NPO法人になって初
「環・太田川」2008年度定例総会開催

記念講演は水産大学校の浜野龍夫さん
2008年6月 第86号


 NPO法人になって初めての今年度定例総会が6月8日、NPOセンター集会室(幟町集会所)で正会員を中心に20名が参加して開かれました。記念講演では独立法人水産大学校の浜野龍夫准教授が1時間半にわたって講演。その要旨を紹介します。

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 浜野さんは徳島生まれ。4代目の定置網の漁師の後取りで、今も時々徳島に帰って定置網の漁をしていると自己紹介。環境汚染をしない竹の漁業利用などの実践を通した研究の方向などについて語りました。

 その中で最近の「里海」の取り組みについて「里山」との違いを指摘されました。
里山の定義は
@集落に接した山に人間の影響を受けた生態系が存在する
A村落と自然が調和したユートピア的な空間ではなく、管理制度が無ければオーバーユースになる
B景観を見直し自然とのふれあいの場として注目される、という3つの条件。
経済的には成立していないがBが大切で、人が見ていて箱庭的にきれいだ!という心地よい空間があり、それが里山を守る動機をつくる。

 ところが里海は漁業権がある中で人は見ていないし、経済的に成り立つ技術が入り込まない限り「里海」というのはできっこない。それは漁師が一番分かつていることだ、と強調されました。

 現場を踏まえた明快な論理に納得し、以前「環・太田川」の前代表、原哲之氏が同様なことを言っていたのを想起しました。

 記念講演の主題は「川の生き物にやさしい環境づくり」〜森・川・海をつないで〜。浜野さんは30年前の若い時代「川エビ」の研究をされています。滝の流れる渓流にいる川エビが塩分濃度を加えて初めて育つことを発見。その後の研究でアユと同じように、エビが川で産卵孵化した幼生が海に下り、稚エビに育って、夏の夜中に川に上かってくることを突き止めました。

 その調査を通じて様々な魚類、ウナギの稚魚などが川の堰のコンクリートの壁などを上って川を遡上していることを確認。ウナギは粘液を出して尺取虫のように壁を登るが、農業用の堰などで登っては落ち、登っては落ちることを繰り返して結局登れない状況があると説明されました。

 上流ではウナギは相当減っているといいます。昔はウナギ、工ビ、カニが水田のある水路に沢山いたが、それは水路が川の本流とつながっていたからで、それが水路の整備で本流とは格差ができてつながらなくなってしまったと解説。魚道もいろいろ設置されているが、実際に魚やエビが登れないものも多いと話されました。

 そこで漁協の人々や、県の土木の専門の人々と相談して、あまりお金をかけず改良を加えることを考えた、と述べて、山口県各地で行われた改良の具体的な例を紹介されました。
 分かりやすい実例を写真で紹介します。浜野さんの講演は具体的で分かりやすく、是非広島県の漁協関係者や河川土木専門の方々も山口県で行われた様々な川の改良工事を紹介した「水辺のこわざ」という写真集を読んでいただきたいと思います。
 

 
定例総会議事審議
 新代表に幸田光温さん
 副代表は藤井直紀さん

 記念講演に続いて開かれた2008年度定例総会では、議長に藤井直紀理事を選出。資格審査委員として山根和則理事が、正会員40名中、委任状提出者が10名、出席正会員13名、合計23名で総会が成立したことを報告。第1議案、2007年度の事業報告、第2議案、2007年度収支決算報告、同監査報告について、篠原一郎事務局長がそれぞれ報告(同封の別刷り印刷参照)承認されました。

 続いて第3議案、第4議案の2008年度の事業計画と予算。第5議案、役員改選について、篠原事務局長より、提案。事業計画と予算については、全員一致承認され、2008年度役員については、川上清代表から、家庭の事情で代表辞任の申し出でがあり、定款に基づいて理事会で審議の結果、新代表に幸田光温さん、副代表に藤井直紀さんを選出。総会で承認を求めることを提議。全員一致で承認されました。

 2008年度の事業計画は2回の太田川エコツアーの実施が中心になります。

    NPO法人「環・太田川」2 0 0 8年度事業計画
    太田川体感ECOツアー(環・太田川主催)
 7月下句と9月中旬の2回実施  参加者各20名
 企画実施:吉和自然文化教育センター(所長 竹田隆一氏)

ねらい
 @実体験を通じて、自然環境保全についての自分固有の認識を形成する
 A川の自然についての知識や研究成果を学ぶことで、自分白身、日常の暮らしの中で、責任のある環境保全活動としてどのように主体的な活動ができるのかを考える。

総テーマ「自然への感謝と畏敬」
●第1回(7月実施)
 テーマ:森林性体系の持つ公益的機能(水源涵養機能)〜水の生誕地を訪ねて〜
 出発:午前9時 帰着:午後5時半
 広島→高速→吉和→潮原ルート冠山登山道→源流ポイント→下山→高速→広島
 〈学習・検証項目〉
 人工林と自然林・人工林の荒廃と林業・森林土壌の化学的物理的形質・水源涵養機能の本質・樹木の有用な遺伝子・2次自然林の不自然・漢字の中に潜む自然・生まれたての水を味わう・森林の動物・森林浴の秘密 など

●第2回(9月実施)
 テーマ:自然をコントロールすることの功罪
 出発:午前9時 帰着:午後5時半
 広島→高速→吉和→立岩ダム→戸河内→(太田川沿い移動)各ポイントでの検証・解説→高瀬堰→帰着

 〈学習・検証項目〉
 ○時には闘わねばならぬ自然がある 災害碑に蜆る自然との共生・洪水と河川生態
 ○足の裏で、鼻の穴で感じる太田川 藻類、バクテリア類などで見る河川の水質浄化機能→研究は上、中、下流3ヵ所で実施予定・素足で河床の小石の上を歩く感触差、及び砂地の好気性、嫌気性バクテリアの活動を匂いで比較する体感的検証・源流河川水と下流河川水の透明度比較実験
 ○命を水の色で描く写生大会 鳥瞰的に集落を見つめることができる場所で、水を体内に含む全てのものを自身が感じる「水の色」によって視覚をこえた風景描写を行う。
会費:1人4,000円程度(バス代・受講料、弁当各自持参)
講演会年度後半に講演会を実施する。テーマ、講師は後日検討。

 
 
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