからだ。温暖化をなんとかすれば「環境問題」は解決するなんて考えが広まると非常に困る。温暖化対策のみで本当に「緑の星を守りたい」ことにつながるだろうか?

「参考情報」

環境問題に興味を持つていらつしやる方はやはり外に出て自然に触れる機会も多いだろう。今回は自治体の出す災害情報をいち早く提供してくれるサイトを列挙しておくので参考にしていただきたい。山や海に行くときはくれぐれもご注意を!

天気の急変から身を守るために(気象庁)
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/info/tenki_chuui.html

ダム・河川情報
http://www.river.go,jp/

広島県防災情報
http://www.bousai.pref.hiroshima.jp/hdis/index.jsp

広島地方気象台
http://www.osaka-jma.go.jp/hiroshima/

 
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