●可部線

 鉄道再生 新局面に

〜太田川鉄道再生協会解散へ〜
 

(2005年7月 51号)

 一昨年10月、可部線廃止から住民運動として鉄道再生を実現しようと活動を続けてきた太田川鉄道再生協会はこのたび解散することになりました。すでに再生のために集めた基金も募金者に返還し、受け皿となるための太田川鉄道有限会社も6月に解散しています。
 本誌は「鉄道再生は今後の太田川流域の地域づくりの基盤だ」という立場からこの活動を支持、応援してきました。このたび太田川鉄道再生協会事務局から読者の皆様へメッセージが送られてきましたのでご紹介します。


 これまでの鉄道再生の運動はこれで一応終息しますが、合併によって新たに出発した町議会では新しい再生への動きが芽生えています。
 再生運動に関わり、いろいろ助言をされてきた建築家、松村賢治さんに、現状を伺いました。
(篠原一郎)

 
明朗になった町議会

 これまで運動を続けてこられた再生協会の方々は本当にご苦労様でした、という想いで一杯です。しかしこれで運動が終息するわけではありません。鉄道再生は、これから仕切り直して第2幕へ進む動きが出てきています。
 その第一が町議会が明朗になったということです。合併してどうなるか心配していたんですが、議員さん自身が町内外の英知を結集して町づくりを考えようという方向に向かっている。前の議会とは雲泥の差です。これは戸河内や筒賀の人達も、町の多くの方々が言っています。3月の合併後の議員選挙で、鉄道再生を進めたいという立場の方たちが5〜6人当選した。しかもここには上位当選の方達がいるんです。そのあとの議会の討論の中でも同調する方が増えてきています。
 
 
 
鉄道の大切さの再認識

 第2に町の人々の鉄道に対する気持ちの表れです。「鉄道がなくなって、ここまで町が疲弊するとは思わなかった」というのが一般の人の正直な気持ちです。ゴサー市をやっても、吉水園を開いても今までの3分の1しか人が来ない。よく来ても半分です。バス会社の人も鉄道がなくなったら乗客が増えると思っていたが、鉄道があった時よりも減っている、これはいったいどういう意味なのか、といっています。私の住んでいる津浪地区でも以前は雨が降っても休みの日には、近くの丸山に登山に来る人が何組かあったが、最近は一組も来られなくなった。私は津浪に来て10年になりますが、これまでに外国の人が300人くらいは来ています。外国の友人たちがJR広島駅に降りて、そこから加計の津浪までくる方法がわからない。誰も教えてくれないし聞いても知らないといわれるんです。
 
 都市と田舎の交流が大切だと言っていながら、この現実を考えていたかということですね。鉄道を廃止し、これまでの駅の所になにか新しい観光目的の建物を建てて何かしようと、それだけを見ていたんじゃないか?木を見て森を見ずといった状況に皆気づいてきたと思います。

 バスは遅れるからとか通勤に不便だという論議があったが、そんなこと以前に「鉄道が地域のエネルギーのシンボルだったのじゃないか」という気持ちが出てきている。加計町の商工会の有志の方達が、加計駅に保存している車両にエンジンを掛けて汽笛を鳴らそうという企画をたてて、高校生も協力しようとしている。将来は短い区間でも車両を走らせようとも考えておられる。そんな動きも一般の人々の正直な気持ちの現れです。
 

 
民主主義を実行する議会

 こうした一般の人の気持ちを受けて議員さんたちもきちんとした議論をして、当面のことを進めていこうとしています。合併後の3月議会で、線路をはがしていくための予算が承認され、先日の6月議会では7月中には執行されることになっていますが、この審議の過程で、その予算書について疑義が生じ、それをめぐって町当局と話し合いがなされているということです。
 その内容はレールと枕木の撤去に500万円の予算を組んでいるのですが、それらの撤去に1億2000万円かかるが、撤去したレール、枕木を売ると1億1500万円になるからその差額として500万円の予算を組んだ。ということなのですが、その計算の根拠はどうなっているのか?町当局に質したところ、それにははっきりした答えが出てこない状況になっているということです。

 こういうことは当然、3月の議会でも明らかにしていかなければならないことだったわけですが…。6月の議会で問題にして、今論議が続けられています。こうしたことも町民の前に明確にしてからでないと予算の執行はできない。こういうことも一つ一つはっきりとさせて前に進もうという民主主義の基本を実行する機運が議会に生まれていることは、まことに心強いことです。こうした議論の中でもなぜそんなに急いでレールを撤去しなければならないか?町の姿勢への疑問も出てきています。町づくりには部分的な観光鉄道が必要だなとなった時、また余分な出費がかさむことになりかねません。

 
運動の第2幕へ

 これまでの運動の中で太田川鉄道再生を支持してくださった全国の方々も沢山いますし、基金を返却しても再生協会は解散しないで!という声も根強くあることもこれからの力になります。以上の様なことで、再生協会は解散してこれまでの活動は一区切りつける形になりますが、すでに全国規模で各地の廃線路線の一括運用を考える企業体の構想も考えられている昨今です。

 
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