●細見谷・大規模林道

 細見谷林道特別保護区指定の要望
4万3000の署名、県に提出
2006年5月 第61号

 
 本誌会員の皆様にもご協力いただいた、細見谷渓畔林を西中国山地国定公園の特別保護区に指定を求める科学者グループの呼びかけによる署名運動は、4万2874筆集まり、要望書と共に5月9日、県に提出されました。

 この日、科学者グループの代表、金井塚務さん、署名提出の事務局の原戸祥次郎さん、協力グループの高木恭代さんら10人が県庁を訪れ、広島県環境保全室の中重和郎室長に署名と要望書を提出、細見谷渓畔林一帯を西中国山地国定公園の特別保護区に指定する事を要望しました。

 本誌編集部は翌10日、県の環境保全室自然公園管理担当を訪ね、県としてこの要望にどう応えるのか取材しました。(篠原一郎)
 


「特別保護区格上げはない」

 自然公園法による国立、国定公園では、景観保護の立場から4段階の規制計画が定められている。
西中国山地国定公園(1969年指定)では、公園の中で中核となる景観地として原生状態を維持する、特別保護地区には、臥龍山、三段峡、匹見峡、寂地峡、冠山が国定公園指定当初から入れられている。
細見谷林道一帯は、現在第2種特別地域に指定されており、今回、これを特別保護区に格上げするよう要望したのだが、応対した県自然環境保全室の中重和郎室長は「細見谷は現在、第2種特別地域として環境保全を図ってきた。特別保護地区に格上げするつもりはないが、今回の要望については地元の廿日市市や国の営林署等の意見を聞いて判断する」と回答した。

 翌日の取材は、同室の自然公園管理グループの檀上陸二専任主査と中川珠恵主任が対応。「県の姿勢は昨日の中重室長の回答通りだが、県としては、細見谷林道計画について平成2年に自然環境審議会の公園部会の意見を緑資源機構に提出しており、その後の林道計画の変更で、道路幅員幅の縮小などその主要な意見が入れられているので、問題はないと考えている」という話。

 そして現在、緑資源機構からは4月下旬に廿日市市吉和西−二軒小屋間の幹線林道建設については、二軒小屋から500mの林道建設の申請が提出されており、残りの部分の申請はいつ提出されるか分からないが、提出されていから第2種特別地域としての許可を出すかどうかを検討する」ということである。
 
特別地域15項目の許可必要行為は…

 保護規制計画では特別地域内で行う一定の行為について、国定公園管理者である県知事の許可を得る必要がある。
 特別保護地区では18項目、第1種〜3種の特別地域は15項目の行為が定められている。(自然公園法13条、14条)道路建設に関連すると思われるものを挙げると、@工作物の新築、改築、増築 A木竹の伐採 B鉱物の採掘、土石の採取 I環境大臣が指定する高山植物などの採取、損傷 J同じく動物や卵の捕獲殺傷が挙げられている。

 そして許可審査のポイントとしては、特別保護地区においてはこれらの行為は原則許可しないが、他の特別地域内では、公園の風景の維持に支障を及ぼさないものであること、位置、規模、形態、色彩等と自然環境を含む自然景観との関係を判断して、許可するという、風景、景観への影響を主体としたものだけに極めてあいまいな規定になっている。
更に「風景に影響を及ぼす大規模な行為については公共性が高い(土地収用法の対象等)場合に限り十分な影響軽減措置を講じた上で許可」としているが、一方「地域の自然的、社会的、経済的状況から判断して必要と環境大臣が特別に認めて指定した地域において許可基準を強化、または緩和する」という項目もある。
 

生物多様性確保をどう考える?

 緑資源機構から申請が提出された時点で、県としてはどのような判断を下すのか?規定に内容について調査をするのかどうか?例えば、環境大臣が指定する高山植物や動物の採取損傷が挙げられているが、その所在を確認し、道路建設によって採取損傷する可能性の有無を検証するのかどうか?聞いてみたが、「そこまでの詳細な調査はしないが、一応調査はする」ということである。この辺のことについては、緑資源機構が工事をしながらフォローアップ調査をする事になっているので…自主的な影響軽減措置が講じられるであろう。ということで、県の姿勢としては極めてあいまいな回答しか得られなかった。

 一つは、自然公園法が風景、景観への影響を中心に構成されていることに原因があるとも思われるが、平成15年の法律改定では第3条に国及び県の責務として「自然公園における生物多様性の確保を旨とした風景保護に関する施策を講じる事」と、第13条の規定の追加として生物多様性の確保が法律上明確に位置づけられた。県は「そのことも十分踏まえて判断する」という事だが、今後とも、本誌はこの問題についての県の姿勢、判断を注視、取材を続行していきたい。
 
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