「生協ひろしま」の環境問題への取り組み
〜ISO14001を中心に〜 佐々木桂一さん
2006年 1月 第57号


 地球温暖化についての取り組みの枠組みを決めた京都議定書が去年の2月に発行され、CO2の削減がいよいよ私たちの身近な問題として迫ってきました。広島県内ではどんな取り組みが展開しているのか?

 広島県民115万世帯の約30%、34万人(世帯)が組合員として加盟している「生協ひろしま」(廿日市市大野原、本部事務所)を訪問して、環境問題への取り組みの現状や成果などについて、組織企画部佐々木桂一課長にお話をうかがいました。「生協ひろしま」では、2002年3月にISO14001の認証を取得し、その規定に基づいて取り組みを続けています。(篠原一郎)
 


 まず「生協ひろしま」の環境問題への取り組みの現状からうかがいたいと思います。
 
「ISO14001」とは?

ISO=国際標準化機構(世界130ヵ国加盟)が定めた世界共通の「環境マネージメントシステム」でWTO(世界貿易機構)では加盟国の国内規格に引用するよう義務付けている。

その内容は、環境改善に向けて、

@環境方針をきめ
A計画を立て
B実施、運用して、
Cその点検をし
D見直しをする。

この5つの過程を繰り返しながら環境改善を継続して行うシステム。

認証は第三者の機関が行う。

「生協ひろしま」は、株式会社日本環境認証機構=JACOの認証を全事業所を対象に取得、毎年1回の点検を受けている。

日本では認証機関は5〜6社あり、広島県では、364の企業が認証を取得している。
 環境方針の実践〜まず教育・研修から〜

 「生協」は、食品を中心にした商品、在宅介護、リフォームなどのサービスを組合員に提供する活動を行っていますが、事業を進めるのに、2つの商品センター、17支所、店舗9店などがあります。そこでは、職員が650人、他に委託した人を合わせると約2000人が働いています。

 2002年にISO14001の認証を取得し、まず全体で6項目の環境方針を立てました。生協活動のそれぞれの現場はこの6項目のどれかに関係しているので、それぞれの関係分野で取り組みを進めていますが、全員が取り組みの全体を理解しなければ動かないので、その教育活動を段階別にやりながら進めてきました。
 まずは一般教育として、2000人全員を対象に1〜2時間の講習、次に専門教育として、200人を対象に環境配慮事項と関連の手順を1日かけて講習。3段階目として各部署2ずつの管理者、22人を対象に管理者教育を実施しています。実施の体制も、各部署に環境管理責任者をおき、内部監査委員会も設けて組織を挙げた実行体制を組んでいます。

 まず環境方針の第1の項目は、生協活動に関連した環境保全の法律(廃棄物処理法、食品リサイクル法、水質汚濁法など)や条例も多いので、その理解と順守が大事です。特に食品リサイクル法では、食品廃棄物の減量化、リサイクルによって平成18年までに20%以上減量することが義務付けられています。この面ではISO認証取得以来、環境方針の第4項目に掲げて、重点的に取り組んできました。
 
事故対策・予備商品で2700万円減額

 まず、メーカーや生産者から納入された商品を各地に仕分けする商品センターでは、組合員の注文に応じて配送するわけですが、その際に商品に事故が生じた時の対策として予備の商品を入れているのです。事故が無い場合、それは余りますが、以前はそれを廃棄していたのです。2003年からそれを半額で現場に働く人に売ることにしました。予備に入れるものですから日々の量はそんなに多くないのですが、これが1年間で約2700万円になりました。
 

生ごみ堆肥化などで1000万円

 そして次の年2004年には店舗で出る生ごみの減量に取り組みました。これは、残渣と、売れ残り商品ですが、これが、9つの店舗で合計1日80t出るのです。これは発注精度を高めることや、終店近くになると値段を下げるなどして少なくする。さらに生ごみ自体は、安佐南区にある堆肥製造業者に引き取ってもらい、安芸高田市美土里町にある堆肥センターで、下水道処理場からでる活性汚泥と混ぜて堆肥にしています。これは1キロ25円の運搬費を出して処理してもらっていますが、こうしたことで、それ以前に処理にかけていた費用を約1000万円軽減できました。
 
プラスチック・紙ごみ対策で1000万円

 そして、今年2005年は、商品センターで出る大量の包装用のプラスチックや紙袋など、これまではごみとして産廃処分していたのですが、これの資源化に取り組みました。
 まずプラスチックごみ、これは冷凍食品の発泡スチロールや、大きな段ボールに使う通称PPバンドというポリプロピレンのバンドなどですが、これは型に入れて圧縮させて業者に引き取ってもらうのです。圧縮して小さくするので輸送コストが下がる。大量でしかも汚れていないものですから、そのまま中国などに輸出されて再利用されています。
 また、これが毎月約250キロも出てきます。これを徹底的に分別して資源ごみとしてリサイクルに回すようにしました。それに約200キロも回るようになり、紙のゴミは50キロに減りました。

 この包装関係のごみの再資源化、減量化で、約1000万円の費用が軽減されました。

 以上、ISO認証取得の取り組みから、3年間で廃棄物の減量、再資源化で、約4500万円の費用が軽減されたことになります。

 ISO14001は登録料が50万円で、認証を受けるのに色々合計すると250万円ほどかかります。それに毎年の点検調査などに150万円と、環境改善には費用はかかるのですが、実践した結果を見ると事業としての効果はあがっているといえます。それにISOは実施と結果については厳しく登録取り消しのようなこともあるのですが、合理的ではあるが、排除の論理ではなく関わる人々の積極性に頼って行う事業ですから、管理を強くして取り締まるような面が強くなると職場が殺伐としてくるので、皆が楽しく取り組めるよう考えています。
 

'04年は1年間で5200万円の効果


 これを、2004年度、単年度で廃棄物と容器包装処理について費用と取り組みの効果をまとめてみると、2004年度1年間で、費用=約1億1千万円、取り組みの効果=約5270万円ということになります。(上表参照)

 費用の内訳は、廃棄物の委託処理に4350万円、魚のあらや廃食油の処理と生ごみ堆肥化に795万円、紙類やダンボール箱の再資源化に267万円、レジ袋の辞退者に値引きをした費用(20個の押印で100円引き)が859万円で合計6445万円。

 また、容器や包装などのリサイクルでは、紙パック、ペットボトル、ビニール袋、などの回収と再生業者引き取りに3675万円、容器包装リサイクル法による再商品化の委託料に954万円で、合計4630万円。両方で、約1億1千万円です。

 一方、効果の内訳は廃棄物の処理で再資源化としての売却益が約1100万円、レジ袋の減少が258万円。容器包装の方では、再利用の売却益3400万円、再商品委託料のリサイクルによる減額が514万円、全部合わせて約5270万円です。

 つまりISOの取り組みで、廃棄物、容器包装の処理、再利用で3分の1ほど費用を減額させたが、まで現状では、1億11千万円かかっているということになります。この取り組みを継続する中で更に減額させる工夫をしていくのが今後の課題です。
 

 「環境方針、第3項目の地球温暖化防止のCO2の削減については?」
 

 日本生協連の呼びかけで、私たちも「自主行動計画」を造ってCO2の削減に取り組みましたが、04年度、事業としてのCO2の排出量は約1万t(10736t)で、前年比4.1%増加しました。この取り組みは電気の節電や配送車の燃料低減などですが、これは取り組んで最初の内は効果が上がるのですが、それからはなかなか素人では進まないのです。そこで、省エネ診断の専門の会社と組んで省エネ診断事業を取り入れるわけですが、大きな工場などではエスコ事業(ESCO)といって、省エネで浮いた利益を診断した会社と二分するシステムで行われています。
 
中国電力と組んで
  省エネ計画作成


 「生協ひろしま」も現在、中国電力に、同じようなシステムで省エネ診断をお願いし、CO2削減のための基礎調査を去年の10月からスタートしたところです。これまでは実態を把握するのも1カ月ごとの電力料金の支払いから使用料を知るという大雑把なものでしたが、30分ごとにどこでどれだけ電力を使っているかを細かく調べて、例えば、同じ規模の店舗によって違いが出れば、どこが原因でそうなったか?というようなことを分析して、改めて、省エネ計画を立て直すというものです。

 また、自動車の燃料低減については、これからの課題で、現在配送車が450台走っていますが、車種や燃料の選定を考えていかねばならないと思っています。

 それから、組合員さんの牛乳パックやトレイの回収事業、買い物袋の利用促進。これは1990年から取り組んでいますが、この間接的なCO2削減量は意外に大きいのです。計算すると、約4千tで、生協事業所の総排出量が約1万tですから、4割に相当するものです。これは02年の3千tから着実に伸びてきていますので、これは継続して取り組んで行きます。
 
 家庭の省エネシステム構築

 これは、環境問題に取り組むNPOと連携したり、「脱温暖化ひろしまセンター」とのかかわりとかですが、いま、生協ひろしまは「広島市の温暖化対策地域協議会」(03年10月設置)の家庭・消費者ワーキンググループの事務局を引き受けています。これは「地球温暖化対策促進法」によって。市民、事業者、研究者、自治体の構成で作られるものですが、これは行政が旗を振っても、なかなか進むものではありませ。ここでの具体的な仕事として「家庭の省エネ診断システム」を構築中です。

 環境改善の問題は何事も実態を科学的に把握することから始めなければなりません。しかしその実態は地域によって違うのです。寒い北海道や東北と西日本では燃料の使用量が全く違いますし、広島市の中でも家族構成、住む場所などで、エネルギーの消費は違ってきます。環境省などで、省エネの指標などを出していますが、ある時点での一過性の診断は出来ても継続していく仕組みが無い、全国一律では実情に合わない。
そこで広島だけでも地域の実態を押さえたデータをもつ必要があるので、その調査をしてきました。その中で地域の暮らしが色々見えてきました。安佐北区、南区は急速に高齢化が進んでいること、お年寄りの一人暮らしや夫婦2人、という家が多い。そして戸建てが多いのです。
 
 一方、西区、中区は子育て最中の若い家庭でマンション暮らしが多い。ですから一戸建てのほうが、家族は少なくても部屋が多いからマンションよりエネルギー消費が多くなりますし、郊外になるから自動車の利用も多くなる。というように住んでいる所や家庭によって暮らし方も違います。そういう実態に合わせた基礎データをもとに、省エネシステムを考えなければなりません。まだ構築中で、完全なものにはなっていませんが、まもなく完成させます。

 以上のように生協の事業所と組合員の日々の暮らしの両方を車の両輪として、これからも環境改善の努力を続けていきたいと思っています。

 「どうもありがとうございました。」
 
 
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