生態系・里山・里海


太田川再生プロジェクト委員会

2年目は3つの部会で審議つづく

 2007年11月 第79号

 広島市の太田川再生プロジェクト検討委員会は、去年に引き続き2年囗の審議を8月にスタート。去年の審議で出された課題を整理してより科学的な検証や議論を行い、具体的な提案を生み出すために専門3つの部会(森林・ふれあい・環境)を設置しました。本誌は、10月末〜11月前半に行われたそれぞれの第一回部会に傍聴人として出席し、進行状況を取材してきました。(岩本・篠原)


 
森林部会=10月24日(部会長=中根周歩広島大学教授)

 先ず、広島市の森林担当三原宏課長が、今年から始まる「広島の森づくり県民税」を利用した広島市の森づくりを説明。県全体で8億1千万円(初年度5億9千万円)の内、13%1億30万円(今年度7300万円)の配分を受け今後5年間、127haの人工林を30%以上間伐する計画を説明。その後中根委員長は市や林野庁の間伐率は20〜30%以上としているが、1ha〜3000本植えて40〜50年間に40%間伐を2回行い、最終的に600本に強間伐することが理想で、その結果人工林は保水力のある複層林になると説明。今後この提案を柱に議論を進めることになりました。


 
ふれあい部会=11月5日(部会長=佐々木健国際学院大学教授)

 国土交通省太田川河川事務所前所長の水野雅光さんが転勤により新たに所長に就任した安部徹さんが委員として出席。

今回の主な議題は
@源流域から海までを一体とした体験プログラムの整備
A流域にまつわる情報ネットワークの整備
B「泳げる川」実現の具体的方策、の3テーマについて討議。

@については主に、流域の生物観察会など、テーマ別プログラムを設置する案や、流域で様々なイベントを企画し、年間を通した日程を作るべきとの案が出されました。

Aでは、現在ばらばらになっている流域全体の情報を統括し、検索を容易にする拠点を構築すべきとの案がありました。

Bについては昨年、広島市下水道局が行なった水質調査によって、夏季でも干潮時刻前後では「泳げる」水質が確保される事が分かり、議論は大いに盛り上がりました。まずは、汚い太田川のイメージを今後、払拭していく事が大事との意見で一致し、今後はその方策を探る議論が行われます。


 環境部会=11月6日(部会長=井関和夫広島大学教授)

 序盤は水量・ダム・水力発電に関する議論が展開。
太田川の水量・水質・水温は中国電力の取水によって大きく影響を受けており、治・利水の観点から、ダムや発電所は人間の生活を預かる重要な施設ではあるが、環境との兼ね合いを今後、科学的に検証する必要があり、中国電力に対する発電取水量などの詳細なデータ提供を求める声が上がり、中国電力担当者は「今ある短期間のデータは提供できる」と答弁。
その後、太田川の流量とカキーアユの関係についての議論に進みました。
特にカキについては昭和43年以降、海田湾での採苗・養殖が困難になり、以降、一年を通した広島湾奥全体での養殖は難しく、現在は夏季に江田島冲などの島嶼部に筏を移動するなど、技術的な対応でこれまでの生産量を維持している実態を広島市漁協委員が説明。このような海域の環境変化の原因は、太田川の流量と絡め、経時的に検証すべきとの意見が出されました。また、力キの成育に必要な栄養塩についても、リン・窒素に加え、珪素のデータが必要との指摘もありました。今後は、様々なデータを基に検証し、太田川流域から広島湾にかけてよりよい環境にするための具体的な議論が展開されます。


 第一回の部会でもあり、各部会で提起された項目については今後、更に深めてゆく必要があり、今後に課題を残して終了しましたが、終始、委員の間では活発な意見交換おこなわれ、時折笑い声も沸きあがる和やかな雰囲気の部会でした。第二回は11月27日午前=森林部会、12月3日午後=ふれあい部会、同月6日午後=環境部会の開催予定です。傍聴可能ですので是非ご参加を! 開催日時は変更もあるので、広島市経済局農林水産部水産係にご確認ください。
 
 
当ホームページ上の情報・画像等を許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます。