京橋川で遊んで育った!

本誌編集部の若手ホープ 岩本有司さんの手記

〜「環・太田川」の仕事に参加して〜
2008年 1月 第81号

 去年6月、事務局のEメールアドレスに本誌のHPみて、是非活動に参加したいという申し出でが舞い込んできました。早速本誌の発送作業に市民交流プラザに来るように連絡、そこに現れたのが、広島大学で水産学を研究する岩本有司さん。長身で、イケメンの好青年です。それから半年間、大学の勉強、研究の間を縫って月に1〜2回、各地の取材に歩いています。今回は岩本さんにこの半年間の仕事に関わっての感想など、綴ってもらいました。



 
川や魚が大好き

 僕が環・太田川の活動に参加し始めたのは昨年の6月。およそ今から半年前です。環・太田川設立初期から運営に参加している委員の方々の中に、僕が途中から参加させていただいたので、最初は分からない事だらけで不安もありました。しかし、親切な委員の方々のおかげで、現在では当初感じていた不安などはなく、毎回とても楽しく活動しています。僕は他の委員の方々に比べ年齢はかなり下で、太田川に関する知識も圧倒的に少なく、まだまだ未熟だと感じる事は多いですが、その分、この半年間で学ぶ事はたくさんあったように思います。

 僕は生まれも育ちも広島市内の牛田と言うところです。京橋川に近い事もあり、小さな頃から河川には関心を持っていました。少年時代の僕にとって京橋川は最高の遊び塲で、釣りなどで魚を採る事が大好きでした。その頃に持ち始めた、川や魚に対する興味・関心は僕の現在の進路にも強く影響しています。現在は大学生ですが、迷うことなく生物や環境の事を学べる学部を希望しました。

 
スズキの仔魚の生活史

 環・太田川に関わる決定的なきっかけとなっだのは、平成18年の秋から、大学の教官のご指導の下、卒業研究で太田川の調査を始めた事でした。僕は現在、太田川下流の河口付近において、スズキと言う魚を中心に、魚の子供(仔稚魚)がどのような生活をしているのかを調べています。河川は長い道のりを経て海に注ぎますが、河口域と言うのはその終着点です。上流からの様々な影響(人間の生活など)が集約され、良くも悪くも環境変化の著しい水域ですが、現在、魚たちにとって大切な成育場となっていると言われています。広島湾に注ぐ太田川の場合、河口域の河岸は整然と護岸され、河床にはヘド囗が溜まっていたりして、汚れた川と言う印象を持つ人が多いと思います。しかし、実はこう言ったところにも多くの魚が暮らしていて、その中には私達が食卓で囗にするような水産重要種も一部含まれるのです。僕は最低でも月に1回は太田川放水路、または天満川に行き、網を使って魚の子供達を採集し、色々と調べています。



 
太田川を広い視野で学びたい

 このような生物調査を行う日々の中で、太田川をもっと広い視野から学びたいという好奇心が芽生えました。太田川に関わる様々な団体を探した結果、環・太田川の幅広い活動に最も惹かれ、参加する事を決めました。

 環・太田川での活動は、運営や会誌作成など様々ですが、特に誌面作成では、役割分担がとても明確になっているように思います。取材とその内容の文章化、文章の編集、誌面レイアウト、印刷、発送までを全て委員が分担して行っているのです。その中で僕自身の主な役割は、およそ月に1回、環・太田川事務局長の篠原一郎さんと共に、太田川流域で活動されている方々のインタビューを行い、その内容を文章にまとめる事です。

 この半年間の取材活動で僕が最も驚きを感じたのは、個人から民間の団体、自治体や国のレベルまで、想像以上に多くの大が、様々な立場で太田川と関わっている事でした。去年の7月から、国土交通省主導で始まった「太田川河川整備懇談会」を軸に、今は数十年先の太田川の行く末を決める重要な時期です。また、広島市役所でも「太田川再生プロジェクト委員会」がもう2年間、太田川再生について議論を重ねています。今、太田川は多くの人の関心を集めていますが、それによって様々な意見が飛び交っているため、特に関わる人の多さや各々の立場の違いをはっきりと感じることができました。

 
客観的な表現に苦心

 また、多くの立場の人間が関わる事は、同様に多くの異なった見解や主張があるという事でもあります。インタビューの後には、得た情報を誌面に載せるため、発言者が意図する内容に忠実に、読んで下さる方々に分かりやすい文章にまとめるところまで行わなければなりません。取材の時には理解出来ていた内容でも、いざ文章にまとめるとなれば、それは非常に難しい作業です。この作業では毎回、篠原さんが僕の書いた文章を推敲し、問題点を指摘してくださっています。太田川に関する事だけではなく、文章を作る作業一つに関しても、毎回、学ぶ事は多いと実感させられています。

 僕はこの半年間、環・太田川で主に取材という形で活動に参加してきました。自分自身にとって、そこで得た様々な知識や経験は、少しずつ大学での卒業研究とも繋がり、非常に意義深いものになりつつあります。また、取材先の方や、会員の方々など、大学生活の枠の外に出て、多くの人と出会えた事も、環・太田川がもたらしてくれた貴重な財産です。今後も楽しみながら、意味のある活動を続けていきたいと思っています。

 
 
 
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