●細見谷・大規模林道

 「細見谷を守る会」発足
〜渓畔林区間以外で工事は開始〜
2006年12月 第68号


 「細見谷林道の是非を問う住民投票」が廿日市市議会で否決された8月18日、東京で開かれた林野庁の期中評価委員会では、渓畔林部分の再度の調査と地元専門家の意見聴取を条件に林道計画の必要を認める結果を出しました。その後、10月3日緑資源機構は工事を進めつつ、調査をする「環境保全フォローアップ調査計画」を発表。11月21日には、二軒小屋側と吉和側から工事に着手しています。その中で幹線道路建設に反対している「細見谷保全ネットワーク」では、より広範な運動をすすめる団体として「細見谷を守る会」を発足しました。会長の金井塚務さんにお話を聞きました。
  
(編集部)


「緑資源機構が工事を始めた訳ですが、それをどう受け止めますか?」

 
まさに両側から着工しましたが、これから雪が降る時期なのに「もう手をつけた」という心理的にアキラメ感を与えるということでしょう。確かにビラ配りをしていると「もうこれで済んだんじゃない?」という反応もありますが、「まだやることは沢山ありますよ」と話すと「頑張って下さい」と励まされます。現地では工事現場から先へは「通行止め」になっていますが、検討委員会では通行止めにはしないということだったし、私たちは調査のために入るのだと現場の係と話し合った結果、「調査には全面的に協力します」ということで入山OKになりました。期中評価委員会でも渓畔林については更なる調査の必要を云っていますし、私たちも引き続き調査をして細見谷の重要性を明らかにし「大規模林道は不用」の声を広げていきたいと思っています。
 
「林野庁の期中評価委員会では、渓畔林部分と新設部分については『地元学識経験者の意見を聴取しつつ、引き続き調査を実施した後、改めて期中評価委員会に諮る』という判断を出しましたが、これをどのように受け止めていますか?」
 
 委員会の一部の委員が渓畔林保全の重要性と様々な意見を斟酌して、問題ありとしたことは一定の評価が出来るでしょう。一方では林野庁主催で委員の選定も全て林野庁で地元NGOには議論に参画させず、意見聴取だけに止めた中での判断ですから、最大限こちらの意見に配慮したとしても「全体としては推進する」という答申ですから安心できない。これからの活動が益々重要になると考えています。

 つまり答申には二面性がある。一定の評価は出来る一方、ある意味では計画実施の指南書と見ることもできる。「指摘されている所を弁解できるようにしなさい。まだ5〜6年時間的余裕もあるからその間に計画を整えて反論の出ないようにしなさい」といっているようにも聞こえます。

 期中評価委員会自体、林野庁が準備した資料に沿っての評価ですから必ずプラスになるようになるというものです。例えば大規模林道が出来ることによる「費用対効果」の交通の便益の問題ですが、全くおかしなことになっている。今の186号線から191号線を通るその40%が計画路線に流れ込む、それが便益だというわけですが、それがなぜ便益なのか私には理解できません。現在の道路でも何も差し障りなくスムーズに流れているのに、新たに大規模林道を作ってそちらに流れるから便益だというのは?…おかしいでしょ。それなら既存の道路の便益はどうなるの?ということです。

 森林からの便益にしても、今は間伐材などを伐りだしても利用できる状態ではないのに、一定面積があるからこの数式を当てはめれば、便益があるという、そういうものですから建前上そうなるということに過ぎない。こういう問題がありながら期中評価委員会は全体としては計画推進の判断をしているわけですから、全く安心はできません。
 
「期中評価委員会の評価を受けて緑資源機構はフォローアップ調査計画を発表し、工事を進めつつ調査を実施していますが、これについては?」
 
 期中評価委員会ではフォローアップ調査ではダメだから、更に地元有識者の意見を聞いて調査を進めるようにといっていますが、緑資源機構はフォローアップ調査を検討する地元を含む学識経験者のアドバイザーグループを作って、自ら行う調査の検討、評価をする体制をとっています。これには水生昆虫や哺乳類などの専門家はいません。本来は、私たち細見谷を知っているNGOの専門家を入れて調査をすべきですが、今は「調査をした」というだけの言わばアリバイ調査です。渓畔林の生物多様性の保全の重要性の意味が認識されていない中で「調査」だけが進んで、こうすれば環境への影響は軽微であるという結論が出ることは見え見えです。
 
「今回発足した『細見谷を守る会』については?
 
 これまで細見谷保全ネットワーク(広島フィールドミュージアム、森と水と土を考える会、廿日市自然を守る会、科学者グループ、以上4団体)が活動の中心になってきましたが、これとは別に、これまで細見谷を守る署名をして下さった多くの方や、廿日市の住民投票直接請求に加わった8000人の方々に、呼びかけて「細見谷を守る」運動を広げていこうと新しく組織を立ち上げました(会長:金井塚務、副会長2名:村上滋、原戸祥次郎)。会員になるには名前を登録していただき、余裕のある時はカンパ、ビラまきなど労働提供していただくということです。会としては調査を続けて細見谷の重要性を明らかにしながら皆が正しい判断を下せるような情報を提供して、細見谷を守る議論を展開していきます。これからはこの組織を中心にあらゆるチャンネルを使って大規模林道不用の声を広げたいと思っています。
 
「有難うございました。頑張ってください」
 
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