箱庭の海からの便り 川上 清
2007年12月 第80号

 今年の広島力キは…

 ラニーニャの恋の恨みは10月に入っても一向に治まる気配がない。平年に比べ高水温、高塩分濃度が依然続き、カキの身の入りが極端に悪く、7月から始まった産卵は9月に入っても猶お盛んで著しく体力を消耗、全海域で5〜6割もの斃死が起こった。これは平成10年ヘテロカプサの大斃死(損失=38億3300万円)に次ぐもので、生産量の低落は必至、養殖業者の顔色は冴えない。

 10月1日から全国屈指の大スーパーの店頭に生カキが並ぶ。何処で生産されたものか不明だが、処理パック詰めは県東部の大手仲買業者。価格は130g=398円と割高。割高は許せるとしても、何とまともに身の入ったものは1個もなく所詮ハナタレカキばかりで、それを買って帰りフライなどに調理した人は、二度とカキなど買うものかと大腹を立てたに違いない。出荷した養殖業者も養殖業者だが、その場限りの儲けに走った仲買やスーパーの、消費者を虚仮にした罪は許すことが出来ない。

 消費者の反応は厳しい。昨年のノ囗ウイルス、本年のラニーニャと、不可抗力による消費者のカキ離れは大きいが、早々に敷かれた週2回の出荷休止(通常は週1回、日曜のみ)に象徴される売れ行き不振は、カキに携わるそれぞれの人間の責任によるものと断じたい。

 12月にはいると海水温もようやく平年並みに戻り、カキの実入りも回復している。広島の冬は何といってもカキ料理。カキの美味さは、天保3年(1832年)富山県長光寺住職、東林さんの「詩僧、東林の広島紀行、泛(はん)登無隠(とうむいん)」の中に、大阪のカキ船で食べた8品のカキ料理に凝縮されている。その中の4品を再現、カキに関する知識を聞きながらカキの美味さを味わう、広島市郷土史料館のイベントにご参加を!

「江戸時代のカキ船料理の再現」〜講師 川上 清〜
 広島市郷土史料館 2008.1.25 
 
 
 
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