呉・江田島断水と
ボランティアの経験より
2006年9月 第65号
浦田伸一


 当初「県営の送水トンネル崩壊」のニュースを耳にしたとき3週間連続で3万世帯以上が完全断水の可能性があるような大事故であることは夢にも思わなかった。私は、まず最初に我が身のことを考えた。なにしろ崩壊場所はよりにもよって私の住む「矢野」である。「水が出るうちに風呂の水を貯めておこうや」とハモるように夫婦で声を出した。

 ご存知の方はご存じのとおり、太田川の水は広島市のみならず、呉市、竹原市、東広島市、江田島市、海田町、熊野町、大崎上島町、府中町、坂町に広域給水されている。その動脈たる「県営送水トンネル」が崩落したというのだ。崩落場所は位置的には我が家より上流にあるため、最初は夫婦夫々本当にビビった。(よくよく考えると、自分のホームページにまとめてあるとおり、我が家は「瀬野川、矢野、安戸受水系」という系統で、広島市内の浄水場から供給を受けているので、直接影響はなかったのだ)
 
「悪徳業者」と見られる?
 
 実際に「一日完全断水」という過酷な状況に陥ったのは呉市と江田島の一部。

 そのニュースを聞いた時、「ああ、私の所はやはり大丈夫なんだ」と思った。と同時に今思ったことを大いに恥じた。「自分の所が大丈夫ならそれでよいのか?自分はそんな人間か?」

 そして友人のホームページのコメントを見てさらに恥じた。彼の奥さんのご実家が呉市内山間部にあり、なんと「完全断水」の地域にあるという。彼はさっそく広島市内の自宅の水をタンクに詰め込み広島市の水を呉市内まで自分の車で運んだのだ。そして、その道々お年寄りが18リットル缶を一つだけもってよろよろと台車を押して歩く姿を何度も見かけたという。彼は、これはかなりの一大事だとコメントされていた。

 そう、これは太田川に恩恵を受けている全ての人にとっての一大事なのだ。(なにしろ最初はこれが3週間も続くとだれもが思っていたのだ)

 8月29日午後、私は何のアテもなく、某給水所に向かい、「重たい水」を車の通れない坂道を通って何往復もして自宅に運ばれている方に声をかけた。しかし、やはり地元民ではない私は「人の不幸につけこんだ、どこぞの悪徳業者」と見られたようである。「重たいでしょうから、一緒に運びましょう」とお声かけしても大方の方に断られた。その日運ばせていただいたのはたったの2組だけだった。(ちなみに私の服装は上下作業服)

 「これは、『私は完全なるボランティアですよ』よいう印と大きなネットワークが必要であるなぁ」とシミジミ実感していると、給水所の方(他市水道局から応援給水に来ていた方)から「呉市の水道局はパニック状態じゃろうけど、呉市でボランティアの受付をやっとんじゃないかね?きいてみんさいや」とのアドバイスを受け、早速呉市役所に行ってみた。・・・と丁度ロビーで出くわした呉市職員の方が「実は明日ボランティアセンターが立ち上がるんですよ」と教えてくれた。

 これもなにかの御縁だと感じ、早速翌日立ち上がったボランティアセンターに登録し、早速高齢世帯の地図作製の仕事をお手伝いさせていただいた。(翌日日中に動ける人がペットボトル飲料を配って歩くためだそうだ)

 呉は土砂災害が多く、このボランティアセンターが結成されたのは今回が初めてではないらしい、素晴らしく迅速に、且つ効率的に陣頭指揮されていた。もし、この断水が広島市内だったら、こんなに早い段階での統制のとれたボランティアセンターの立ち上げはなかったのではないだろうか・・・とも感じた。

 さて、もう皆さんご存じのとおり、呉市も江田島市も断水は県営の送水トンネルの復旧を待たずして一応の終結をみた。

 今までの流れをもう一度おさらいしてみたい(下表)。
 

素晴らしい援助送水
 

 呉市と江田島市、同じ送水管から水を得ているが、断水解除時期は違う。呉は黒瀬川・二河川という独自水源を持っているためだ。一方島嶼部の江田島市は普段、殆どが太田川のみに水の恩恵を受けている。島なのだから大規模な水源がないのはいたしかたない。(個別の地下水はかなり活躍したそうだ)

 それにしても、呉市の江田島市に対する援助送水は素晴らしいと思う。市民の節水によって搾り出した水だという。太田川の水が島嶼部を潤していることに私は「太田川ってやはり凄い」と誇りに思っている。大崎上島などは、竹原から別ルートで断水を免れた等、セーフティーネットが効果を発揮した。

 江田島市のこれからのセーフティーネットを考える時、やはり地域連携と地下水の見直しを視野に入れるべきだと感じた。

 さて、広島市がもしこのような事態に陥ったら、今回のような地域連携は取れたのだろうか?住民同士の連携が希薄になっているだけに心配である。

 
 
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