●インタビュー
 アールネット ポラン 小田豊隆さん
2001年8月 酷暑号

 ねばりづよく地方の言葉を発信していきたい


 今回は、間伐材を利用する木工会社にお勤めの傍ら環境問題専門のインターネット古本屋「アールネットポラン」をオープン、同時にメールマガジン「ポランの星」とホームページ「がんばろう可部線」を発信しておられる、加計町在住の小田 豊隆さんにうかがいました。

 地域の大きな課題として山の問題がある

―間伐材を利用する木工会社で働いておられますが、やはり山の現状に対する問題意識からお仕事を選ばれたのですか?

 「私は4年前にふるさとである加計に帰ってきました。もともと木工には興味があって、家具などを作る指物木工の技術を学べる仕事をしたいと思っていたんです。希望にマッチした職場をほうぼう探して、現在の仕事場(島根県那賀郡金城町)に出会うことができました。私の仕事場は「間伐材を利用することで、間伐を促して山の荒廃を防ぎたい」という理念からスタートしています。私が暮らしている加計を含めて、現在中山間地が抱える大きな問題として、手入れのされない人工林の問題があります。いま通っている仕事場は地元の加計から離れてはいるんですが、西中国山地という広い視点で見たとき、共通の課題を抱えている同じ現地で働いているという思いはあります。」
 
 国内唯一?の環境問題専門のインターネット古本屋

―お仕事の傍ら、インターネットで、自然環境問題や社会環境問題に関わる古本屋「アールネット ポラン」を開いておられます

 「環境問題専門のインターネットの古本屋は、いまのところ国内では『アールネットポラン』だけだと思います。インターネットには危険な側面もあることは認めますが、個人で、都市部から離れた地域から情報を発信していくとなると大きな武器になることも事実す。以前から原発の問題に関わっていたので、より多くの方々と、原発の問題などいろんな問題をいっしょに考えていくスペースを作りたいな、と思ってました。一時期古本(店舗)をやっていたこともあるので、ネット上で環境問題専門の古本屋を核にして、メールマガジンやホームページと組み合わせた情報発信スペースを作ろうと思い立ちました。『アールネット ポラン』では、原発に替わる自然エネルギーの問題についても考えようと、ソーラーグッズも取り扱っています。
 
 現場からの生の声を発信したい

―「アールネット ポラン」と並行する形で、メールマガジン「ポランの星」をほぼ週間で発行しておられます。その「ポランの星」の最近の記事では、地域材の利用現場で働かれる中で感じられた問題点を詳しく論じておられますが、ひとくちに「間伐材の利用による間伐の促進」といっても、いろいろ難しい問題を孕んでるようですね。
 
 「詳しいことは『ポランの星』を読んで頂きたいのですが、そもそも間伐とは、主に建築材料として価値のある木材(大径木、中径木)を生産するために適正本数を維持することで、野菜でいえば『間引き』に相当します。昔はそうして伐られた木が、建築現場の足場や稲架として使われていました。ところが時代の変化によって、そうした間伐材の用途が消えてしまいました。こうした状況の中で、間伐材に市場価値を持たせることは、とても雑な問題を生み出します。ややもすれば、間伐材に価値を持たせることが、大径木、中径木の価値を下げてしまうことになりかねません。木材の利用現場に身を置いてみて、現在の市場原理、経済原理の中で間伐を進めて山の荒廃を防ぐことの矛盾のようなものを痛感しています。ただその一方で、いわゆる『お金儲け』を度外視したところで、『山の荒廃を防ぎたい』という強い理念、思いのもとに、職業として間伐をやっていこう、という動きも生まれているようです。やはり、圧倒的な人工林の面積からしても、ボランティアの方々の活動だけでは山の手入れは進まないでしょう。職業として山の問題とどう向き合うかー。これからも自分の体験と、ネット上などにあらわれる様々な情報を整理しながら、地域の山の問題について情報発信していきたいと思います。
 
―「ポランの星」では、毎号宮沢賢治さんの詩を、時候に合わせて紹介しておられます。
 
 「ええ。賢治が好きということもありますが、『アールネット ポラン』という店名は、賢治の『ポラーノの広場』から拝借したものです。皆で力を併せて新しい協働の場を創り出そうとするファゼーロたちの願いは、賢治自身の願いでもあり、私自身の願いでもあるからです。

 可部線を主体的に応援しよう

 
―小田さんは「がんばろう可部線」というホームページも立ち上げておられます。可部線対策協議会の「がんばれ」という表現を少し変えて、「がんばろう」という言葉を使っておられることになにかメッセージを感じますが…
 
「『がんばれ』という表現だと、ちょっと他人事みたいな語感があります。可部線の問題を自分自身の問題として引き寄せ、主体的に関わろうよ、という願いから『がんばろう』というネーミングにしました。可部線の問題は、山の問題、原発の問題と、決してかけ離れた事ではないと思います。地方や中山間地の切り捨てという共通の構造から生まれた問題ではないでしょうか。」
 
―ホームページに寄せられるご意見にはどんなものがありますか?
 
 「好意的なご意見が多いのですが、なかには『可部―三段峡間は廃止した方がよい』というご意見も頂きます。現在の可部線は都市側の負担によって運営されている、なぜ都市が赤字ローカル線の犠牲にならなければならないのか、そういうご意見です。しかしそれは自分のところさえよければそれでいい、という考え方なのではないでしょうか。でも今のやり方で廃線を許したら、JRの一本の路線中でも赤字の区間だけ廃止すればいい、一本の線路を分断してもいい、ということになりかねませんよ。」
 
 
ねばりづよく地方切り捨ての論理に異議を唱えたい

―これからのご活動について、何をお考えですか
 
「都市から離れていると、実はインターネットへの接続環境なども決してよくはないんです。そんななかでも粘り強く、山の問題や可部線の問題など、地域の問題を発信しつづけていきたいと思います。発信しつづけることで、もう一段乗り越えた、地域の言葉、地方の言葉を発信できるようになれるんじゃないか、そんな希望を持っています。」
 
―最後にメッセージをお願いします。
 
 「本の仕入れが結構大変です。量販店よりはましな(笑)値段で買い取りますので、よろしくお願いします。機会があれば、各サイトをのぞいてみてください。メールマガジンは、『アールネット ポラン』のホームページから登録可能(購読無料)です。」

アドレス:
「アールネット ポラン」 http://www.r-polan.com
「がんばろう可部線」 http://www5a.biglobe.ne.jp/~kabeline/ ※HP管理人注 現在は閉じられているようです。
インタビュー 2001年7月22日 インタビュアー 原 哲之
 
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