生態系・里山・里海


太田川再生の課題と実践

〜アユが遡上する川、泳げる川に〜

 2007年11月 第79号 別刷
NPO法人「環・太田川」設立準備総会における講演記録
2007年10月28日中区八丁堀・幟町会館にて

司会 今日は新たなスタートを切るに当たり、記念として最も太田川にふさわしい方に記念講演をして頂こうという訳で、広島の水博士の異名をとる国際学院大学の佐々木健先生にお願い致しました。佐々木先生は去年8月に新たに広島に設置スタートを切ることになりました「太田川再生プロジェクト」の委員長を務めておられます。これは先生の方からお話しがあると思うんですけど、行政の枠を越えて太田川に関するここに行政も市民も、利害のある企業、事業、その他が全て関わっていこうというかたちで・・多分ひとつの流域でこういう形の会が持たれたのは全国で初めてじゃないかと思うんです。そのような画期的なプロジェクトをスタートすることになりました。そういったことも含めて、佐々木先生の方からお話しいただけれぱと思います。その前に、本会の川上代表のご挨拶をお願いします。

川上 皆さん本日はもう11月が来るというのに、気温が高くて上着を着ていると汗ばむような日の中、お集まり頂きました。「環・太田川」が亡くなられた原哲之さん、篠原さんのタッグで始められてもう6年の歳月を経て、当初はまあ二人で、まあスタッフもおられたんでしょうけれど、大地に種を蒔かれたんじゃろうと思います。その種が6年の間に芽を出して、だんだん成長してきた。それでこの度のNPOで小さなつぼみが出て来たんじゃないかと思います。「環・太田川」の活動というのは、皆さんご存知のようにすぐに結果が出るような仕事ではないんです。ぽんと苦労苦労の積み重ねの地味な仕事です。NPOになってみますと、また一段と今まで以上の努力が必要で、それに耐えるような体質をまずつけることから始めて・・例えば、会合をもう少し開く、会員に特に若い人に入ってもらうような・・そういうことを考えてるんです。環境問題だけでなく地区地区の生活とかいうのを、全国の水に興味のある人に知らしめる活動ということで、ほんとに地味で固くて、やねこい仕事だと思います。でも、これをやり遂げんといかん。蒔いた種から芽が出て葉が出て、つぼみが花になることは今からの努力次第だと思っていますので・・どうか今後も皆様のご協力をよろしくお願いします。
 

記念講演「アユが遡上する川、泳げる川に」〜太田川再生の課題と実践〜

             広島国際学院大学教授 佐々木健さん
 

 皆さん今日は。佐々木健と申します。よく存知あげた方ばかりで、申しあげるごとないんですけど、本日は新たに「環・太田川」がNPO法人として出発するということで、おめでたいことだと思います。思い起こせば、原さん、亡くなった哲ちゃんですね、今の原さんと両方ハラハラッときたもんですから、何をやるんかいのとハラハラしとったんですけど。この席に原の哲ちゃんがおられんというのはたいへん残念なことです。なかなか立派な活動でしたし、彼のことをよく思い出します。

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 先ほど言われましたが、私も広島市の主催する 「太田川再生プロジェクト委員会」の委員長を仰せつかっておりまして、昨年一年やらしていただいたんですけど、まあこりゃあたいへんな会だなと思うのが実感でございました。まあ、多士多彩といいますか、民間の方、一般の方、幅広く委員を選出されたのが好いことだと思ってたんですけど、まあ意見百出でございまして・・太田川というのはご存知のようにいろいろな方が水をめぐって関係をしていらっしゃいます。一つの部所で良いと思ったことでも必ずしも良いとは限らないわけです。これは良い思って、やろうとすると、別の所で反対が出てくるとか・・いろんな所でそういう問題が出てくる。まあ予想はしてましたけど予想以上にありまして、取り纏めに非常に苦労しているのが現状です。でも、秋葉市長さんから付託を受けた訳ですから、何とかこれを取り纏めて市民の方に問うて、より太田川の水を見つめ直して頂き、未来永劫にいい水質が保てるように‥アユが遡上し、泳げる川を、本当に豊かな太田川ができるようにという訳で、何とか具体的な方策を出していきたいと思いまして、今年4部会に分けて課業部会的にやって行きたいと思ってます。

 実質的には、水質、水量、環境、森林などが主な部会になるんじゃないかと思います。太田川のダムを含めまして水量の関係、これが一番影響を市民あるいは産業界におこしていることは、ぽちぼち明確に分かってきました。一番大きいのは中電さんですけども、中電さんがどのように水を使っていらっしゃるかというのも広島市民の大きな関心であります。で、中電さんの動きによっては太田川の水質もかなり大きく左右されるんじゃないかと‥こういうようなことも徐々に分かってまいりました。ですから、今年はそれをより具体的に数値で科学的に評価を行いまして、市民の方に問うて、どれが良いかを大いに論議して頂きたい。そういう基になるような報告をさせて頂こうと思っております。

 ちょっと曖昧に、ちょっと行政寄りの発言をしているんですけど、要するに水量がどれくらいになっているのか見れば、どれくらい水が流れてくれば海はちゃんと良くなるのか。アユがちゃんと育つのか。そういうことが未だ瞹昧なんですね。そこらが水産関係の方だけでも意見が分れる。内水面漁協さんと、シジミを扱ってる漁協さん、それと海の各漁協さんの考えが全く異なる。専門家の方々でも、どういう水量が良いのかということは非常に難しいと思う。それを科学的にできるだけ解明して、より客観的なところで意見を出そうということです。

 太田川再生の課題と実践ということで講演してくれと言われたんですけども、今まで私が講演してもですね、だいたい皆さん私がどういうことを喋るのかほぼご存知なんですね。どういう講演にしようかいろいろ悩んだんですけど、再生プロジェクト委員会でのこと、いろいろな方々との触れ合いなどを通じてのこと、データははっきりしたものはありませんけど、今まで見聞きし感じたことをふまえながら、古い写真を使いながら紹介しようと思います。後でご遠慮なくご意見を頂けたらと思います。

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 太田川再生の目的、おそらく「環・太田川」さんの最終目標でもありましょうが、ここの水質をどのように再生するか(原爆ドームとその前の映像)、この目標でありますね。そこからいろいろ意見が分かれるんですけど、いちおう抽象的にはアユが遡上し、アユが喜び、カキが、あるいは水産養殖が豊かになり、なお且、泳げる太田川‥こういうことがいわれます。で、まあ、それぞれ水産一-級とか水産二級とかそれぞれ水質は国が決めた基準があるわけですけど、私は水質を長くやってる者からすれば、まず、ここで泳ごうと、泳げる太田川にしようと・・これがまず第一じゃないかなと・・これを感じます。ここが本当に泳げるよいうに再生されれば、自と水産関係の恢復は望めるんじゃないかなと・・そういうふうに水質科学的に認識しております。則ち、ここで泳げるということは、CODとか、大腸菌とか記入がありますけども、一番泳げるギリギリのライン‥Cランクですね・・そこまで回復できたらいいんじゃないかと思っております。

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 実は太田川再生委員会になる前に、いろいろ太田川の水質を調べまして、かなり回復傾向にあると、もう泳げると私は認識しておりまして、いろんな所で発言はしていたんです。ところがですね更に調べてみますと、後からも言いますけど、満潮時になると非常に汚い水が海から上がって来て泳げなくなってる。今までずっと、太田川の汚れは山からきてると認識してたんですけど、どうも最近はそれが逆転しつつあるんじゃないか。そういうところがここ数年の新たな事実です。水質学的にはおぼろげながら認識はしていたんですが、あれ程まで海から汚い水が上って来るとは思っていませんでした。というと水産関係の方に申し訳ないんですけど、それが現実じゃあないかと思います。結論を先に言ってしまいましたが、とにかく私の目標は、まず此所を泳げる川にしたいということです。

 
 ここにいらっしゃる方はご経験があるかも知れませんが、此所で泳ぎよった。此所に飛び込み台があるんですね。昭和30年代までは泳げたんです。私は此所で泳いだ経験は大学になってからです。昭和43年、広大に入ってからで、クラブの新入生歓迎会で川へ突っ込まれました。満潮の時でしたけど、太田川の水をタラフク飲んで、カキガラで足を切って出血したのを今も憶えてます。とか干潟とか残ってましたからでしょう。満潮でもかなり透明度がありました。ちょっとショツパかったけど、ショツパイ味が広大に入った嬉しさで吹き飛んだということを鮮明に憶えております。したがって、昭和40年代初めはむしろ干潮の方が汚かったんじゃないかと思います。

 というようなことで、まず「泳ごう」ということを第一の目標に掲げている訳です。今、寒中水泳されてますけど、冬でも今ではちょっと水質は悪いんじゃないですかね。原爆ドームは広島のシンボルですから、このシンボルのたもとで泳げるというのが素晴らしいことだと思います。

     eeeeeeee

 ちょっとこの前、紹介していただき、県知事さんと対談する機会がありました。県知事さんも太田川の実情はあまりご存知ない面がありまして、広島でも結構好い水があって、好い温泉があるんだということを申し上げますと、ああそりゃ早速宣伝せにゃあいけんと仰ってましたけど、宮崎県の「そのまんま知事さん」のように、広島の良さをもっともっと宣伝して頂ければ、もっともっと嬉しいことなんですけど。まず、太田川のことについて再認識して頂けたらと感じました。だからもっともっと言い続けていこうと思いました。ここでですね、知事さんと市長さんが一緒に泳いで頂ければ非常に好いことじゃないかと思いますが・・(笑い)

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 これはひとつの象徴でございますが、広島城は石垣の下にマツを敷きつめてあります。これは水城です。水に浮かんでいる城といってよいでしょう。この石垣の下のマツが水を孕んでクッションの役割をしている。バネの役割をしている。

 福島正則が、こういうデルタの柔らかい所でどっしりした城を築くには・・と考え造り上げた工法なんでしょうが・・広島の建物は殆どが水上の楼閣と言っていいでしょう。地下水が砂を孕んでそれが支えてます。高いビルは岩盤までア冫カーを打ち込んでますけど、ふつうの平屋、簡単な家はみな砂の上に浮かんでるわけです。だから地下水が不足してくると地盤沈下を起こす。地震の強いのがくると液状化現象が起きますし、地盤沈下も起こるわけですが、ここの堀に満々と水を湛えることによって城を支えているわけです。

 ところが、昭和30年代から昭和40年代にかけて沢山上の方で水を使うせいでしょう、祇園水門とか高瀬堰とかできたせいでしょう、地下水位がだんだん下がって、干上がってきます。干上がったらいかんということで、ビニールを敷きつめたんです。そこぷ満々と水を湛えて、水を町に供給するようにしたんです。けれども今度は逆にここにビニールを敷きつめると、土との接触をとられたために水質の変化がもろに表れるようになったんです。水が要りますからファミリープールのよこから汲み上げまして、1日3000トンくらいだったですかねえ、水深1メートルくらいなんです。

 ところが太田川の水質がだんだん汚れて、地下水位も下がってくるもんですから、ここに入ってくる水自体にチッソ、リンが増えてきました。ここでアオコが大繁殖しました。それでコイが大量死した。そういう状態になりまして、太田川と結局繋いだわけです。その間いろいろ浄化作戦をやったんですけど、ユスリカが大発生したりして、いろいろありました。そうですね、此所にこのくらいのコイがすごい泳ぎよったのをご存知ですかね。昭和50年、ちょっと前くらい。縮景園にもすごいコイが泳ぎよった。で、カープが初優勝した頃、山本浩二とか衣笠がホームラン打つたですね。コイが飛び跳ねたです。(笑い)

いや、ほんまです。あの魚は側線ですごい疲労感じるんです。コイは特に感じますから、ホームラン打ったスタンディングオペレーション、震動が伝わってパーツと飛び跳ねるんですね。コイは地震があると必ず傷ついて、それで死んだのがけっこういるんです。あの頃は大きいコイがおりました。だから鯉城という名前が付いたんですけど。今はもう殆どコイはおりません。海水が入って来ますから、ボラとかスズキとかが多い。今は真水は1/3くらいですね。ここの水質は今はもろ太田川の水質になりますから、ここに広島城汽水浴場になると一番理想的であります。

 秋葉市長はいろいろ世界中訪問しておられまして、フランス、セーヌ河にはプールがあるんだそうです。セーヌ河のそぱにプールを造って泳いでる。広島は河で直接泳げるんじゃあないか。そういうふうにせよと、こういう指示が市庁内で出回っているそうで、まあ何とかそこまでいけたらなあと思ってます。

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 これは高瀬堰で、平成3年に撮った写真です。ここにうっすらヘドロがあるということで、撮ったものです。平成5年頃迄は政令指定都市の中で最も大腸菌群が多い水源でした。従ってあの頃は太田川は絶対泳げませんでした。これは可部の生活排水がもろに此所へ入って来ていました。可部に下水道が徐々に普及するようになりまして、秋葉市政になってから急速に水質改造が進んで来まして、今は先程言いましたように、かなりきれいで、太田川の水質は泳げるまでに回復して来ています。今年は特に水質が良くて、梅雨の時にすごく雨が多かった山の湧水も屈指の水質を示しておりました。八月の盆過ぎくらいまでは例年にない水質を示していたんです。今年は泳げる、と市長さんに間接的に言ってもらいました。チャンスだと、今を逃すと泳げないということで、9月4日か5日を泳ぐ予定に取っていたんです。ところがちょっとここの水質検査のプリントを見てください。これは市長さんが泳がれるというとマスコミも来るでしょう。必ず水質を問われると思うのでそのバックアップデーターとして、学生と共に水質検査を敢行したんです。ぼくは満潮の時にとったことがそれ迄なかった。そこで泳げると確信をもっていたんですけど、これを見て頂くと分かりますが、(下は佐々木氏作表より抜)これを見てお分かりのように、空鞘橋たもとでの満潮時のCOD汚れは12、8 ・12、2となってますね。干潮時には4、2 ・3、Oですね。大腸菌は1だったら泳げるんですが、もう2になったらだめなんです。透視度はまちがいありませんが、ネックはCODと大腸菌いた。夜中の満潮時に測ったらCODが20で、大腸菌が34もあった。原爆ドームの前での計測でも似たような数値を示しております。

 これはどういうことかと言いますと、ここ平成5年以降の太田川は徐々にきれいになっていて、干潮の時は泳げる。しかし満潮になると海からどっと汚い水が押し寄せて来る。かなり濁った水が来ますので、ヘドロを巻き上げて川に持ち込んで来るんじゃないかと考えています。今月号の「環太田川」誌にも、日比野先生が同じようなことを書いておられるので、ああ成程なあと思っていたところなんです。

 ですから、太田川の現状では、干潮ではヘドロはありますが、ヘドロの中でべちゃべちゃやれば泳げる。半分くらい満潮になっていくタイミングだったら、ぎりぎりの水泳規準Cで泳げるんじゃないか。でも冬になりますと浮遊固形分があまり持ち込まれないことが予想されるので、満潮時も泳げるんじゃないかと‥今年の冬は市長さんにウェットスーツでも着て泳いで頂こうと、それ迄ちょっと間があるので、古式泳法の会のかたに、市長さんといっしょに泳いで頂けませんかと言ったら、それはたいへん好い事だということになりお仕事などでお疲れなのに弁当持ちでやってきて稽古して頂いたんです。でも残念ながらこういうことで、ちょっと市長さんどうされますか、水質がぎりぎりで危ないですと正直に申し上げましたら、市長さんも水質が悪いのならやめましょうという事になり、残念ですが断念したという経緯があります。

 市長さんは水泳が得意だそうで、子どものときからよく泳いでいたそうです。ハーバードのプールでも泳いだということで、ハーバードの水は硬水でしょうけど、こちらは軟水でもっと泳ぎやすいと言ったんですけど・・ま、市長さんに泳いで頂けると、皆さんももっと太田川に関心を示して頂けると思うんですがね。今、多くの市民は太田川はもう汚くて泳げない!もう駄目じゃ!と思われる方が多いんですけど・・いや、そうでもないいろいろ皆さんがこれまで頑張ってきて、その影響がやっぱり出て来てると思います。この会の活動もその一つだと思います。川の水は今きれいになりつつある。もう一息だと感じております。

 平成5年くらい迄は生活排水がもろに流れて来常に大腸菌の多い川水で、泳げない状態だったことは間違いない。これが現在の高瀬堰の水質で、底にヘドロがありますし、藻がべっとり生えてきてる。これが腐ってヘドロ化するということもあり得るでしょう。大腸菌はちょっと下がった‥といってもまだあります。高瀬堰では警戒しています。

 こちらは源流域の水です。竜頭峡です。これが本来の太田川の水ですね。

 これは中流域になります。加計と可部の中間、この辺の水質は所々に堰になっている所は汚い。加計からの生活排水が来ている可能性がある。

      ○○○○○○○○○

 広島の水はですね、皆さんご存知でしょうけども軟水なんです。軟水というのは硬度50以下をいうんですけど、世界的規準では100以下です。でもその世界規準にすると西日本の水は全部軟水になってしまうわけです。酒を造る人は昔から広島の水でも軟水・中硬度水・硬水と識別して使っていらっしゃいますので、国税庁の規準、酒造りの水の規準を適用した方が正しく日本の水の評価ができるんじゃないかということで、国税庁の水の規準をちょっと変えて使ってますけど。従って広島の水は軟水です。これが特徴です。太田川の水は硬度が20p pm以下です。

  1P P m (pert per mi l l ion)
     1 ppm= 1 mg/L

 軟水は非常に汚れにくい水なんです。東京とか大阪のミネラルウォーターにはカルシウム・マグネシウム・ミネラルが沢山ありますから、そこに生活排水なんかがちょっと流れて来ますと、チッソ・リン、それで藻の栄養価が調うんです。つまり、ちょっとのチッソ・リンで、わあっと藻が生える。川に植牛がはえる・・どういうことかと言うと、空気中の炭酸ガスを川にとりこんで川を汚しているということ・・従って藻が生えるということは、川を汚していることです。

 畠の植物はそれで良い。或は森林の木はそれで良い。炭酸ガスをどんどん吸収してもらえるんですが、川や海の場合は空気中の炭酸ガスを吸収してもらうと汚れてくるんです。だから困るんで、硬水の場合は非常に汚れやすい。

 東京・大阪の水は汚れやすい。琵琶湖の水も汚れやすい。ちょっと硬度が高いから。ところが広島の水は軟水ですから汚れにくいんです。その水を寄ってたかって汚してきてたのが平成5〜7年あたりまでの広島の実情であったわけです。

 名水の規準ですがね。厚生省が昭和59年に定めた規準は硬度50以下・有機物が1.5以下だったがこれに合致する水は東京・大阪には殆どない。そこで2年後に緩くして、硬度100以内・有機物3以下に改めた。でもこれだけでは高瀬堰でも有機物3くらいです。大腸菌うようよの水でもこの規準なら名水になる。広島中名水だらけになってしまう。こんなぱかなことはない。

 ちょっと余談ですけど、ミネラルウォーターが美味しいと感じられる方が多いんですけど、あれは何でかと言うと、カルシウム、カリウム、珪酸とかの美味しい成分。マグネシウム、硫酸などの不味い成分。それを冷やして飲むとき美味しくなるようにメーカーの方で調合しておりますから、だからミネラルウォーターが美味しいと思い込んでいたふしがあります。ところが最近はミネラルウォーターよりも軟水の本当の美味しさが認められて来ていまして、軟水の方がよく売れるようになって来ました。これは全国的な傾向です。従って皆さんご存知でしょう『六甲のおいしい水』、あの水質が去年からがらっと変わっている‥
 
 
 
  誰も気がつかないくらい上手に変えていらっしゃいますけど、以前は70くらいの中硬度水でしたがそれを去年から硬度30くらいの軟水にした。それを黙っていて言ってません。法令がありませんから言う必要は無いんですけど、企業倫理としてはどうかなと、ぽくとしては思うんですありますが、まあ彼等に言わせれば、100以下は全部軟水だから、その中で変えるのは発表の必要ないと言うかも知れませんが・・広島はそうはいかん。 30と80じゃあえらい違いがある。酒を造ったらいっぱつで判る。 30じゃあできん。 80でええ酒が出来る。そういうレベルの水質の差でありますので、これは企業さんとしては説明書を出すべきじゃあないかと個人的には思っています。まああんまり攻撃しては・・それは個人的意見でありまして、法律的には全く違反はしておられない訳であります。最近は軟水がだんだん流行るようになって来ているという現状があります。

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 さきほど言いましたように、広島の水は軟水だから汚れにくい。こないだも県知事さんが、広島の水はどうですか?とお聞きになったので、広島の水は日本一ですよ・・カープは日本一になりませんけど‥と言ったら、エーと言われたり、ガクッとこられたり・・。

 私は「利き水」をやりまして、自称「利き水のプロ」を自認していますが、私が飲んでも広島の名水は屋久島の縄文水・白上山地の水と比べても識別できません。広島の名水は日本一で、なおかつ汚れにくい・・と、こういうふうに認識しておくべきだと思います。

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 ほかにも知事さんに言ったんですけど、太田川の水質と直接の関係はありませんけど、微量にラドンを含んだ温泉・・湯来温泉や湯の山温泉の場合、軟水でラドンがあるから飲んでも美味しい。飲んでもよい温泉というのは各地にありますが、何処も美味しくはないですよ。渋いとか、苦いとか。美味しくて健康にも良い温泉なんて他にはありません。だから広島のラドン温泉をもっとアピールせにゃあいけん。ということを申しあげた。

 よく「子宝湯」とかいう温泉が広島の各地にありますが・・或は眼病に効く冷泉だとか、目薬になる冷泉とか言い伝えのある湧水がありますが、それはみなラドン泉です。ラドン泉は弱いながら制禁作用があるからです。

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 今、野本先生という泌尿科のお医者さんが、アトピーにラドン泉が有効だというデータをとって研究されています。アトピーの人は洗剤とか消毒剤をつけてよく洗うんです。そうすると三層からある皮膚の表面の層まで取ってしまう。そうすると中の層が出てきて、これが非常に炎症を起し易い。よく洗うとまた炎症を起す。掻いたりするとまた炎症を起す。これを繰り返すんです。だからいつまでも良くならない。だから、「洗わないで。こういうラドン温泉でさっと洗い流すだけにしなさい」と。そうするとこれ、軟水ですから汚れを取り出します。洗剤を使わずに、それで而も除菌効果がありますから、一番上の層がちょっと残って中を保護すると同時に、菌はいなくなる。だから自然の治癒力で徐々に良くなっていって、痒くもないから掻かない。それで循環で益々良くなって行くという症例を説明して下さいました。そういう写真も見せて頂きました。これは学会で発表されるそうです。

      OCOCOCOCOCOCOC

 そういう医学的なこととは別に、除菌効果とか滅菌効果とかいうのも学生さんと一緒に研究しております。軟水でラドン泉は菌の増殖が抑えられるが、酵母はあまり抑えないので、これでドブロクを造ったら美味い。県北の方へ行きますとけっこう秘密で造っとってですよ‥内緒で‥ほいで、言い伝えで、あすこの水で、あの爺ちゃんが造っとるのが最高よ・・とか、あこの水で造ったら駄目じゃ・・、とかね。ドブロク言うのは天然の発酵ですから、もともと菌の多いマンガンの多い汚れた水で造ると酸っぱくなったり、茶色くなったりする。雑菌の増殖を抑え、乳酸菌が発酵せず酸っぱくならないのがラドン泉で吟醸酒造りに好い。それを今、化学的に解明しよるんですが、秘密でドブロクを造ってるのは公開できませんので、ここは内緒でおいといて、そこはじわじわと研究しようと思っています。

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 これは昔の高瀬堰ですけど、褐藻と藍藻とかがべったり生えている。これはかなり生活排水が流れて来ている証拠になります。かっての可部がそうでした。根の谷川に行きますともうよれよれです。昭和60年から平成5年くらいまでは可部へ行ったら臭いが漂いよる。下水道がなかったから、全部ドブヘ流していた。ドブの中はヘドロがいっぱいでした。可部の町を歩くと臭いがしよりました。相当汚い物を流してるんだなと思いよった。だから下流がヘドロ化して、泳げなかった。おそらく、その時にヘドロが全部海へ押し込まれて、今逆襲に遭ってるんじゃないか。太田川を通して広島湾へ押し込んだのが、今、満潮とともに逆襲をしよる。今、海の干潟もなくなり、浄化することが出来なくなった。だから我々が出したヘドロはその侭海に堆積してるんじゃないか。それが逆襲して来てる・・。

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 この写真は久地の辺りで、水はきれいなんですよ。だけど、加計辺りから来る窒素・燐じゃないかと思うんですが、ちょっと停滞した所にはヘドロがある。だからきれいになっているとはいえどまだまだ油断は許されない。広島は合併浄化槽が少ないんです。全国的にも低いです。下水道のない所は殆ど単独浄化槽でいってますので、しかも定期検査が義務づけられとるがしないんです。しなくても罰則がないですから。汚い、不適格といわれても、いやあ修理したら金がかかるからとかですね・・いよいよポンプが止って、水が流れないようになったら修理されますけど・・空気を送り込む装置とか中の層の崩れとかはですね、住民の方はあんまり気にされんというのが現実です。幸いに可部で下水道が整備されて、水質が回復状態にありますが、もっと上の方に団地が移りますとまた悪くなるかも・・つまり下水道の無い所で合併浄化槽を設備しても、水に対する意識の低さでは再び悪くなる可能性が十分にあるとうことで楽観視はできない。

 緑色の藻がべっとり生えるというのは、ミネラルになる水にちょっと汚染が入りますと、即、緑の藻がぱっと生える。原因は生活排水です。これはもう皆さんご存知だと思います。トイレの水よりも台所からの方が汚いです。トイレの水は1日1人あたり13g318 (COD)で・・これは古いデータで今はもっと上かっていると思います。肉とかよく食べますからね、若い人・・だからもう15〜20ぐらいいくんじゃないですか?若い人がいる家庭では。我々年寄りはもう10を切りますね、肉とか滅多に食ったこと無いですから。ところが台所とか風呂からは27です。トイレの2倍くらい汚いわけです。だから広島独特の単独浄化槽いうものはものすごく川を汚すわけです‥。

     φ φ φ φ φ

 しかも合併浄化槽にしても、そういうええかげんな浄化槽ですから、殆どがたれ流してるんですね。5割〜もっと6割・7割はたれ流しがあると見ていいでしょう。だって受診率が5割で、修理したというのがあまり無いんです。だからこれは県知事さんに言わなきゃいけん。やはり、県条令とかで浄化槽を受診率をまず義務づけること。それで若し悪いと指摘された場合は、一定期間内に滴正な水質にするように修理しなさい・・そういうのが次の課題じゃないかと思ってます。

 私も浄化槽委員会の委員なんで、もうそれで事実はよく知ってるんですが、法令はあるんですが罰則がないわけです。ちょうど、車の法定6ヵ月点検がありますね。あれと同じような・・ぼくもあんまり法定6ヵ月点検見とらんので、えらそうなこと言えないですけど・・とにかく浄化槽の場合はほんと深刻です。

 浄化槽もメーカーによって性能にすごい差があります。一応設置しても、維持管理しないともう3年で実質浄化能カゼロというのがあるんです。そこらも本県の課題です。それが上流域に多いだけに

▽ 録音の関係でここ迄で終わらせて戴くことをお詫び致します。

 
 
 
 
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