可部線廃止のその後…
「太田川清流塾」は何をやるのか?
〜小田 長 塾長に構想を聞く!〜
2006年 5月 第61号


 旧加計駅跡地に、4月完成した太田川交流館「かけはし」は、太田川上流の観光情報の発信と特産品の開発、販売、講座の開催などを目的としています。この建物は、安芸太田町商工会が事務局を置いて管理し、様々な活動の企画実施は「太田川清流塾」が担当します。
 この「太田川清流塾」塾長に、「太田川みこし連」による「かえる=蛙」の町づくりなどの活動で著名な小田長さんが就任されました。小田さんは長年、広島YMCAでスポーツの分野で活躍。4年前、安芸太田町の「川・森・文化センター」運営協議会の事務局長として、広島YMCAから出向されています。小田さんにこれからの「太田川清流塾」の活動についてお話を伺いました。(篠原一郎)
 

太田川清流塾HP
 −可部線が廃線になった後、都市との交流の拠点ということで「かけはし」が誕生し、「太田川清流塾」が活動の企画を担当されるわけですが、塾長としての構想を伺いたいのです。
 
 「やまなみ大学」を発展

 安芸太田町の長期計画の柱の一つに都市との交流事業があって「太田川清流塾」で講座をたくさん作って広島からの人々との交流を盛んにしていくということで、これまで県が中心になってやってきた「やまなみ大学」をベースにして講座を企画実施していきます。ですから正式名称は「やまなみ大学・太田川清流塾」なのですが、これまでの「やまなみ」の活動がイベント型の交流事業が多かったんですが、もっと地元に密着した専門性の高い「石垣づくり」とか「釜煎り茶」というようなプログラムの体系をつくろうと今推し進めている所です。テーマは「水と山と緑」をミックスさせた。つまり太田川が生み出した自然・文化をもう一度クローズアップして、それをより専門的に深めていくことを考えています。

 「太田川清流塾」という名前にしたのは、広島市民も「太田川市民」であるという認識で、これまでの町制区域を越えた活動にしていくということで、上流の吉和も支流の「みのち川」の湯来地区もエリアに入れて考えているのです。

 廿日市−可部の環・太田川ルートを!

 それで今、観光交流ルートとして、安芸太田地域を中心に可部、廿日市ルートという位置づけをしたらという提案しているんです。従来の可部−安芸太田町ルートと、廿日市−吉和ルートと太田川を中心に、まさに「環・太田川」ルートとして巡らせる。近道として、筒賀−湯来−五日市もあるし、坪野−湯来−五日市、布−沼田−広島ルートもある。そういう交通アクセスを整理して、その範囲にある太田川筋で体験交流の講座を考えていく。

 その太田川観光交流の核拠点に「かけはし」=清流塾を位置づけ「清流塾」に講座を主催する人がマイスターとして登録をする。講座の実施は、各地域の拠点、加計地区の「川・森・文化センター」、吉和地区の「もみの木森林公園、筒賀地区の「筒賀総合センター」と湯来、みのち地区にも地域拠点を作って、そこかまたは講座主催者の家などで行います。「講座の主催者は地元の人だけでなく広島の人にもお願いしてさまざまな企画を立てていく。この太田川流域で年間100ぐらいの講座は開いているというような方向で、土日にこのルートには10ぐらいの体験講座は常にあるという形になればと思います。そして一般の受講希望者に対してもいつ電話をかけても対応できる体制をとる。「やまなみ大学」にはこの核拠点としての受付体制がなかったのですが、今度は受講の情報、申し込みを受ける体制を整備していきます。
 
 新しい時代の観光とは?

 そして、今のような、ガソリンの高値の時代に観光は「安、近、短」つまり、安くて、近くて、短期間といニーズが強まりますが、「環・太田川」ルートはせいぜい150キロ以内で帰れる企画を考える。私は「体験プラス、ワンツウ」といっているのですが、メインの体験講座に加えてプラスの第1は「おいしい食べ物」第2は「お土産」か、あるいは「お風呂」などがあること。つまり人々の多様化するニーズにこたえる工夫がそのあたりに必要だという事です。そうすれば従来の「やまなみ大学」とは一味変わったものになるのではと思います。そしてこれらのことは行政の補助金依存ではなく、民間の力でやっていくことが大切です。

 そのためには、これまでのような講座主催者はボランティア、受講者は無料、という構想ではなく受講者も応分の負担をしていただき、講座主催者も多少の「お小遣い」になるという関係を作っていく必要があります。

 講座の内容はこれまでの「やまなみ大学」でやっている講座だけでも太田川筋では30ぐらいあります。

 安芸太田町で言えば、「草木染め」、山県石工の伝統を学ぶ「石垣作り」、浅野藩御用達の香草の「釜煎り茶」、「ガラス細工」などがあります。それ以外でも、最近では、女性会の方たちの組織「ヘルスメート」がモニターツアーで実施した精進料理などが、大変評判です。集落で会食をする時使う「椀家具」と一人膳の上に5品を盛る決まりものの椀がありますが、これに精進料理を持って食べるのですが、皆で作って食べる講座にしようということです。

 また、安芸太田町では昔からのコンニャク作りがありますが、これも講座にしたいと思っています。これは神石や湯来のコンニャクづくりより古く、ここから各地に伝わったものだそうです。ここの栽培は冬でもコンニャクイモを掘り取りしないで越冬させる方法で作りますが、いまは作る農家も少ないのですが、これを復活させ、こうしたコンニャク作りの歴史や栽培も学びながらコンニャク作りを計画します。

 夏には「鮎釣り講座」に加えて「鮎づくし料理」の講座も考えています。私がここに来た頃から考えていた棚田オーナー制度も是非実現したい。井仁の棚田では「田植え」をやっていますが、安芸太田町ではほかに沢山の棚田がありますから、「空谷」とか「千本」などで是非実現したいと思っています。こういう昔からの地域の暮らしに根ざしたものを発掘していけば、まだまだ多くの講座が開けると思います。

 
 海外の観光客も視野に!

 そしてまた、これは海外からの観光客、特に中国、韓国、台湾などアジアからの人々の観光ルートとしても考えられると思います。海の方は瀬戸内海観光ルートがありますが、山の方は太田川観光ルートとして広げていく。これからは既成の有名観光地よりも、本当の日本の姿がみたいし知りたいというニーズが強くなってきます。中国や韓国では裸の山が多くて、緑いっぱいの風景はあまりないということなので、太田川筋の緑に包まれた山と川の風景、そして人々の暮らしなどを見たりすることができれば、平和公園、宮島、岩国と共に日本の本当の姿を知るよい観光コースができるのではないかと思います。
 
 −こちらにこられて4年、2年前に「太田川みこし連」という町づくりの組織が発足した時、お話を伺いました(本誌36号 2004年4月号)。その活動で、「かえる祭」を中心にした町づくりが生まれたわけですが、この活動の今後は?
 
 町づくりシンクタンクの成果

 「太田川みこし連」は、20人程度の町民が、毎月25日に集まって町づくりについて語り合っていますが、ここから「かえるの町づくり」の構想が生まれました。去年、モリアオガエルで有名な「吉水園」の6月第一週の土日の一般公開に合わせて第1回の「かえる祭り」を開いてジャズコンサートをしたり、「かえる広場」で特産品のフェアや、「川・森文化センター」等で「太田川クラフトフェスタ」などをやったのですが、今年はこれに井仁の棚田田植え体験会とそれに「温井ダム」の放水を見ようということで、ダムまでのウォーキングを企画しています。
 
 蛙の町は環境を守る

 太田川上流の町として「水と環境を守るエリア」です。その象徴として両生類の「かえる」を取り上げる事は、現代から未来に通じるテーマとして意義深いものがあり、全国で初めて「かえるの町宣言」をしたことをアピールして観光の目玉にしたいと考えています。

 そして安芸太田町を「蛙−棚田−太田川−水」の関連の中で捉え、西日本の蛙研究の中心として位置付けていきたいと思います。安芸太田町は全域に蛙が棲息する所で、「トノサマガエル」や「アマガエル」は町内全域にいますし、そのほか県の天然記念物の「モリアオガエル」や三段峡、竜頭峡には清流に育つ「カジカガエル」がいます。また「ドンビキ=ヒキガエル」も三段峡や深山峡で育てる計画も立てています。そうした特徴のあるカエルの名所も作りたいですね。
 
 蛙神社を祀る

 そして、将来的には「カエルを守る事は環境を守る事」という意味を込めて「蛙神社」を建てる事も提案したいのです。環境を守る象徴としてのカエルを供養して、吉水園の春と秋の一般公開などにあわせて年に2回「カエル大明神」大祭を開き、お祭りには全国から蛙に関する産品を集めて「川・森。文化センター」で展示即売会を開きたいですね。

 「カエル」という言葉は人々の神様への「願いごと」の表現としてさまざまな関連付けが考えられます。神社の御利益として、家内安全=無事帰る、健康祈願=蘇る、商売繁盛=お金が返る、学業成就=成績が跳ね上がる、安産祈願=卵が孵る。改革推進=欲しいものが買える、「悪い政治を変える」など。

 そして、町の産業起こしとして、蛙に関する土産グッズ・特産品づくりを考える。陶器、木工、お菓子、蛙の絵馬などが考えられますが、これを定着させていく。更に「蛙博物館」や「蛙研究所」を作って蛙についての学び舎を作ることも提案したいと思います。

 
 −有難うございました。がんばってください。「環・太田川」も応援します。
 
 
 
 
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