●瀬音
			川に来るのが私らの日課です	２００１年６月　若鮎号
			広島市の太田川放水路の河川敷では、昼下がりに近くに住む方々が思い思いにのんびりとひと時を過ごされます。今回はちょっとお邪魔して、お話をうかがいました。
			私はこの近所におるんですが、こうやって天気のええ日の夕方は必ず散歩にきます。潮がひいとるときに貝堀りをすることもあります。川が汚れとるけえやめえ言う人もおってですが、おもしろいですけえやめられません。 　こうやって毎日同じ時間に川を見るとおもしろいですよ。お天道様と同じで、人間が何をしようが必ずしおが満ちたり引いたりして、その時間がちょっとずつずれて、おおきゅうひいたりあんまりひかんかったり、不思議よねえ。こればっかりは人間にはどうにもならんけえね。 　いま水上バスの話が出とるけど、それで私らの生活を天気の変化に合わせたり、潮の満ち干きにあわせたりするようになるんじゃったらええじゃろうね。嵐の日は出勤せんとか、勤務時間を汐の満ち干きにあわせるとか。のんびりするじゃろうねえ。（散歩に来られていた中年の女性）
			僕は放水路沿いにあるマンションに住んでます。それまでは市内のど真ん中におったんですが、川沿いに住んで、川いうのはありがたいのー、思います。何がありがたい言うて、夏が涼しいんですよ。前の家じゃあ一日中クーラーをかけっぱなしにしとったのが、気持ちのええ風が吹いてくるんで、いらんのです。 　それに不思議なことに、川筋を通っとる風は、排気ガス臭うないんですよ。２号線のバイパスなんか最悪じゃけえね。広島市内の交通事情も悪いし、これからいろいろ道ができてもっと車が増えたらやれんけど、今まだなんとかなっとるのは川のおかげじゃね。 　デルタの内側に車が入らんようにして、そのかわり水路を張り巡らして、ベニスみたいにしたらどうスかね。その代わり水をきれいにせにゃあいけんじゃろうけど。（犬を散歩させていた若者）
			わしは己斐の本町におります。己斐におってびっくりしたのは、昔は山じゃった上の方にどんどん団地ができたんですが、それから己斐に八幡川（はちまんがわ）いうのがあるんですが、あれがちょっと雨が降っただけで洪水のように溢れるようになったんですよ。それで今は少し上がった上町のほうに貯水池があって、雨で水が多いうなったときは、そこからトンネルを通して別のところに放水するようになっとりますが、柵とコンクリートで固めてあって、ゴミがたまって、あんまり気持ちのええもんじゃないですよ。 　それはそれとして、普段はこうやって毎日川へ遊びに来るんですが、どういうわけかここで人に会うと話も弾んでええんですよ。（ジョギングしておられた中年の男性）
			お話ありがとうございました。河川敷に立っていると、街の喧騒から一歩離れた気分で、久しぶりにゆっくりと日が落ちていくひとときをしっかり味わうことができました。たくさんの人が毎日河川敷に来られる訳がすこし分かったような気がしました。