●ブラリスト小林一彦のあしたはどっちだ?!

 (4)俺様は、週末流牧民。 2001年 8月 酷暑号


夏に向けてますます絶好調。
本日も、反省の色ナシ!
 
 最初の遠出は、中学2年の夏の終わり、南区の自宅からクラスの悪ガキ3人で出かけた土師ダムまでのサイクリングだった。
朝は暗いうちから出発し、向原峠では上り坂にヒィヒィ喘ぎ、下り坂では逆に、ブレーキが壊れるほどスピードが出過ぎてデブのツボッチが崖下に転落(デブだから加速がついたのだ)。ツボッチは岩の出っ張りに引っ掛かって奇跡的にも無傷。吹っ飛んだツボッチの自転車とメガネを拾い上げようと崖下の草むらに飛び下りたら、そこを根城としていたスズメバチの大軍に襲われ、ヤバイ!どうにもならん!と、助けを求めて呼び出した吉田署のポリさんもスズメバチの逆襲を受け3箇所刺されてノックアウト、救急車に担ぎ込まれる騒ぎに発展(このてん末は、翌日の中国新聞夕刊にも載った!)。
とにかく、散々な目に逢いながら土師ダムにゴールしたのは、昼をかなり過ぎたあたり。みんな、汗や泥にまみれ、顔も服も自転車もボロボロ。湖畔の駐車場に車座になってしゃがみ、リュックから取り出した大ぶりのナシにむしゃぶりつきながら、道中のハプニングを笑い飛ばす。俺達はほんまに自力でここまで来たんじゃのう、スゴイことやったのう、明日学校でイバれるのう、ところでポリさん大丈夫かのう…初めての大冒険に心ときめき、ちょっとだけオトナになったような気がした。まさにスタンド・バイ・ミーである。
家に帰りついたのはいったい何時になったのか思い出せないが、今となってみれば、あの時の達成感というのか、すべての力を出し切ったことで得られる恍惚感が、その後の俺を未知のフィールドへ度々誘い出す呼び水となっているように思う。

 高校生になってからは長距離用の自転車を手に入れ、週末ごとに東へ西へ。バイクやクルマの免許を取ってからはさらに行動範囲が広がっていく。そして30才を過ぎてから出会ったのがシーカヤック、海の長距離カヌーである。普通、パリ・ダカールラリーで見るような大平原を旅したいと思っても、国内ではそんな場所、ありゃあせん。だが、シーカヤックに乗り込めば瀬戸内海でもその感覚が味わえてしまうからヤメられんのです。つまり、水在るところ、すべて道。
たとえば広島市西区の観音マリーナから2人乗りのシーカヤックで出航するとしよう。指をしゃぶって風にかざし、「よし、今日は風向きがいいから宮島まで行こうか」てなキザなセリフが吐けるのだ。シーカヤックは目線が低いので、瀬戸内海でさえ地球の丸いのがわかる。無人の荒野をさすらう心境。大型・小型船舶の専用航路は避けたほうが無難だが、基本的にシーカヤックはフリー、どこを漕いでもいい。船舶免許のように、級による航行海里の制限もない。ついでに燃料も不要、いや、俺達の場合はビールが燃料か。宮島までの片道13qなら、ハッチから取り出したビール飲みつつダラダラ漕いでも、だいたい2時間で行けてしまう。
途中、海上で出会った大型ヨットやクルーザーのクルーが、ゴキゲンに漕ぎ進む俺達を見てブッたまげ「あんたら、どっから来たんかいの?!まあ、こっちへあがってビールでも飲みながら話を聞かせんさいや」と、無理矢理(?)御相伴にあずかることも。これでますますイイ気分。
宮島に上陸して弁当を食い、またカヤックに乗り込み、周辺の無人島を散策していると、水平線の彼方にキラリ光る物体。近付くと同じくシーカヤック乗りだ。挨拶を交わし、ついでに互いの航海の安全を祈って、ビールで乾杯(またビールだ!)。


ブラリスト小林のお気に入りスポット。

宮島青海苔浦にある、某清流の河口にて。

この川は宮島で唯一、野生のアユが棲んでいるらしい。

干潮時には河口の入り江が消滅し、海から入ることは出来ない。

 ところで最近は高齢者のシーカヤッカーが増えて来た。定年退職してから始めたという人にも何人も出会った。そう、それほどまでにシーカヤックはイージー。筋力も運動神経も持久力もさほど必要なく、老人でも女性でも、手軽にロンサムカウボーイを気取れるフリーダムマシン、それがシーカヤックなのだ。
なのに、この面白さを知る人のなんと少ないことか。だいたい地球の2/3が海。海を入れると日本は決して狭くないのだ。もっと愛好者が増えたらいい。待ちに待った週末、シーカヤックに水や食糧、テントなど必要最小限の荷(といっても俺のシーカヤックの最大積載量は280sまでOK)を積み、日中、きままなクルーズを楽しんでから、夜は気に入った無人島のビーチに上陸し、テントを張り、火を起こし、メシを炊き、潮騒をBGMにビールをグビリ(一体、何本飲んでいるのでせう)。もう、仕事がなんじゃっちゅうんじゃ。不景気がなんぼのもんじゃい。対人関係とか、将来の不安だとか、IT革命とかそんなもん、ハァどうでもエエわい(オンナなんかもどうでもエエ!なんてことだけは俺の場合決して思わないが)。とにかく、気分良すぎて世間の皆様に申し訳ない!と喚きたくなるほどナチュラルハイだ。

 肩の力がスッと抜ける。頑なだった心が解きほぐされ、風になびいていく。体の中の澱が少しづつ消えていく。自然に笑みがこぼれてくる。そのとき、ふと気付くのだ、そうか、人間生きていくのに必要なものなんて、そんなにいらないんだ、と。精神レベルがこの段階まで達すると、世間のウソがじんわり見えてくるから不思議。
狂い流れるこの国は、どこへ向かおうとしているのだろうか。まだ「足りない」のか。豊かさってなんだ。この国の住人は、自然をどこまで痛めつければ気がすむのか。だいたい原発のどこがクリーンなんじゃい。まかり間違えば膨大な数の人々を死に至らしめる高レベル放射能性廃棄物を出しておきながら、CO2を排出してないから地球にやさしいとは、厚かましいにもほどがある…などと寄せては返す波のごとく、とりとめのないスピリチュアルメッセージが脳裏に去来し、やがてだんだん眠〜くなってくる。ふぁあ、ぼちぼち寝るとするか。
あ、そうそう、石垣博士こと、佐々木卓也サンに聞いたところによると、太古の昔、太田川の河口は、なんと今の豊後水道あたりだったらしいのだ。でっけぇハナシだナァ。太田川って、大河だったんだナァ。これから先、どうなっていくんじゃろ、、、、、よおし、俺にまかせとけ?!


P.S. シーカヤックに興味のある方は、ブラリスト小林までお軽にご連絡ください。どなたさまも洗脳して差し上げます。
 
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